第70話 田舎王子 恵美の気持ちに触れる
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突然の校長先生の話しに少し混乱する
「儂は、一堂流の事は多少理解出来るが気功の中身は分からん、お前自身なら感じるんじゃないか?お前の気とそこに混じった別の気を」
そう言われると、確かに自分以外の気を僅かだが感じる事が出来た
「そう言われると、確かに自分以外の気の流れを感じるかな?でもこれが静流さんと関係あるの?」
校長先生は恵美の方を見たが、恵美の強い意志の籠った瞳をみて軽く頷き続きを話した
「雅、お前は以前公園で七星と六橋の娘を助けるのに【練成】と【解放】の合わせ技を使ったと聞いたが初めてだったのか?」
確かに【解放】は修練で何度か使ったが【練成】と併せて使うのは初めてだった。
「うん、確かに初めて合わせて使ったけど、僕の【解放】だけだと全然効果が出ないから、もしかしたら【練成】も合わせると上手くいくんじゃないかと思って試したんだ」
「そうか・・・七星・・・段次郎は何か言うておったか?」
俺は師匠の言葉を思い出す
「うん、師匠は相手の気持ちを理解できるようになる為にもっと許嫁達と交流するように言われたよ、俺には心の成長が必要だとも言われたよ」
師匠に言われた事を掻い摘んで校長先生につたえると、長く伸ばした白い髭を撫でながら少し考え事をしていた。
「恵美の居る横でこのような事を言うべきでないが、雅よお前は【解放と練成】を合わせて使った事により体内の気というか【生気】を全て使い果たしてそれこそ命に危険が迫っていたんじゃ」
俺は驚く、確かに翌日は気の循環が悪かったようだが・・
「と、いう事は・・もしかして!?」
「そう、お前の枯渇した【生気】を七星の娘が補充したんじゃ、それこそ自分の命を削って・・・な」
俺は机の下で拳を握り自らの膝を叩く
「お、俺は・・怪我をさせてしった人達だけでなく・・静流にまで、とんでもない迷惑を・・」
横に座る恵美は優しく俺の背中を撫で落ち着かせてくれる
「雅、あの場で七星の娘が行った、治癒気功についてはあ奴が未熟だった事もあって強引な方法でお前に送り込んだから自らの命を削るようなはめになったのじゃ」
「でも!おれがあんな真似しなければ!!、そもそもあの時静流の誤解を早めに解いてれば・・・」
後悔と悔しさで涙が溢れてくる・・
(それと許嫁達を悲しませるな!それがお前の定めであり運命と知れ・・)
爺ちゃん・・俺全然だめだよ・・許嫁の女の子一人も救えない・・それどころか俺のせいで命の危険まで・・
『俺、みんなに出会わなかった方が良かったのかも・・・・』
ボソッと呟く
【パシッン!!】
恵美が俺の頬を叩いた・・・目に涙を浮かべて
「雅君!!静流さんを侮辱しないで下さい!彼女がどんな気持ちで貴方を助けたか!それは貴方に生きてほしいからです!そして共に歩んでほしいからです!なんでそんな悲しい事言うんですか!!!」
一気に大声で巻くし立てる恵美は席から立ち上がり肩で息をしてる
「はぁはぁ、今の私達が不幸だとか雅君に決めつけて欲しくありません!!」
そう言い切ると、泣き顔のまま俺の胸へ飛び込んできて
「私達の気持ちを軽く見ないでください!!馬鹿にしないでください!!」
そう言いながら俺の胸に顔をうずめて嗚咽交じりに何度も両拳でたたいた
「雅・・・うちの孫の言う通りよ・・昔はもっとオットリしてて自分の意見をなかなか言えない子だったのに・・・」
「うむ、暫く見ない内にずいぶんを逞しくそして強く成長したもんじゃ」
俺の胸の中で泣きじゃくる恵美の両肩を抱きしめ、校長先生と恵ばあちゃんの方をむると、優しく微笑んで頷いてくれた。
「ありがと、恵美・・・君の言う通りだ、僕がまちがっていたよ・・ごめんなさい」
そう頭をさげ恵美の後頭部に自分の額をつける、恵美の頭は興奮していたのもあり熱を帯びていたが甘い香りが漂って気分を落ち着かせてくれた
「わたし・・私・・雅君が居ないの嫌です・・出会わなかったら良かったなんて残酷な事言わないでください・・」
「うん、わかった二度と言わないからもう機嫌を直してください、恵美」
そっと涙で赤くなった目で俺を見つめる恵美に笑顔で返すと、恵美はぎこちなく微笑み頷いてくれた
「コホンッ!」
咳ばらいをする校長先生と、口元を抑えて笑う恵ばあちゃんを見て慌てて恵美と離れて席に座りなおすと
「さ、さぁせっかく恵ばあちゃんは作ってくれた、僕の好きなメニューだから冷めないうちにいただこう!!」
「プゥッ、そうですねぇ」
慌ててる俺がおかしかったのか笑いながらも、二人で手をあわせて【いただきます】と言うと久しぶりの恵ばあちゃんの料理を堪能した。
さっきの空気は一転して終始和やかな雰囲気と恵ばあちゃんの懐かしい料理に昔話に花を添えた。
俺達は恵ばあちゃんの料理を綺麗に頂き、お腹も満足したところで恵美達は帰る事になった。
「恵美、儂らは先に車でまってるぞ」
そういうと校長先生と恵ばあちゃんは玄関を後にした
「雅君!私まださっきの事怒ってます!」
口を尖らして、不満げな恵美をなんとか宥める為に
「もう、機嫌直して下さいよ、何度でも謝りますから」
そう言い恵美に頭を下げ
「恵美、あの時は本当に申しわけ・【チュー】
頭を下げた所で首に手を回して、恵美は俺に口付けをした
驚く俺のからゆっくり離れると、いつもの恵美とはちがい扇情的な表情で微笑む
「!?え、恵美!?」
「ふふ。このくらいはお詫びしていただかないと」
そう微笑みながら俺に手を振り、待たせてるリムジンへ駆けていった。
(なんだこの胸のドキドキは・・・)
その日俺はモヤモヤしてなかなか寝付けなかった
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