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田舎王子と6人の婚約者  作者: nayaminotake


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第71話 田舎王子とVTuberしおりん

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●同日夜 二階家所有マンションにて



今晩はみーくんにご飯を作ってその後、イチャイチャする予定だったが三宗の宗主が出てきては引き下がるしかなかった。

しかし、この時間を無駄に出来ないので済ます事だけ先に終わらせる

帰りにSNSで「本日19時から、しおりんの重大発表!」と拡散しておいた、生配信を実施する予定だ


「はぁ、今頃ならみーくんと一緒にお風呂入って洗いっ子してたかもしれないのになぁーーーはぁーー」


そう愚痴を言いながらも、顔出しする為の用意は進めておく



配信用のカメラ、マイク、そして操作するPCそして何時もは使わないカメラライトを点灯させて、カウントダウンを始める



【3】・・・【2】・・・・【1】・・・・【start】



『みなんなーーーこんにちはぁーーー今日も元気に生配信、しおりんだよーーー』


〈:おおおしおりんきたーー( ;∀;)

〈:すっと待ってた、我らの女神ーーm(__)m

〈:今日の重大発表ってなんだ?俺との結婚か?!

〈:おい!前スレ〇ねよ!


同接いきなりで20万を超える、これがしおりんの、トップVチューバーの力だ



『はいはいwみんな落ち着いてねぇーーーw焦らなくても、ちゃんと重大発表しちゃうよぉーーーーw』

可愛らしくデフォルメされたピンク色の兎の耳のキャラは詩織のキーボード操作に合わせて色んな表情をつくって本当に会話してるようだった。



〈:重大発表!!もしかして大型アプリゲームとのコラボ?( ..)φメモメモ

〈:いや歌手デビュー?

〈:いやこれホンマに俺と結婚じゃね?

〈:おい、コイツ特定して抹殺確定な!

〈:マジ、殺意しかねぇ(-_-メ)

〈:男子キモすぎ・・全員〇ねよ!

〈:そそ、しおりんは女子Vチューバーの神だよーー


『よよよーみんなーー、しおりんの事こんなに好きになってくれて、感謝だよぉーーーーw』


〈:しおりんからの感謝いただきましたw

〈:おう!しおりんからの感謝マジ家宝(^^♪

〈:その感謝に投げ銭してぇぇぇぇ

〈:マジそれな!!


『ああ、ごめぇーーん今日は収益してないからねぇ投げ銭は受けてないよぉーー』


〈:くぅーー俺しおりんに投げ銭する為だけに働いてるのにぃーー

〈:はっ言ってろ貧乏人!おれなんか毎回、しおりんに読みあげてもらってるしな!!

〈:はいはいw重課金マウント乙w

〈:はぁ?課金なめんな!しおりんは俺が守る!!


『急なしおりんの告知でこんなに大勢見に来てくれて、しおりんマジ感謝!』


開始から20分経過した時点で同接は40万人に達する勢いだ、詩織の『重大発表』はSNSのトレンド1位になっており、プレミア会員以外は同接に入れない為、皆SNSで挙げられた画像に釘付けになっていた

その影響は数百万ともいわれるフォロアーによってさらに拡散、各種メディアでも取り上げられていた



〇フェニックテレビ局社長室


「いよいよだな、茜」

ソファーに座る和服姿の年配の男性は呟く、この男性こそ おおとり 鷹雄たかお鳳グループの総帥にして鳳家現当主、そして茜の祖父であり、豊虎 音野の弟だった


「はい、お爺様、二階 詩織の覚悟を見届けましょう」


茜も何時ものお道化た雰囲気では無く、真剣な表情で壁一面の大型スクリーンを見つめる





〇竜崎本家、別館


「流石ね、詩織・・これだけの社会現象を起こすとは」


本家の別館の映像スクリーンの前で足を組みテーブルに置かれたワインに軽く口を付けた青葉は素直に賞賛の言葉を贈る


「うむ流石、二階の秘蔵子だな、既に我らの次の代に家督が移り今の代の二階 要という男も、中々に曲者だが娘も同じかそれ以上の傑物だな・・」


青葉の横で腕を組み、目を細める年配の男性は 竜崎エンタープライズ会長 竜崎りゅうざき 辰巳たつみだった


「はは、辰巳、二階の娘も確かに逸材だが、我らの孫娘等も相当じゃろ?」


色付き眼鏡で坊主頭の甚平姿で、辰巳の横でその肩をバシバシ叩いて笑う辰巳と同年代の男性は、亀山かめやま 官兵衛かんべい亀山映画スタジオの社長兼監督でその名は世界に轟く、国内外の映画賞を幾つも受賞しておりまさに映画界の重鎮だ


「はぁ、おじいちゃん!いい加減な事言って無いで静かにしてよ!」


その横で不機嫌にワインを飲み干す 亀山 鈴


「そうね、鈴の言う通り私達はこの後の展開をおとなしく見守る事にしましょう」




〇四葉家リビング



「いよいよ詩織が動くのね」

ソファーに浅く腰を掛けて少し前のめりになりリビングに写る、しおりんの3Ⅾキャラを見つめる彩羽


「映画の番宣も含めて、このネットというステージで二階の娘がどの様に躍るのか見ものだな」

四葉よつば つかさは、その横で逆にソファーに深く腰を落とし背もたれに腕を回し、彩羽と同じようにリビングの大型モニターを見つめる


「ふふ、あなた、彩羽も、そんな怖い顔をしてないで紅茶を淹れたから頂きながら見ましょう」

ワゴンを押しながらリビングに入ってきたのは、彩羽の母親の彩乃あやのだった、

彩乃は彩羽と姉妹にも見えるほどに若々しく、軽くウェーブがかった長い髪を横に流して落ち着いた様子のエメラルドの瞳で微笑み 司、彩羽の前にティーカップと焼き菓子を並べる


「お母さんの淹れてくらた紅茶久しぶり、有難くいただくわ」


ティーカップに手を伸ばし口に運ぶ


「ふふふ、彩羽もずいぶんと可愛らしくなったのねー、そういえば今度お祖母ちゃんが彩羽の様子を見に来るって言ってたわよ?」

そう言うと彩羽の横にチョコンと座り自分も紅茶に口を付ける


その様子に軽く笑い、目を閉じた司も黙って紅茶を一口飲んだ




〇五十嵐家リビング


「ねぇお母さん?詩織の重大発表ってなんだろうね?」

凜はエレンの横で自分の作った、カップケーキを一口頬張りながら訪ねる


「あら、凜は知らないの?じゃ詩織さんの配信を聞き逃さないようにしないきゃね」


そう凜の頭を軽く撫でて微笑む


「まぁ二階の娘が何を世間に発信するのか、今の我々には見届ける以外に術はないしな」

凜の作ったカップケーキを上品にフォークで切り取り口に運ぶ五十嵐いがらし 洋一よういち


「なんにせよ凛、お前には見届ける義務がある、お前と同じ宿命の許嫁の覚悟を」


そう軽く凛の肩に手を置き、愛娘の目を見つめると、凜も力強く頷いた




〇六橋家本家


「流石はトップはるだけの事ありますなぁ、これだけ影響力があるなんてぇ」

空は、本件の奥座敷に用意された大型スクリーンの前に舞踊で着ていた着物のまま座布団に座り抹茶を口にする


「まぁ、空さんから見ても二階の娘さんはベッピンさんなんかいなぁ」

そう尋ねたのは、空の母親で六橋舞踊の宗主でもある、六橋ろくはし 風花ふうかだ、その鋭い瞳と舞踊に対して妥協しない姿勢から、門下生はじめグループ企業の上層部から畏怖されている

その見た目は正に大和撫子と呼ぶにふさわしく、舞踊で培った所作に礼儀作法、なにより纏う雰囲気が気品に満ちている、さすがの空も母の前だと緊張してしまうのだが


「お母さん、雅さんの事、もっとききたいわぁーえらい男前でぇうちの空さんをこんなにもメロメロにしてしまうなんてぇ、もうお母さんも会いに行っちゃおうかなぁ」

「ちょっ、ちょっと!やめてよ!お母さんが来るとややこしいから!」

娘に邪険にされて、子供の様に拗ねる風花


「はぁホンマに、空さんはイケズやわぁーもしかしたらぁお母さんに、雅さん取られるって心配してはる?」

悪戯っぽく笑いだす母親に溜息をつき


「はぁーなんでやねん・・」




〇七星家本家 別館


「な、なぁ詩織は何をおっぱじめるんだ?母さん何かしらないのか?」

道場で父親と組手後で道着のまま本家の離れの別館で椅子に座ってテレビを見ていた静流は横に座る母親に尋ねる

横に座る静流の母、七星ななほし 流華るかは、見た目は静流とそっくりなグラビアアイドルも裸足で逃げ出す抜群のスタイルに加え、肩口まであるパーマ掛かった金髪に、垂れ目の大きな瞳は静流と同じように黄金にか輝いていた


「ええええぇ、おかあさんしらないよーーー」


流華は七星建設グループの社長で経営を一手に担ってる辣腕だが静流の性格と反対におっとりししており、その掴みどころの無い雰囲気に逆に静流はいつも呑まれる、ある意味父親の宗太郎そうたろうよりも怖いと感じている


「と、とこでよ・・・母さんさなんでそれもってんだ?」

「ええええ、しずるちゃんとおそろいで愛でるんだよーー」


二人が抱えているのは、お揃いの大きなぬいぐるみで雅をモチーフに特注で作った物だった


「いやいや!アタイの部屋から勝手に持ち出しただろ!返せよ!」

母親は、ぬいぐるみを静流から遠ざけるようにして

「ええええ、やだやだやだーーしずるちゃんお部屋にまだ沢山あるじゃないいい、一つくらいお母さんにくれてもいいじゃないいい」

「はぁぁダメにきまってんだろ!!全部違う写真から作った旦那さんのぬいぐるみだぞ!いいから返せよ!!」


「えーーん、しずるちゃんが意地悪するよーーー、えーーーん」

ワザとらしい泣き真似してると


「おい!母さんに意地悪するな静流!少しくらいいいだろ?雅様もこんな沢山ある中の一つくらいなら許して下さいはずだ!」


「ああん!お前らグルかよ!絶対だめだ、旦那さんの物はゆずらねぇ!」

泣き真似していた母親は


「ふーんだ!いいもんーーん、お母さんにはこれがあるからねーー」

静流にぬいぐるみを返すと、母親は大きな抱き枕を取り出した

「なっ!テメェ!それは!」

抱き枕には、目を閉じて薄着で寝ている雅が実寸大でプリントされており延びた腕の部分が腕枕になるように設計されていた


「へっへーーん、お母さんこれでねころんで配信みちゃうもんねーーー」


「ぐぐっぐぐううう、お、お母様・・出来ればアタイにもその・・枕を・・」


「えええ、これでアタシ、雅君に夜の48手を決めちゃおうかなーー」

「なっ!ぜ、ぜひ!アタイにその奥義をご教授下さい!」

二人に呆れる宗太郎は一人真剣にしおりんの配信を見るのだった



●場面は戻り、詩織の部屋


『重大発表!しおりんは、今度始まる映画のヒロインに抜擢されました!!』

〈:おおおお、しおりん映画マジ最強!!!

〈:なんの映画だ!?〇モンか?〇滅の刃か?

〈:しおりんの声ならマジ何回でもいや一生聞ける!!

〈:しおりんなら声優でも楽勝!!すでに勝利!


『フフフ、ざーんねん!しおりんの出る映画は実写えーがだよーー』


〈〈!!!!?

〈:???マジ?実写・・Vの女王が!?



『そうですーー〈君の事を決してわすれない〉て題名の〈双木 しおん〉役に選ばれました!パチパチパチ』

〈:えええ、あのベストセラーの!?

〈:しおりんが!?どういう事象!?

〈:ネット民の理解が追い付かない件w

〈:なに!?しおりんが実写で見れるって事?



『はい!本日はしおりんというVチューバーの仮面を脱ぎ、顔出しして皆さんに映画の告知をします!!』

〈:!!!!!マジ?

〈:はぁ?ろ、ろろ、録画ーー\(゜ロ\)(/ロ゜)/

〈:前代未聞!

〈:しおりんの実物、マジ拝めるの!?俺今日死んでもいいかも!


その後、画面からしおりんのキャラが姿を消した、この時の同接は60万を超えており、SNSを通じ各種媒体での視聴はもはや測定不能となった


『みんなーーこれから顔出しするかんねーー』

画面はピンク基調の部屋に同じくピンク基調のゲーミングチェアが映し出されていた


『よいしょっと』

画面にはピングのパーカーを着た女性の体が移り込み、椅子の位置を確認して席についた


『皆さん、こんばんわw私がしおりん事、二階 詩織です、どうぞよろしくお願いします』


頭を下げた状態で自己紹介の後、ゆっくりと顔を上げ全視聴者にその姿を見せた





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