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第76話 ユニークモンスター

「ロディ様。ロディ様」


 どこからかマリスの声が聞こえてくる。


「う、うーん」


 ベッドから身体を起こし目を開ける。


 目を開けた先にはマリスの姿があった。


「ロディ様。おはようございます。朝食の準備が出来ていますので、テーブルまでお越し下さい」


 そう俺に伝えるとマリスが俺の部屋から去って行く。


 おそらく部屋の扉をノックされた筈だが、全く気が付かなかった。


 まだ少し眠いが今日はスタンリスに行きファヴァルに会わなければ。


 眠い目を擦りながらベッドから起き上がり食事が置かれているテーブルへと向かう。


 既にエレンは席に着いているので、俺も席へと腰を掛け食事の方を済ませる。


「マリスの仕事が終わったら行こうか」


 マリスの仕事とは食事の後片付けを含んだ家事全般のことだ。


「お待たせしました。それでは行きましょうか」


 30分程待つとマリスの準備が終わる。


「それじゃあ行って来るね!」


「今日の夜は帰れないかも知れないし、2人で食事は済ませといてくれて良いからね」


 エレンと会話を交わした後、家の外へと出る。


 外に出るとそこにはヘクトルとミラの姿があった。


「おはようロディ」


「ロディおっす!」


「2人ともおはよう! 今日はクレイアじゃなくてスタンリスに向かおうと思っているんだけど...」


 俺は剣を手に入れるためにファヴァルに会いに行くことを2人に伝えた。


「そんな凄い人に剣を作って貰えるなんて凄いね!」


「俺もその人に武器を作って貰いたいなぁー」


 正直ヘクトルの邪悪の斧ならミスリル製の武器よりも強い気がする。


 呪われた武器は強力だと昔から相場が決まっている。


「それじゃあ向かおうか」


 クレイアまでの道と違いスタンリスまでの道には聖水などの対策がされていない。


 どこで魔物(モンスター)に遭遇したとしてもおかしくはない。


 と言ってもこの周辺に強力な魔物(モンスター)は居ないので、遭遇したとしても危険はないし、経験値の元になるだけだ。


 テベルを出て30分程歩いた所で魔物(モンスター)に遭遇する。


 一角ウサギが10匹。数がいてもどうということはないザコだ。


〖一角ウサギ〗

その名の通り頭に1本の角を生やした体長30㎝程のウサギの魔物(モンスター)で、少し素早いくらいで他には何の特徴もない魔物(モンスター)だ。


「可愛いウサギちゃん。こんな可愛い子達を倒しちゃうの?」


 ミラが外見に騙されている。


 確かに見た目は可愛いかも知れないが、もろに攻撃を受ければいくら雑魚魔物(モンスター)とはいえ、多少のダメージは受けてしまう。


 それよりも1つ気になることが...一角ウサギの中心に一匹だけ雰囲気の違う一角ウサギがいる。


 通常の一角ウサギは白い体毛に茶色い角を生やしているのだが、こいつは体毛が若干灰色に近い色をしていて角も真っ黒だ。


「てりゃぁー!」


 ヘクトルが斧を振り回しながら一角ウサギに接近して行く。


 これだけデタラメに振り回されては回避することが出来ず、次々と身体に斧を叩き付けられていく。


 俺も負けていられない。


 一角ウサギに拳を叩き付け確実に数を減らしていく。


 あっという間に残りは黒い角の一角ウサギのみだ。


「これで最後だぁ!」


 ヘクトルが斧を振り上げながら一角ウサギに迫る。


 何故だ? 魔法を使うことが出来ない筈の一角ウサギの角に魔力が集まっていくのが感じられる。


「ヘクトル下がって!」


 一角ウサギの角から電撃が放たれる。


「うおっ!」


 俺の声に反応したヘクトルが電撃の回避に成功する。


 今のは明らかに魔法だった筈。一角ウサギは魔法を使えない筈なのに、この魔物(モンスター)は一角ウサギではないのだろうか。


 俺は一角ウサギの能力値(ステータス)を確認してみた。


ーーーーーーーーーー

一角ウサギ

職業なし

LV5

HP130

SP50

MP80

力70

技80

速さ110

魔力100

防御60

[装備]

なし

攻撃力70

守備力60

[加護]

炎F 水F

風F 地F

聖F 魔F

光C 闇F

ーーーーーーーーーー


 一角ウサギであることは間違えないようだが、明らかに能力値(ステータス)が高くなっている...。ひょっとしたら...。


「ヘクトル。その一角ウサギは角から魔法を放つみたいだ。魔法に気を付けながら戦おう」


「よーし、だったら」


 ヘクトルが一角ウサギに接近し左手で角を握り締めた。


「おりゃあ!」


 バキッという音が響き一角ウサギの角が折れる。


 ヘクトルらしいパワープレイだが、それをするくらいなら普通に倒せば良かったのではと思う。


「これで終わりだ!」


 ヘクトルの降り下ろした斧が一角ウサギの首を落とした。


 見るのに抵抗があったのかミラは両目を閉じている。


「ん? 何だこれ?」


 ヘクトルが何かに気付いたようで、首をなくした一角ウサギの切断面に手を突っ込んだ。


 引き抜いた手には小さな赤い石が握られていた。


 石は不気味な輝きを放っている。


「ロディに渡しとくね」


 俺はヘクトルから受け取った石を異空間収納袋(マジックバッグ)へと収納した。


「ねぇ、マリス。今の一角ウサギって...」


「はい。特殊魔物(ユニークモンスター)ですね」


特殊魔物(ユニークモンスター)

 他の個体とは明らかに違う能力値(ステータス)を持った魔物(モンスター)で、発生条件などは判明していない。


 一角ウサギのユニークだったからまだ良かったが、強い魔物(モンスター)のユニークだったらその1匹のみにパーティーが全滅させられることもある。


「この辺りに特殊魔物(ユニークモンスター)が出たって話は聞いたことなかったんだけどね」


 戦闘を終えた俺達は一角ウサギの素材を全て異空間収納袋(マジックバッグ)へと収納した。


 肉は食用になるし、角は安価だが買い取って貰うことが出来る。


 素材の回収を終えて再びスタンリスに向けて歩き出す。


 街に到着すると入り口には1人の兵士が立っていた。


「お? 見たことのない顔ぶれだな。スタンリスには何の用で来たんだい?」


「鍛冶師のファヴァルさんに会いに来たんです」


「そ、そうか...」


 ファヴァルの名前を出すと兵士の顔色が変わる。


「ファヴァルさんの工房の場所をお聞きしても良いですか?」


「街を入って左に行った奥にファヴァルさんの工房があるが、武器を頼もうと思ってるなら諦めた方が良いと思うぞ...。ファヴァルさんに武器を頼みに来る冒険者は多いが、A級冒険者ですら断られているからな」


 ファヴァルが中々武器を打たないというのは知っているが、エレンの名前を出せば大丈夫だという話だ。


 兵士にお礼を言い街の中へ入った俺達は教えられた通りファヴァルの工房へと向かう。


 工房へ着いたが想像していた立派な工房ではなく、こじんまりとした小さな建物だ。


「失礼します」


 一声放ち工房の中へ入ると中には1人の男が立っていた。


 男は人間ではなくドワーフ族のようだ。


 見るからに頑固者の職人といった感じがする。


「何だ? お前達は?」


 ファヴァルが俺をギロっと睨む。エレンとはまた別の威圧感がある。


「俺はエレンの息子でロディと言います。ファヴァルさんにミスリルの剣を打って欲しいのですが...」


「あの女の息子か...ちっ! それで予算の方はいくらなんだ?」


 やはりエレンの名前を出せば何とかなりそうだ。


「1万コルを予定しているのですがだいじょ...」


「ふざけてるのか!?」


 俺が最後まで言い終わることなくファヴァルが叫んだ。


 エレンの名前を出せば大丈夫だと聞いてたのに話が違うじゃないか...。


 ファヴァルは相当怒りを見せている。


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