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第63話 魔流族

「魔流族? それは一体なんだ?」


「彼等はディルクシアで暮らす魔族でありながらこの国の民ではありません。当然クロード様の指示に従うこともありませんし、この国に税も納めておりません」


 ディルクシア内で暮らしているのに民ではない? それは外国人が日本で暮らしているみたいなものなのだろうか。


 だが、その場合でも日本で生活をしている限りは日本に税金を納める必要がある。


「そんな勝手なことをクロード様がお許しになっているのか?」


「はい。ディルクシアに害を加えないという話でディルクシア内に住むことをお許しになられています」


 クロードがそれを許すということは何か特別な理由がある筈だ。


 本来ならばそんなことを許す筈がない。


「何故、クロード様はそのようなことをお許しになられたのだ?」


「魔流族が戦闘能力の高い一族だからです。彼等は傭兵として戦い報酬を得ることで生計を立てております。モンスター討伐なども彼等に任せることで、軍の者は余計なことに手を割くことなく軍務に集中することが出来ますので」


 なるほどな。人間の国でいうところの冒険者の役目を担っているのだろう。


 国の仕事を請け負うことで国に属さないことには目をつぶる。


 敵対しないというのなら無理に国に所属させることもないということか。


 無理に従わせようとして彼等と戦ったとしても得るものは何もない。


「その魔流族を傭兵として雇いアルバスとの戦争に協力させるということか?」


「そうです。魔流族と言ってもディルクシア内には数万を越える数がおり、その全てが1つになっている訳ではございません」


「魔流族の中でもいくつかに分かれているということだな?」


「はい。そうです。そして、ここケルティアには3000の魔流族が暮らしている土地があります」


 3000? さっきアルロンはアルバスに勝利するためには5000の兵が必要と言った筈だ。


 それに対して魔流族の数が3000では全員がケルティア軍に加わってくれたとしても足りない計算になる。


「数が合わないのではないか? 先程お前は後5000の兵が必要と言った筈だ」


「はい。普通の兵であれば5000は必要でしょう。しかし魔流族が戦いに加わるというのでしたら1000人加わるだけでアルバスに勝利することが出来るでしょう」


「魔流族とはそれ程の存在なのか...」


「彼等の中でも選ばれた者だけが得られる、流牙と言われる称号を持つ者の中には、マリス様にも匹敵する程の強さを持つものもいます」


 魔流族の中にはそれほどの力を持つ者がいるのか。


 それならば1000人で5000人分以上の働きが出来るのも納得が出来る。


「彼等が力を貸してくれると思うか?」


 現在のケルティアの現状では彼等に高額の報酬を払うことなど叶わない。


 当然マリスに金を出して貰うつもりもない。


「ケルティアに住む魔流族は金だけでは動きません。彼等の力を借りれるかどうかはロディ様次第だと思います」


 魔流族との交渉か。俺に交渉のスキルはないが、交渉スキルを持つ商人のヘクトルよりは上手く交渉が出来る自信はある。


「わかった。私が話をしよう。ケルティアに住む魔流族の代表とはどこに行けば話が出来るのだ?」


「おそらく部族長は今もどこかで受けた依頼を果していることでしょう。魔流族には国からだけではなく個人的に依頼をする魔族もおりますから」


 益々冒険者のような存在だな。冒険者ギルドがない魔族の国では彼等のような存在が必要なのかも知れない。


「それではどうすれば良いのだ?」


「直ぐに現在の族長の居場所をお調べします。わかり次第直ぐにロディ様にご連絡差し上げます。拠点はケルティアですが現在ケルティアにいるかはわかりません。ケルティア以外にいる場合はご連絡までに日数が掛かってしまうかも知れませんが...」


「その間アルバスからの攻撃は大丈夫だと思うか?」


「ケルティアから一番近かったバーラン城が消滅したのです。どんなに短くても1ヶ月はケルティアへの侵攻はないかと思われます」


 アルバスの兵力はケルティアの10倍。それでも全軍でケルティアを攻めないのには他の四魔将(イビルアイ)の存在も影響しているだろう。


 アルバスでもケルティアが窮地に立たされれば救援要請を出す可能性は考えている筈だ。


 むしろ手薄になったアルバスを他の四魔将(イビルアイ)が攻める可能性もある。


 アルロンの言うとおりバーラン城にいた全ての戦力を失った今、アルバスが攻撃を仕掛けてくる確率は低い。


 だが、アルバスには魔物(モンスター)の群れを操ることが出来る人物がいる。


 その力を使えば自分達に全く犠牲を出すことなく、ケルティアを攻撃することが出来る筈だ。


魔物(モンスター)からの攻撃があるかも知れん。警戒体制だけは怠らないようにしてくれ」


「わかりました。魔物(モンスター)の攻撃があった場合は即座に撃退出来るように手配をしておきます」


 取り敢えず今出来ることはこれくらいか。


 後はアルロンからの報告を待ち、報告があれば魔流族の元へ向かえば良い。


「それでは宜しく頼んだぞ。マリス。テベルへの転移門(ゲート)を頼む」


「はい」


 マリスがテベルへの転移門(ゲート)を発動させる。


 現在の時刻はまだ昼前。


 家でじっとしていても色々と考えてしまうだけだ。冒険者ギルドに行って何か依頼を受けよう。


 突然なのでヘクトルとミラにも都合があるだろう。


 今日はソロでこなせる依頼を受けることにしよう。


 俺達はテベルへと繋がる転移門(ゲート)を潜った。


 転移門(ゲート)を抜けた先はわが家の入口を入った所だった。


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