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第64話 救出依頼

 そこには上下黒で揃えた下着姿のエレンの姿があった。


 どうやら今から出掛けるようで準備をしているところだったみたいだ。


 あれだけの力を持っているくせに身体は華奢でそれ程筋肉が付いているようには見えない。


 腰もキュッとしまっていて年齢を感じさせないスタイルの良さだ。


 まぁ実際にはエレンの正確な年齢は知らないのだが...。


「アンタ何、母親の身体をじっと見てるんだい? まさか実の母親に欲情してるんじゃないだろうね?」


 エレンが俺の目線に気付いたようだ。


 転生をしたとはいえ、エレンはこの世界で俺が産まれた時から母親だったんだ。


 いくら何でも女性として見ることはない。


「こんなところで着替えずに自分の部屋で着替えてよ...」


「何言ってるんだい! 私が着替えてたらアンタが突然現れたんだろ!?」


 エレンの言うことはもっともだ。


 何も言わずにこの場に突然現れたのは俺達であってエレンではない。


「私はこれから少しやることがあるから出るけど、アンタも家に引きこもってるんじゃないよ」


「あ、俺も出るよ。クレイアの冒険者ギルドへ行こうと思ってるから」


 職業を勇者に切り替え魔王の装備を外しエレンと共に家を出る。


 外に出るとそこにはヘクトルの姿があった。


 ヘクトルは母親と一緒で両手一杯に荷物を持っている。


「あらロディ。いつもウチのバカ息子がありがとうねー」


 ヘクトルの母はヘクトルとは違い賢い女性だ。


 ヘクトルの頭は父親譲りなのだろう。


「いえ。いつもヘクトルには助けられています」


 半分は社交辞令だ。だが、実際にヘクトルには助けられている面もある。


 ヘクトルの存在だけで気持ちが軽くなったりすることもあるし、ヘクトルを見ていると余計なことで悩んでたりするのが馬鹿馬鹿しくなったりもする。


「ロディ。今からどこか行くのか?」


「ちょっと冒険者ギルドで依頼を受けて来ようかなーって。突然だったからヘクトルとミラには声を掛けなかったんだ」


「ミラは今日おばあちゃんの薬屋を手伝うって言ってたけど、俺は暇だぞ? 俺も一緒に付いて行く!」


「ヘークートールー! アンタ今日は私の手伝いをするって約束でしょう!」


 ヘクトルの母が鬼の形相に変わる。今のヘクトルはどう見ても荷物運びをしている最中だ。


「ヘクトル。今日は俺1人で行くから、ちゃんとおばさんの手伝いをしなよ。ヘクトル達とはまた明日行こう」


「ちぇっ! 仕方ないなぁ...それじゃあミラにも声を掛けておくから明日は俺達も一緒だぞ!」


「ああ。約束だ」


 ヘクトルは母親に付いて行きその場から姿を消した。


 入口まではエレンと3人で行き、村の外に出ると俺達は北のクレイアへ、エレンは西の方へと向かって行く。


 特にエレンがどこに行くのかは知らないが、別に俺が知る必要もないだろう。


「今日は俺1人だけど、なるべくマリスの援護は受けないようにやってみるよ」


「私としてはロディ様に頼って貰いたいんですけどね」


 マリスがニッコリと微笑む。


 マリスと2人でクレイアまで行くのはかなり久し振りな気がする。子供の頃は買い物とかで一緒に行くことはあったけど、最近はあまりないな。


 ただ、気付けばいつも傍にいてくれるのはマリスだ。


 マリスと色々な話をしながらクレイアに向かっていると一瞬で時間が過ぎ、クレイアへと到着した。


 クレイアに入場した俺達は本日受ける依頼を受けるために冒険者ギルドへと向かった。


 冒険者ギルドに着き中に入るとギルド内はいつも通り賑わっていた。


 現在出されている依頼を確認するため依頼の張り出しがしてある壁へと向かう。


 現在の俺のランクはEランク。パーティーで依頼を受ける場合は1つ上のDランクまで受けることが出来るが、ソロで依頼を受けるとなるとEランクの依頼までだ。


 一応マリスがいるのでDランクの依頼を受けることも出来るが、マリスは居ないものとして考えるべきだ。


 依頼書を見渡すと1つ気になる依頼があった。


 ランクの指定はないのだが、報酬額は10万コルと相当の高額報酬だ。


 依頼内容は東にあるトゥリアの街に住むリーリエという少女の救出と書いてある。


 俺の知っているリーリエだとすればトゥリアを治めているパントという貴族の娘のことだ。


 依頼主の名もパントと記載されているので間違えはないと思う。

 

 かなり昔にエレンと一緒にパントの屋敷に行ったことがあるが、エレンがパントと話している間、俺はずっとリーリエと遊んでいた記憶がある。


 リーリエは歳は俺と同年代くらい。長い綺麗な金髪をした可愛らしい少女で、貴族の娘だといっても全然偉ぶった態度をすることもなく、俺に対しても凄く優しく接してくれた少女だ。


 俺の中身が年齢通りだったら確実に一目惚れしてしまったことだろう。


 救出依頼ということはリーリエが何者かに拐われたということなのだろう。


 もしも盗賊団などに拐われたのであればそれなりのランク指定がある筈だ。ランク指定のない依頼とはどういうことなのだろうか。


 もしもリーリエが危険な目に合っているのだとすれば何とか助けてやりたい。


 見返りなどが一切なかったとしてもその気持ちに変わりはない。


 しかしこれだけの高額報酬だというのに、まだ依頼が残っているのはたまたまタイミングが良かったのだろうか? 普通なら誰もが飛び付きそうな依頼なのだが...。


 俺はこの依頼を受けることを決め、依頼書を剥がし受け付けへと持って行く。


 受け付けカウンターにいる職員の中で、手が空いている職員は男性職員のみ。


 依頼書を男性職員の前へと差し出す。


「こちらの依頼をお受けになるのですね。こちらの依頼を受けるのは貴方で78人目になります」


「78人?」


「こちらの依頼は人数制限のない依頼となります。報酬を受け取れるのは達成者1人のみとなりますが、達成出来なかった方にマイナス評価が付けられることはありません」


 本来は依頼を達成出来なかった場合はマイナス評価が付き、それが蓄積されるとランクが降格したりすることがある。


 この依頼に関してはそのペナルティがないということだ。


 まぁ、そうでもしないと現状77人にマイナス評価が付くことになってしまう。


「わかりました。それでは依頼の手続きをお願いします。パーティーではなくソロの方で」


 職員の前にギルドカードを差し出す。


「かしこまりました」


 数分待ち職員からギルドカードが返却される。


「詳しい内容はトゥリアに住む依頼主のパント男爵からお聞き下さい」


「わかりました」


 トゥリアに行きパントから話を聞くべく、俺達はクレイアの入り口へと向かった。


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