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6話 図書室の聖女様

 そろそろクーラーが恋しくなる春終わりの放課後。

僕はほかで手伝いをしているヒカリを待つために図書室にいる。


 なんか読む本がないか指で背表紙をなぞりながら棚にそって歩く。

そこそこ有名な小説からマイナーなものまで、それなりに多様性のある本棚。

『彼女とカノジョの歪な事情』。

不意に目に止まったその本に手を伸ばした。

「あっ……。」

「あっ……。」

 本の上で2つの手が重なる。

1つは僕の小さい手。

もう1つは紗奈の少し大きい手。

「あの……、紗奈さん……。」

 紗奈の手が僕の手をなぞってくる。

指使いが……その……、やらしい……。

なんでこう、ぼくの周りはこういう人たちばかりなのだろうか……。

「紗奈さん?。」

 紗奈は僕が取ろうとした本を奪うようにして取って、僕の体を本棚に押し倒す。

お互いに向かい合わせに密着していて、重ね合うように潰れる胸とモノクロなブラウス。

僕の脚の間に紗奈の脚が入ってきて、体が上手く動かしにくい。

どこで覚えたのやら……。

「紗奈s……っ……。」

 視界が紗奈に包まれる。


 紗奈とは中学生時代に一緒に図書委員をやっていた。

ヒカリが生徒会長をやっていて、それが終わるまでの間の暇つぶしに。

それからも仲良く一緒に委員活動をして……、そしてそのことをヒカリの前で思わず喋ってしまった……。

 それがヒカリの気に触ったのか、紗奈に見せつけるように学校でキスをした。


 あれから紗奈とは特に話したりすることは無かったのだが……。

これはいったいどういう状況なのだろうか……。

紗奈の唇と僕の唇が重なっているではないか。

しかも深い……。

「はぁ……、はぁ……、紗奈?。」

「ごめんなさい。でも好きなんです雫のこと。」

 うん知ってる。

日頃からそういった視線は感じているのだから。

でも、ここまでとは正直思ってなかった。

「ヒカリさんにも悪いとは思ってます。ですが、私はあの日からずっと雫さんのことを……。」

 そこまで言っておいて、紗奈は口を閉じた。

せっかく言えた本音。

主文のない本音。

「ごめんなさい。雫さんもこのことは忘れてくださいね。」

 紗奈は本を持ったまま、逃げるように立ち去っていく。

彼女を追おうとしたその時。

「雫?。」

 圧のかかった聞き覚えのある声が背後から聞こえた。

「早いねヒカリ。もう終わったの?。」

「うん、雫に長く待ってもらう訳にはいかないからね。」

 がっちりと僕の腕を掴んでくる。

傷つかないように優しく握ってるのに、上手く引き剥がせない。

「で、どうするのヒカリ……。」

「わかってるでしょ……。」

 冷たく重たい声。

光を失った瞳。

僕は『いつも通り』の行為をヒカリに処置した。

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