第37話 田舎王子と映画ヒロイン達
----------------------------------------------------------
詩織を交えての説明が再開された、短期の撮影の為の多くの人件費や撮影場所、機材費代等の問題は大手のスポンサーが何社も付いていて全く問題は無いとの事だ。
さらに広告宣伝費も大々的に使い、鳳グループの各放送局のCM、竜崎書房の各雑誌による広告、二階ネットによる動画配信中のCM、あと大手自動車会社と大手貿易会社も協賛するとの事だった。
話のスケールが大きすぎて、お金の単位が分からないけど兎に角この映画に多くの人の力が加わっている事は分かった。
第一回目の顔合わせとスケジュール確認は終了という事で、俺は別室で亀山さんと打ち合わせがあるとの事で、竜崎さんと鳳さんも次のパンフ撮影の打ち合わせで画角の資料室に向かった。
二人しか居なくなった会議室で詩織と彩羽はお互い睨み合い対峙していた。
「詩織、やってくれたわね・・流石だわ、少ない情報から良く此処に辿りつけたわね、皆にお願いして雅にも秘密にしてたのに」
「彩羽さんも、結構思い切りましたね、まさかあれだけ反発していたお父様に頼るとはねw」
「へぇ・・中々情報通じゃない、でも関心しないわね他人の家の事まで干渉するのは」
「私は、みーくんに関係無い事は干渉するつもりは無いのだけど、貴方の行動原理はみーくんに関わっているのは判ってるからね干渉しない訳にはいかないかな?w」
「でも、この話の結末を知っていてオファーを受けたのよね?」
「彩羽さんの言いたい事は分かりますよ?でも、あくまで【原作】は、という前置きを忘れないでくださいねw」
「・・・・・何処まで掴んでるの?この台本にも肝心な最後の相手が書かれてないし・・」
「さぁ?それはご自分で監督にお聞きになればいいのでは?w」
二人の美少女の攻防が繰り広げられている別の会議室
【第5応接室】
「え!?最後の相手を俺が決めるんですか!?」
亀山さんは静かに頷いた。
「え!?でも・・原作では義理の妹の【花田 葉子】を選んでパッピーエンドってなってますよね!?」
俺の質問に亀山さんは目を細めてキラッと光る眼鏡の横でひとさし指を左右に揺らして「チッチッチ」と悪戯っぽく微笑んだ。
「雅君、これは恋愛映画なのよ?原作は私が言うのもなんだけど超人気小説で既に世間に周知されてるの」
「その映画化となれば、キャスティングの俳優次第では人気になるとは思うけど殆どの人は思うでしょうね」
「(ああ、どうせ四葉 彩羽の役【花田 葉子】が最後の相手なんだろ?)って」
確かにその通りだが、それは原作のある話の映像化では当たり前の事ではないのだろうか?
「じゃ、なんで私がこの映画の監督を引き受けたか判る?」
「え?それは亀山先生が映画の監督としても有名だからじゃないんですか?」
「評価してくれるのは素直に嬉しいけど、今回の面子には青葉のところの親会社も噛んでるのよ?テレビドラマとか幾つもこなしてる監督なんて何人もいるわ」
そういわれれば、その通りでいくら大学時代の親友とは言え鳳さんや竜崎さんの親会社の判断基準としては弱い気もする。
「私が監督として呼ばれたのは、まさに原作者だからなの」
「!?つまり、原作者がメガホンや脚本を手掛ける事で、原作改変にも手続きが要らないように、という事ですね!」
俺の答えに満足して俺の頭を撫でてきた
「え?いやちょっ・・それは流石に恥ずかしいです・・」
俺の反応が面白かったのか亀山さんは撫でるのを辞めなかった。
「茜とそのお父さんと青葉とそのお父さんが家に来てね、この話は最初は映像化の話だけだったの」
撫でる手を止める事無く話を続ける
「何回目かの会合の時にね、二階家のご党首が場に現れてね、映像化への協賛を申し出ると共に幾つかの提案をしてきたの」
「詩織のお父さんですね」
亀山さんは軽く頷き肯定した
「その提案の一つは、娘・・詩織さんをメインキャストとして配役する事、そしてもう一つが・」
「物語の結末を、原作から改変すると宣伝し主役の俺が撮影中に仲良くなった相手を最後の相手とする事を広く広告して原作を知ってる人たちにも関心を持ってもらおうと?」
「そう、これには私達も驚いたけど、今までにない試みに、その場の全員が乗り気になったのよ、そこで幾つか決まった事があって、その一つが私を監督にするという事なの」
「他には何か決めた事があったのですか?」
「そうね幾つかあったけど、君には先入観で決めて欲しく無いので、ギリギリまでキャスティングを知らせないようにする事と詩織さんがVチューバーの配信中に顔見せし世間に、二階 詩織として認知してもらう事も二階さんから提案があったわ」
詩織が顔出しする事を決めたという事は・・強い覚悟を感じる。
「ああ、あとついでに、この映画の概要を宣伝する事もお願いしておいたわ・・勿論、原作改変で今の時点で最後の相手が決まってない事も含めてね」
亀山さんから聞いた話は。想像を超える規模のスポンサーに、今までにない試みでの撮影とその過ごし方についてだった。
何より物語の結末が俺に委ねられるという、非常に重い責任感が俺にのしかかる
しかし、あの時の彩羽の言葉を思いだす。
(私の婚約者は世界一カッコよくて優しくて、純粋で皆を幸せに出来る力を持ってる凄い人なの!)
「亀山先生、いや!監督、俺、精一杯頑張りますので、ご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします!」
俺は亀山さんに頭を下げながらも、仕事に対する気持ちが以前とは比べ物にならない位、前向きになっていて胸が熱くなるのを感じていた。




