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16話 己が肉を斬り裂いてでも敵を断つのがボクの覇道だよ!!

 キョウカは刃の無くなった剣に新しいパーツをイメージする。

 先ほどストライフが振り回した鎖付き鉄球。その武器の記憶はストライフから複製された記憶の中にハッキリと刻み込まれていた。余程使い込んだ武器なのだろう。


  柄の先に琥珀色の鎖が生み出される。先端には鉄球――の代わりに琥珀の宝玉。宝玉には杭のような大きな棘を数個備えさせる。


「これでっ!!」

 全身を使って武器を大きく振りかぶる。遠心力が高まった瞬間を見計らい、鎖の一つを消滅させ鎖と重りを空へと放つ。それをストライフの様に空中で複製し、多方へ放つ。


「模倣ばっかりして勝てる程、戦いは甘くないよっ!」

 重りと鎖は容易く躱され浮島に衝突し、突き刺さる。

 彗星のように迫り来るストライフ。両の手には小さな刃。


 ――防壁、は間に合わないっ!!

 咄嗟に琥珀の大盾を生み出し、構えるキョウカ。

 次の瞬間。ストライフは空中で身を翻し、脚をキョウカに向けた。


「刃が通らないなら、蹴り飛ばすまでさっ!」

 勢いのままにキョウカの盾をストライフは蹴りつけた。凄まじい衝撃と共にキョウカ、ストライフは共に反発するように弾け飛ぶ。


「ぐ、ぅああああ!!」

 何度も地面に打ち付けられながら吹き飛ばされるキョウカに対して、ストライフは再び空に戻り優位性を確保する。


 ――長期戦になるだけこちらの不利だ。もう少し準備をしたかったけど、仕方ない!

 よろよろと起き上がりながら身体の痛む箇所を複製して修復し、誤魔化す。


 そしてキョウカはもう一度鎖付き鉄球の紛い物を複製し、空へと放った。


「同じ手を何度も――ん?」


 しかし次の瞬間、放たれた重りと鎖を超える速度でキョウカが跳び上がる。


 ――一回っ……!

 跳躍の鈍い反動が両足に重くのしかかる。もうここから先は後戻りできない。


 跳んでいる間にストライフの位置を把握し、浮島に到達する。

 接触と同時に宝石のついた鋭い杭を浮島に打ち込む。身体が落下し始める前に浮島を強く蹴りつける。


 ――二、回……!

「キミも跳んでくるんだね、なら迎え撃つまでだよ!」

 キョウカの跳躍に合わせて、ストライフもまた浮島を蹴りつけ跳び出す。角度を合わせ、正面にキョウカを捉える。


 キョウカは再び盾を複製し、体当たりをするようにストライフに迫った。

 対してストライフは水晶で出来た偽りの左腕に巨大な水晶を複製して取り付ける。


 巨大な鈍器になった腕が盾ごとキョウカを打ち砕こうと迫る。互いに一度跳び出したらもう止まらない。正面から接近する二人。


 ――ここだ! 最後の三回目っ!!


 次の瞬間。キョウカは盾を空へと向ける。身体を捻り、盾に向けて力強く脚を繰り出した。本来ならこんな事をしても盾が僅かに空へ追いやられるだけで何も変わらない。


 しかしキョウカは同時に、盾を境に鏡写しに全く同じ力を複製する。二つの力が釣り合い、拮抗した状態で盾は空中に留まる。


「ぅ、ぐぅっ……!」

 苦痛に顔が歪む。元々厳しい反動を自ら二倍にしているような物なのだ。

 だがキョウカは耐え、次の手を打った。


 盾側からキョウカに複製している蹴りの力を、もう一つ上乗せしたのだ。拮抗していた偽りの力と本来のキョウカの力の拮抗は崩れ、盾はキョウカを突き飛ばすように弾いた。


 結果、キョウカの身体はほぼ直角に進路を変更する。

「っ!?」

 当然、正面衝突を狙っていたストライフは目標を素通りする事になる。


 またも強かに地面に身体を打ち付けるキョウカ。だが、まだ休むわけにはいかない。これだけの危険、代償、賭けを通して作った好機を逃す訳にはいかない。


 ストライフがキョウカの次の動きを警戒し、地面のキョウカを見据えた。


 それこそが最大のチャンスであった。


「後方……注意ですよ!!」

 剣に思念を送り、物体の複製を行う。


 複製されたのは、長大な琥珀の刃。それが、幾つかの浮島を結ぶように発生した。


 起点は、キョウカが放ち、浮島に打ち込んだ重り。その内部、中核には剣に備えられている物と同じ宝玉が複製されていた。


「なっ!?」

 警戒心をキョウカの方へ向けていたストライフは、対応に遅れる。

 凄まじい速度で、空に橋渡された鋭利な刃に飛び込んでいく。


 この速度、このタイミングでは最早防御用の水晶を展開している暇は無い。


「く、アハハハッ!!」

 迫り来る刃のうち、首や胴体を両断しかねない物を肥大化させたままの右腕で打ち砕く。


 捌ききれなかった刃がストライフの身体を切り刻み、その片足を切断した。


 そしてストライフは浮島に到達するが片足では受け身をとる事も蹴り跳ぶ事も出来ず衝突する。そして推進力を失ったストライフはそのまま地面へと落ちていく。


「ウフフフ、ハハハハハ!!!」

 落下しながら失った足を複製しようとするストライフ。


「させません!!」

 阻止すべく、牽制にキョウカは複製した剣を投げつける。


 放たれたのは、一本の剣――の筈だった。

 それが、次の瞬間にはストライフを囲むように無数の剣が全方位から迫ることになる。

 空中戦に移行する前、大地にばらまいた剣にもまた、宝玉が備えられていたのだ。


 キョウカの力はストライフと違い剣の宝玉に依存している。複製出来る物体も、複製物を発生できる場所も、宝玉を中心とした一定範囲に限られる。しかしその宝玉を複製する事でその条件を変則的に応用したのだ。


 複製された偽物も元は1つの宝玉の力で作られたモノ。それぞれの宝玉は一連の龍の力で結びついている。無数の宝玉のウチどれか1つの感知圏内にあるモノならば、他の宝玉でも複製できる。

 

 放たれた剣は大地にばらまかれた宝玉の力でその推進力を複製させられ加速していく。

 

 加速された剣は他所で新たに複製され、その剣もまた加速を重ねる。無数の剣が、幾重にも加速を繰り返し、結果として音すらも切り裂く刃の嵐が完成した。

 

 流石のストライフもこの攻撃には舌を巻いた。足の複製に力を裂いていては串刺しになってしまう。それでは致命傷だ。幸い、対応に遅れた先ほどと違って力の使い道を変えれば防御に回れる。ストライフは複製するものを足から、球状の水晶の防御壁へと変更した。

 

 何度も水晶が砕ける音が聞こえる。しかし殺到する剣の悉くが弾かれているのが確認できる。消耗はさせられても、致命傷にはなりえないだろう。

 

 ストライフはそのまま地面に墜落する。

 

 キョウカは駆け抜け、追撃の刃を振り下ろす。

 

 だが、その刃は通らない。


 剣の雨からストライフを護ったボロボロの防御壁が完全に砕け散ると共に内側から黒金の剣が跳び出してキョウカの刃を受け止めたのだ。


「本当に……本当にキミは最高だっ!!!」

「やはりまだ、立ち上がりますか!!」

「奇策、に奇襲。ここまでボクを楽しませてくれるなんて。ちっぽけな人間でありながらボクの与えた龍の力を使いこなすなんて!! こんなにワクワクする戦いは、こんなにドキドキする戦いは初めてだ!!」


 キョウカの刃を弾き飛ばし、腹を狙い横に一閃するストライフ。その身体には水晶の義手はなく、足もガラス質の棒のようなものを複製させて間に合わせている状況だ。


 それでも。そこまで追い込まれても尚、ストライフの闘志はごうごうと燃え続ける。

「腕や脚の一本や二本なんてくれてやるさッ!! 己が肉を斬り裂いてでも敵を断つのがボクの覇道だよ!!」


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