1話 うどん職人追放された!
実験作です。
「サヌキ、お前は追放だ」
A級クラン【夜の翼】の豪華なカイト専用の部屋で俺は追放を告げられる。
「……理由を聞いてもいいか?」
「何度も言わせるな。お前の作ってるあの白いグネグネが触手みたいで気持ち悪いんだよ!」
失礼な、アレはうどんというれっきとした食べ物だ。
「いや、しかしお前食った事ないだろう……」
「うるせえ! あれのせいでウチの士気が落ちているんだよ! 大体、お前の職業はなんだ? うどん職人? ふざけているのか!?」
ふざけていない。俺は、田舎で地元の名物うどんの職人になるべく修行していた。
だが、俺が世界各地の麵料理を勉強する為に旅をし帰ってきたら村はなくなっていた。
魔物の集団にでも襲われたのだろう。
建物は崩壊し、誰も居なくなっていた。喰われでもしたのかもしれない。
俺は、俺の故郷を忘れない為にもみんなに知ってもらう為にもうどんを広めていく事を決意したのだ。その為に都で店を開きたかったが、とにかく土地も設備も物価も何もかも高く手持ちでは足りず、冒険者ギルドで金を稼いでいた。
そして、有望だと言われていたクラン【夜の翼】にいたエルフに誘われ、加入し、金を貯めていた。
「とにかく! 俺達【夜の翼】はA級に上がった! お前みたいなわけのわからねえヤツを入れていて変な噂になっても困るんだよ。とっとと出て行けよ」
まあ、正直コイツは理由なんてどうでもいいんだろう。
俺が追放された本当の理由は俺がスゥさんと仲が良いからだろう。
スゥさんは俺を勧誘してくれたエルフで美人だ。
カイトは何度もスゥさんにアプローチをしているが全部断られている。
そんなカイトにとっては俺が目障りだったに違いない。
まあ、いずれにせよ、都会は息苦しかったし本当に何もかも高い。
此処で店を開くのは難しいとは思っていた。
「おい! いつまでぼーっとしてる! 早く出て行けよ! みんな、お前の事目障りだと思ってんだよ!」
「そうよ、あんたみたいな田舎者はとっとと出て行きなさいよ!」
「そうそう! あはあはは!」
お前らも田舎ものだろうが。
さっきまで黙っていた二人が急に騒ぎ出す。
俺はカイトにしなだれかかっている桃色髪の短い髪をいじる女とニヤニヤこっちを見ている男を見る。
リノとサンボォ。二人とも俺と同じ村の出身で、こいつらも偶然他の街に居て助かっていた。都へ向かう時には俺を慕ってくれていた。けれど、今となってはカイトに心酔してる。
都ですっかり変わってしまった二人。
化粧や飾りも派手で目が痛いくらいだ。
「わかった……じゃあな」
俺は立ち上がり、荷物を持って外に出ようとする。
すると後ろから声がかかる。
「じゃあな! 田舎者!」
「田舎で地団駄とうどんでも踏んでな!」
「あはははは!」…………。
本当に変わったな……。
こうして俺は【夜の翼】を追放された。
「さってと、どうすっかなー」
「どうせならさ、サヌキのいた所に帰ってみるってのは」
「そうだなーってうおおおお! いつの間に……」
俺の隣には先程までいなかったはずの女性がいた。
悪戯っぽく笑いながら、俺の前でくるりと一回転する。
美しい金髪が俺の鼻をくすぐり、ちらりと見えたエルフ特有の長耳だけでも美しいと思わせる美女は、美術品のような完璧な顔を俺に近づけ青い瞳で上目遣いに俺を見ていた。
「スゥさん。帰ってきてたんですね。ていうか、今の話……」
「ふふ、エルフの耳は伊達に長くないのよ」
スゥさんはそう言って、髪を掻き上げ長耳を俺に見せてきた。
俺はその様子に思わず笑ってしまって。
「うどんの方が長いです」
「そういう事じゃないのよ! このうどん馬鹿!」
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