第68話 田舎王子とペア推し会幹部達
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〇放課後の実行責任者室
恵美と凜は少し不満顔だが、本日は他にも詩織と彩羽も同席していた、椅子も沢山用意されていた
「えーと、これは・・なんで皆さん勢ぞろい?」
疑問に思っていると
【ガラガラガラーーー】
「やぁ!お待たせ!」
元気に手を挙げて立花生徒会長とその後ろに妹の桃花が入ってきた、その後ろにもゾロゾロと女生徒が続き各自椅子に座っていく
「恵美?こ、これはどういう事?俺何もきかされてないんだけど・・」
恵美は軽く微笑み
「あ、雅君は私達の後ろの席に座ってもらっていいですか?」
許嫁の4人は、生徒会長達と向かい合う形で座ってその後ろで俺がポツンと座っているそんな中、詩織が立ち上がり説明を始める
「えー本日お集まりいただいた皆さんは、私達の何れかとみーくんの【カップル推し会】の会長と副会長です」
「え?!」
驚く俺を無視して話は進む
「本日は皆さんに重要な事項を伝えます」
ザワザワする推し会の面々はお互いに顔を見合わせて何事か言った様子だ
「実は、この度の西王学園との体育祭において、女子の部で対決をすることになりました」
!?ま、まさか・・・
恵美が立ち上がり詩織の話しの続きを引き継ぐ
「ただの対決ではありません、西王学園が勝った際にある事を要求されてます」
皆が恵美の言葉に注目してることを確認すると、一呼吸おいて続きを語る
「西王学園が勝利したあかつきには、ここにいる雅君には西王学園に転校してもらう事になります!」
【えええええ!】しごく当然の反応だ・・
「そんな!私達は推しカップル誕生を夢見て日々活動してきたんだ!その生きがいを奪うのか!」当然の反応では無かった・・
「そんな暴挙を許していいわけない!【雅キュンとしおりんの萌えカップルで飯ウマ会】は断固抗議する!!」何に対して抗議するのか・・・
「当然【雅王子と凛姫王子のBLドキドキ会】も黙ってないぞ!」BL?何それ・・
「我々【雅&彩羽の優しツンデレのキュンキュンハート会】は断固戦うよ!」ネーミングセンス・・
立花生徒会長は席から立ち上がり、他の推し会の会長たちに向かって手を広げて静止するよう促した
「皆の不満や怒りはもっともだ!別の推しとはいえ、自分たちの夢と理想を奪われる苦しみは皆同じだ!」夢と理想の前に現実を無視ししないで
立花生徒会長は詩織達に向き直ると
「我々を集めたのは、この東皇高校に在籍する全女子生徒の98.5%が参加している各推し会の一時休戦と対西王学園に向けた一致団結を要請するつもりなのだな!」
4人は強く頷く
「わかった!これは我々にとっても死活問題だ!ペア推し活のうちの片方が取り上げられるという事は、ストローを奪われたバニラジェイクと同じだ!いくら美味しそうでも口に入らないでは意味が無い!」
「そうだろ!皆!」【おおおお!その通りだ!!】
(例えの意味が分からない・・)
俺の想像を超える、熱気と対西王にかける闘争心は確実に燃え上がる
詩織がそんな中、さらなる燃料を投下する事になる
「今回の体育祭で見事我々の東皇高校が勝利しなおかつその中で、活躍した推し会の推しペアには、1泊2日のペアで宿泊付き温泉(混浴)旅行が与えられます!」
【おおおおおお!!】「ええええええええええええぇぇぇ!」歓喜する推し会メンバーと驚愕する俺
「ここに私達4人の署名があります!!」
署名には、【1:この旅行に行く一堂 雅と婚約者の妨害行為は一切しない】【2:この旅行には残りの3名は絶対に同行しない】【3:この旅行中は如何なる行為(Hな事含む)も認める】
・・・勿論俺の署名は無い・・
立花姉妹は手を取り合い喜んでいる、他の推し会のメンバーも涙ぐんで肩を抱き合い喜んでいる人もいるようだ
涙ぐむ立花生徒会長は力強く椅子に足を乗せると(この人生徒会長だよな・・態度悪くない?)
「集まった皆!我々は打倒西王を掲げながら、お互いに切磋琢磨し推しの初夜初体験の悲願成就の為全力を尽くそうじゃないか!」
【おおおおおお!!】
「さしあたり、生徒会、風紀委員会、図書会、すべての委員会を凍結し、部活連も大会を控えてない部活は全力で体育祭への練習に切り替えて!」
【了解!】【直ぐに部長会を招集だ!】【体育祭の競技毎の特訓メニューの作成と指導人員の配置だ!】
「一刻を争うわ!直ぐに行動開始よ!!」立花生徒会長は風紀委員長を伴いダッシュで部屋を出ていくと他の面々も続いて退室していった
部屋には倒れた椅子と舞い上がった埃で閑散としていた、茫然としている俺の前に4人が立ち
「みーくんは、絶対に西王に渡さないよぉ~んw」
「み、雅は私らが守るから!
「雅くん、私の活躍よくみておいてね!」
「雅君、これから体育祭まで、みっちり、しっぽり、打ち合わせしましょうねーー」
「「「ちょい!恵美!(さん)」」」
目の前でガヤガヤ揉めだす4人を見ながら、自分の置かれてる状況が風にあおられる風船の様な気がして何もしてないの疲れてきた。
「あ、あの、皆さん・・・僕ちょっと頭を整理するので帰らせて頂いてよろしいでしょうか・・」
そういうと、ガヤガヤしていた4人はそっと顔を寄せ合いなにやらコソコソと話を始めた
「そうだよね、雅ちょっと顔色悪し、アタシらちょっと今後の事で打ち合わせするから今日は悪いけど一人で帰って貰えるかな?」
「雅君、もし具合悪いなら私の家の車でお送りしますよ?」
「もし良ければデイズで栄養のあるご飯が食べられるように手配しておくから」
「凛さん、大丈夫w帰ったらアタシがみーくんの晩御飯ちゃーんと作るからw」
「「「っっ・・」」」
何やら詩織の発言で不穏な空気が出来てきたので、「みなさんお先です」と断り、足早に家路に付く事にした。
●雅の出て行った後の第一生徒会室
【カチャ】
恵美は入口のカギを締めると、中央に寄せた4つの椅子に座った。
「では、彩羽さんが静流さんから聞いたという話を皆さんにも説明していただけますか?」
彩羽は他のメンバーの顔を伺うと黙って頷いた。
それから、彩羽は観覧車の中で静流から聞いた話を隠さず3人に話した、さすがに詩織はある程度しっているのか他の2人より反応が薄かった
「つまり、今のままでは雅君が暴走してしまい周りに被害を出してしまう可能性があると・・・」
動揺を隠せない凛が彩羽と詩織に尋ねる
「その【解放】とか【練成】とかを、もう二度と使わないように事情を雅くんに説明すれば良いんじゃないの!?」
凜のもっともな意見に。詩織は首を振る
「そもそも、【解放】っていうのは元々、みーくんの持つ力を抑制してる枷を取り外す技なの、だから【解放】しないでって、みーくんに言う事はずっと自分の力を押し殺して生活してって言ってるようなものなの」
恵美も凛も雅に辛い想いはしてほしくないので口をつぐんでしまう、そんな二人を見て彩羽が詩織に質問する
「でも、雅はこの街に来る前は、その【解放】をせずにずっと生活してこれたのよね?」
「た、たしかに井の中村だっけ?そこでの雅くんは一体どういう生活だったんんだ?」
詩織は、説明するのをためらっている様だった
そんな何時もの余裕のある詩織の煮え切らない様子に痺れを切らし恵美が詩織の肩に手をかけ珍しく強く問いただす
「詩織さん!!これは私らにも雅君にも大事な事なんです!雅君の住んでいた村ってなんなんですか!?答えてください!!」
【ガチャ】【ガラガラガラ】
「恵美、二階の娘には答えにくかろう、儂が代わりに話してやろう」
施錠したはずのドアが開き、入口に立っていた白く伸びた顎鬚が特徴の老齢の男性が穏やかな顔で4人を見つめる
「お、お爺様・・・・」
恵美が驚くと同時に詩織も呟く
「三宗家当主・・・三宗 時貞様・・」
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