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第7話 勇者と魔王

「女神アルテミアよ。その全能なる力を持って私に天礼(レクシール)をお授け下さい」


 ヘクトルの時と同じ様に女神像が輝き出すと、輝きが収まったと同時にミラの前にいくつかの文字が表示された。


ーーーーーーーー

職業欄(ジョブスロット) 3

神官 適性A

僧侶 適性B

薬師 適性B

魔道師 適性C

踊り子 適性C

魔物使い 適性D

剣士 適性E

ーーーーーーーー


「お前は3つの職業を選ぶことが出来る様だな。魔法職に向いている様なので、神官などが良いかも知れん。くれぐれも慎重にな」


 ミラアに念押しをしている。先程のヘクトルの暴走があったことから不安になっているのだろう。


 上級職はないが、ミラが望んでいた薬師もあるし、選択肢としては悪くはないと思う。


 神官と僧侶に付いてはイマイチ違いがわからず、正直、一緒なんじゃないかと俺は思っている。


 若干覚える魔法やスキルに違いはあるのかも知れないが...。


職業決定(ジョブセット)! 薬師」


 ミラの能力値(ステータス)に薬師が表示された。


 元々なりたがっていた職業だし、ミラの能力値(ステータス)を考えても全く問題はない気がする。


「残りの2つは家に帰り、両親と話し合ってから決めたいと思います」


「うむ。それが良いだろう。後悔のないように選ぶのだぞ」


「はい。ありがとうございます!」


 いよいよ次は俺の番だ。もう剣聖(ソードマスター)や賢者なんて欲は言わない。せめて戦士や剣士が1つ。それから何か魔法職があれば充分だ。


「それではお前で最後だな」


「ロディです。二人と同じくテベルから来ました」


 何故か男は俺の方を見ると、驚いた顔をしている。流石に名前やテベルからきたことに驚いている訳ではないと思うのだが、確認した書類に不備でもあったのだろうか...。


「お前...なんだ!? その能力値(ステータス)は!? LV1でそれほど能力値(ステータス)が高い人間など見たことがないぞ!」


 能力値(ステータス)が高いことに自覚はあったが、まさかこれ程驚かれるものだとは思ってもみなかった。


 流石に、デタラメに強いエレンの息子だからと言ってもこの男には何のことかサッパリだろう。


「それに光と闇の加護がどちらもSランクとは絶対にあり得ないことだ! もしも光の加護がSランクならば反属性にあたる闇の加護は精々高くてもDが限度といった筈だ」


 加護とはその人間が生まれ持って神から与えられた祝福の様なもので、全部で8つの属性がある。


 その属性の加護が高ければ、属性攻撃をする時には威力が増加し、逆に属性攻撃を受ける時には威力を軽減してくれる。


 Sランクの加護になると、その属性でのダメージを一切受けなくなる。


 仮に光りと闇の加護がSランクの俺は、光りと闇属性の最強魔法を受けたとしても、かすり傷1つ負うことがない。


 反属性とはその属性に相対するもので、炎なら水、風なら地、聖なら魔、光なら闇といった属性が反属性になるのだが、基本的には片方の属性の加護が高ければ、反属性の方は低くなるというのが一般的だ。


 光りと闇の加護が両方Sなのを不思議に思ったことはあるが、デメリットは一切ないので、得したくらいの軽い気持ちで考えていた。


「光りと闇の加護がSランクだと天礼(レクシール)を受けるのに問題はありますか?」


「いや...特に問題はないのだが...」


「では天礼(レクシール)を始めても宜しいでしょうか?」


「う、うむ...。やってみるが良い」


 俺はその場に膝まずき、存在するかしないかもわからない神に、ただひたすら祈った。


「女神アルテミアよ。その全能なる力を持って私に天礼(レクシール)をお授け下さい」


 女神像が輝き出したが、明らかに2人の時よりも激しく輝いている。


 何か失敗したのか? いや、俺は2人と同じ様にやったぞ。むしろヘクトルと比べたら絶対に俺の方がマシな筈だ。


 激しい輝きが部屋全体を真っ白く染め、全員の視界を奪った。


「一体何が...」


 ようやく輝きが収まったかと思えば、俺の前に表示されている文字はあまりにも予想外過ぎる結果となっていた。


ーーーーーーーー

職業欄(ジョブスロット) 3

勇者 適性S

魔王 適性S

旅人 適性C

遊び人 適性E

ーーーーーーーー


 ...何かの間違えじゃないのか...。勇者と魔王が両方あるのだが...。


「おっ! ロディすげーな! 勇者があるじゃないか!」


 ヘクトル...問題はそこじゃないんだ...。勇者があるだけなら驚きはするが、父親が勇者だったのかもと言うことで終わる。たが...。


「ま、魔王だと!? 魔王になれるのは魔族の血を引く者だけの筈だ! その異常な能力値(ステータス)も魔族だとすればあり得るのかも知れん!」


 ...まさかエレンが魔族だったのか?  確かにエレンが長命の魔族だとすれば、あの若さもデタラメな強さも納得が出来る。


 だけど...この状況どうするんだよ...。


 魔王という文字を見てから男達の様子がおかしい。


 絨毯の脇にいた2人は俺から距離を取り、明らかに警戒している様に思える。


「誰か! 誰か居らぬか! 魔族がこの城に侵入しているぞ!」


 男が叫び声を上げると、入り口から何人もの兵士が部屋の中へなだれ込んできた。


「一体どうしましたか!? 魔族とは一体!?」


「そ、その男だ! その男の職業に魔王が選ばれておるのだ!」


「魔王!?」


 兵士達にざわめきが起こっている。


 色々と考えると全ての辻褄があってしまうため、俺には何かの間違えですと言うことが出来なかった。


「陛下の命を狙う者かも知れん! 捕らえるのだ!」


 男の指示で、向かってきた兵士達により、俺はその場に寝転ばされ身体の自由を奪われてしまった...。


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