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第97話 その実力

「申し訳ありません。私が行ったことがあれば転移門(ゲート)でお連れ出来たのですが...」


「構わん。徒歩でも行ける距離なのだろ?」


「まぁ歩いて行っても30分もすれば到着するだろう。向かう道中で色々と決めたいのだが、問題はないか?」


 色々と決める? 俺が1人で闇竜(ダークドラゴン)を倒せばトゥエントが俺の配下になる。それ以外に何かあると言うのだろうか。


「問題はない。何かあれば言うと良い」


闇竜(ダークドラゴン)との戦闘に関してだが、マリス様が闇竜(ダークドラゴン)に対して攻撃することは一切禁止だ。だが、回復や補助に関してはマリス様の力を借りても良いだろう。それならアンタが命を落とす確率も下がる筈だ。まぁ、アンタが死んでマリス様が再び四魔将(イビルアイ)に戻ってくれるというのなら、俺としては一番良いのだがな」


 攻撃以外はマリスの力を借りることが出来る。これなら普段勇者をやっている時のマリスの制限と同じだ。


 流石に俺の能力値(ステータス)ではそれくらいないと確実に命を落とすと思っているのだろう。


 身体強化魔法などを上手く掛けて貰えれば、多少は食らい付くことが出来るかも知れない。


「マリス。私が闇竜(ダークドラゴン)を倒せる確率はどれくらいあると思う? 正直に答えてみてくれ」


 言いにくいのかマリスは直ぐに返答をしない。


 少し時間が経過してからやっと口を開く。


「正直、まともに戦った場合ロディ様が闇竜(ダークドラゴン)を倒せる確率はかなり低いかと思われます...」


「そうか。完全に0ではないのなら問題はない。私は必ず闇竜(ダークドラゴン)を倒してみせる」


 もしも絶対に勝てない相手ならマリスが俺を行かせる筈がない。


 まともに戦ってということは、まともなやり方以外ならば可能性を上げることが出来ると言うことだ。


 俺には闇の領域(ダークテリトリー)という危険過ぎる特殊技能(ユニークスキル)があるが、全く制御が出来ない今の状態でこれを使おうとは思っていない。


 そもそも闇属性の闇竜(ダークドラゴン)に闇属性の攻撃が有効だとは思えない。


 確かエレンから聞いた闇竜(ダークドラゴン)の攻撃方法は物理攻撃と闇の息(ダークブレス)


 闇の息(ダークブレス)に関しては闇属性ならば俺がダメージを受けることはない。


 だったら物理攻撃に気を付け、攻撃を食らうことなく、こちらの攻撃を当て続けていく。


 魔法攻撃でも物理攻撃でもどちらかで少しでもダメージを与えることが出来れば、ひたすらそれを繰り返せばいつかは倒すことが出来る筈だ。


 覇王のローブの物理90%減少に更にマリスに物理防御を強化して貰っていれば、流石に一撃は耐えられると信じたい。


 もし一撃貰ってしまっても、生きてさえいればマリスの回復魔法で全快することが出来る。


 覇王のローブはエレンが光竜を倒した時に手に入れたみたいだが、光竜と闇竜(ダークドラゴン)。同格に見えるが実際は光竜の方がかなり上の竜種になる。


 闇竜(ダークドラゴン)ではなく光竜の討伐と言われていたら、先ず間違いなく諦めていただろう。


 正直、光竜はマリスでも1人で討伐出来るかどうかという存在だ。


 闇属性の竜では闇竜(ダークドラゴン)の上に暗黒竜という竜種が存在し、この暗黒竜が光竜をも上回る強さを持っているらしい。


「実力のある敵から逃げることは恥ではない。アンタが逃げたとしても言い触らしたりはしないから安心するといい」


 トゥエントは自分ならば逃げないとでも言いたげだ。


「トゥエント。今まで我慢していましたが、ロディ様に対してその言葉遣いはどうにかなりませんか? 仮に貴方がケルティアから抜けたとしてもロディ様の四魔将(イビルアイ)という立場に変わりはないのですよ?」


「すみません。俺は自分が認めた者以外に敬語を使う気はありませんので」


 別に俺自身敬語に拘るつもりはない。力を貸してくれるならタメ口だろうと構わない。


「問題ない。どうせそんな態度を取れるのも今日が最後になるのだからな。自由にさせてやれ」


 何故、これだけの自信が溢れてくるんだ。


 仮面のせいとはいえ、何の根拠もないのに自信が溢れてくる意味がわからない...。


「大した自信だな。さぁ到着したぞ。その自信の程を見せて貰おうか」


 目の前にはそびえる大きな山々。


 その間に光が射し込まない大きな空間がある。


 どうやらここが闇の谷のようだ。


 かなりの空間があり(ドラゴン)のような大きな魔物(モンスター)でも余裕で動き回れそうだ。


「真っ暗で先が見えないな」


 流石にこれだけ暗いとまともに戦闘をすることすら困難だ。


「直ぐに灯りを付けますね」

照明光(ライト)


 マリスの魔法で谷の内部が照らされる。


 これなら安心して先に進むことが出来る。俺達は闇の谷へと入って行く。


 俺を先頭にマリス、トゥエントという順番だ。


 広い空間とはいえ火力の高い攻撃には気を付けなければいけない。


 下手に壁が崩れては生き埋めになりかねないからだ。


 と言っても俺に使える最大の火力がある攻撃といえば、闇の領域(ダークテリトリー)を除けば火球(ファイアーボール)くらいなものだが。


 むしろ闇竜(ダークドラゴン)の攻撃で壁が壊されないように気を付けて戦うべきだろう。


 そんなことを考えながら谷を奥へと進んで行くと魔物(モンスター)に出会した。


 飛竜(ワイバーン)が3匹。竜種といっても劣化版のような魔物(モンスター)で、攻撃力はそれ程高い訳ではないが、その速度は他の竜種は比べ物にならない。


 更に飛行能力があるため空中に上がられたら、飛んでいる相手に当てられる技能(スキル)のない俺では魔法のみで戦うことになる。


 ちなみに飛行系魔物(モンスター)には弓や風魔法などが特効になるが、そのどちらもない俺には1匹相手でもギリギリな魔物(モンスター)だ。


「ロディ様には闇竜(ダークドラゴン)との戦闘まで温存して頂きたいので、この飛竜(ワイバーン)達は私が倒しても問題ありませんよね?」


「問題ありません。ですがこんな飛竜(ワイバーン)ごときにマリス様が相手をすることもありません。私がやりましょう」


 トゥエントが俺の前に立つ。


 まぁ、やってくれると言うのなら任せようじゃないか。トゥエントの実力を知るという意味でも良い機会だ。


 トゥエントの扱う武器は槍。


 背中に背負った自分の背丈よりも長く大きな槍がトゥエントの武器だ。


 重量だけでも相当な重さだろうに、俺なら持つことも出来ないかも知れない。


「直ぐに終わらせてやる」


 トゥエントが背中の槍を取り構えると次の瞬間、1匹目の飛竜(ワイバーン)が真っ二つになる。


 本当に一瞬のことだった。物凄い速さでワイバーンに接近し仕留めたのだ。


「次だ」


 仲間の飛竜(ワイバーン)を倒された残りの2匹が上空へ上昇していく。


「逃がすかよ!」


 トゥエントは上昇している1匹の飛竜(ワイバーン)に向かい飛び上がる。


 あの身体で物凄い跳躍力だ。そのまま飛竜(ワイバーン)の頭に槍を突き刺す。


「キシャァァァ!」


 飛竜(ワイバーン)は落下して地面にぶつかる。


 それと同時にトゥエントが地面に着地する。


 残った飛竜(ワイバーン)だが、完全にトゥエントに怯えたのかひたすら上空へと逃げていく。


 流石にあの位置ではトゥエントの攻撃も届かないだろう。


「ふっ」


 トゥエントがニヤリと笑い持っていた槍を上空へと放った。


 まるで重力の法則を無視するかの如く、槍は物凄い速度で上空へと飛んでいき飛竜(ワイバーン)の身体を貫いた。


「ギシャァァァ!」


 槍とともに飛竜(ワイバーン)が地面へと落下する。


 トゥエントはワイバーンの身体から槍を引き抜くと、再び背中へと戻す。


「さぁ、終わったぞ。先に進もうか」


 これがトゥエントという男か。


 力だけじゃなく速さも兼ね備えている。


 エレンともマリスとも違う別の強さをトゥエントからは感じた。


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