第70話 ロディ対シュトラウス
『全状態異常抵抗』
マリスの魔法が俺の身体を包み込む。
「くっ! だったらこの男を殺して貴女に絶望を与えてあげましょう!」
シュトラウスの右手が俺の首もとに向かって伸びる。
俺は首を横に剃らしシュトラウスの手から逃れる。
コイツに弱点はあるのか? 俺はシュトラウスの能力値を確認した。
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シュトラウス
闇魔導師 職業LV5
LV50
HP525
SP207
MP278(26%)
力316
技215
速さ205
魔力224(35%)
防御187
[装備]
闇のローブ
攻撃力316
守備力237
[加護]
炎C 水D
風D 地D
聖E 魔C
光E 闇B
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やはり先程感じた通り力が強い。
光と聖属性に弱いみたいだが、俺に使える属性攻撃は炎と闇しかない。
光の攻撃魔法が使えればかなり有効だった筈だが...。
もちろんシュトラウスが能力値を隠蔽していて、実際にはこの能力値と異なる可能性もある。
マリスのように自由に数値を変化させる隠蔽を使える者など、かなり限られており通常の隠蔽の場合は単純に能力値を知ることが出来ないだけだ。
シュトラウスの能力値に比べて現在の俺の能力値は
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ロディ
勇者 職業LV2
LV19
HP407(7%)
SP203(7%)
MP152
力182(7%)
技193(7%)
速さ193(7%)
魔力142
防御152(7%)
[装備]
なし
攻撃力182
守備力152
[加護]
炎D 水D
風D 地D
聖D 魔D
光S 闇S
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シュトラウスに勝っている能力は1つもないが、思っていた程圧倒的に差があるということはない。
上手くやれば勝つことも出来る筈だ。
『火球』
牽制の意味を込めてシュトラウスに魔法を放つ。
「そんな魔法が私に効くと思っているのですか?」
『火球』
シュトラウスは俺の放った魔法に対して魔法を放つ。
俺の放った魔法よりもかなり大きな火の玉が俺の魔法を消滅させてこちらに向かってくる。
「くっ!」
横に転がり魔法を回避する。
転がった先にはシュトラウスが先回りしていた。
「がはっ!」
シュトラウスが俺の腹を蹴り上げると、俺の身体が宙へと浮く。
「くっ、くっそぉ...」
空中で体制を変えるとシュトラウスの顔面を殴り付ける。
俺の拳が顔面に入ったというのにシュトラウスは涼しい顔をしている。
防御力がそれ程高い訳ではないのにダメージが入らないということは、物理攻撃に対して何か耐性があるのかも知れない。
「残念ながらそんな攻撃では私にダメージを与えることは出来ませんよ。死になさい!」
シュトラウスの手刀が宙に浮いた俺の腹を貫いた。
「ぐうっ!」
腹に強い痛みを感じた後、痛みが熱いような痛みへと変化していく。
「ロディ様ぁ!」
シュトラウスが手を振り回すと、俺の腹から手が抜けて身体が地面へと叩き付けられる。
『完全回復』
地面へと落下した俺の元にマリスが一瞬で近付くと、回復魔法を使用する。
「はぁ、はぁ、ありがとう。助かった...。後少しで死ぬところだったよ...」
「ロディ様...心配で心臓が止まるかと思いましたよ...」
「ゴメン...でも1つ勝ち筋を見付けたよ。シュトラウスって俺の能力値を確認したと思う?」
「いえ。おそらくはしていないかと思います」
余程上手くやらなければ基本的には能力値を確認されたことは本人には伝わる。
何か違和感のようなものを感じるからだ。
先日俺がアレスの能力値を確認したこともアレスにはわかっていただろう。
だが、誰に確認されたかなどはわからないし、アレスくらいの人間なら能力値を見られることなど、日常茶飯事なので気にしていないのだろう。
「俺が明らかに弱いと思って舐めているんだろう。だったらそれを利用させて貰う。ちなみにマリスはこんな魔法を使うことは出来るかな?」
俺はマリスにある魔法を使えるかどうかを確認する。
この魔法自体がシュトラウスに有効なのは間違えないし、それを使うことである認識を埋めつけることが出来る。
「使用することは出来ます。全状態異常抵抗とは干渉しないので、同時に発動させることも可能です」
「俺が合図をしたら掛けて欲しい」
「わかりました」
俺は少しづつシュトラウスに近付く。
「貴方では私に勝てないとわからないのですか?」
「それはどうかな」
シュトラウスに向かい一気に走り出す。
拳に力を込めて振り上げる。
「無駄だとわからないのですか? 貴方の攻撃は私には通用しません」
「マリス! 今だ!」
『光属性付与』
俺がマリスに頼んだのは光属性の付与。本来は武器などに付与する魔法だが、拳に付与することも出来るらしい。
俺の攻撃が無害だとわかっているシュトラウスは、わざわざ攻撃を避けることはしないと予想していた。
案の定シュトラウスに攻撃を避ける素振りはない。
俺の物理攻撃が効かないとしても光属性を宿した拳ならどうだろうか。
「くらえー!」
俺の拳がシュトラウスの顔面を捉える。
「ぐぉぉぉ!」
シュトラウスの顔が歪み後方に吹き飛び倒れる。
「ぐぅぅぅ...バカな...いくら光属性を付与されたとしてもここまでのダメージを受けるとは...」
シュトラウスが身体を震わしながら立ち上がる。
「俺には光属性の強い加護があるからね」
当然だが属性攻撃には加護の力も影響する。
俺の闇の弾丸も通常よりかなり強化されている筈だ。
「なるほど。そういうことですか...」
シュトラウスが俺の目の前に接近して両手を上げる。
「貴方程度にこの魔法を使用することを光栄に思いなさい」
『闇の極炎』
闇の炎が俺の身体を包み込む。
「ははははっ!貴女の大事な男はこの世界から消えてなくなりましたよ」
「そうですか」
マリスの表情が変わることはない。
俺の消滅を確認するため、炎が収まるタイミングでシュトラウスが近付いてくる。
炎が収まった跡には無傷の俺の姿がある。
「バカな!?」
「この勝負は俺の勝ちだぁ!」
思い切り力を込めて突き出した光の拳はシュトラウスの身体を貫いた。