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第61話 覇王のローブ

「う、うーん...」


 鳥のさえずりが聞こえ目を覚ますと、俺の顔に柔らかいものが触れていた。


 そのまま頭を上げると目の前にマリスの顔があった。


「ロディ様。おはようございます」


「マリス...?」


 どうやら俺はマリスの膝枕で眠っていたようだ。


 何故こんな状態になっているか記憶を辿ってみる。


 思い出した! 俺の発動させた闇の領域(ダークテリトリー)によって、闇に浸食されてしまったマリスを救うために全ての力を出し切った俺は、マリスの身体が回復すると同時に意識が遠くなっていったんだった。


 一応、今のところ俺の身体に不調はない。  

 

 エレンが生命力を注ぎ込むことで命を亡くすかも知れないと言っていたが、どうやら全生命力を使いきる前にマリスを救うことが出来たようだ。


「マリス。身体の調子は大丈夫なの?」


「はい。エレン様から聞きました。ロディ様が命懸けで私を救って下さったのですよね」


「良かった...マリスが元気になってくれて本当に良かった」


 俺はマリスが助かった喜びから突発的にマリスを抱き締める。


「ロディ様...ロディ様が私を救うために命を懸けて頂いたことは本当に感謝しています。ですが、今後はご自分の命を懸けてまで私を救うことはお止め下さい。ロディ様の命は私などと天秤に掛けて良いものではないのです」


 仮にマリスが助かって俺が死んでいたら、マリスは一生それを引きずったまま生きていくことになったかも知れない。


 だが、それでも俺は...。


「嫌だ! もしもこれから先にマリスが危険な目に合えば、俺は何度だって命を懸けて助けるよ!」


「ロディ様...」


 マリスも俺の身体を抱き締める。


 お互いの心臓の鼓動を感じる。


 マリスが生きていてくれて本当に良かった...。


「ロディ様...。私は今までもこの先も、どんなことがあってもロディ様のお側を離れません。一生ロディ様をお守りしますからね」


「宜しく頼むよ」


 グゥー...。


 良いところで腹の虫が鳴った。


「お腹空きましたよね? 直ぐに朝食をお作りしますね」


「それじゃあ俺も母さんのところに行ってくるよ」


 俺はマリスのベッドから降りてエレンのいる部屋へと向かう。


 俺と同時に部屋を出たマリスは朝食の準備をするため台所へ向かう。


 マリスの部屋を出た俺はエレンがいる部屋へ向かうと、まだ寝起きであろうエレンの姿があった。


「おはよう。母さん」


「ああ。おはよう」


 昨日のことで何かを言ってくるかと思ったが、エレンが特に俺に何かを言うことはなかった。


「バーナックでやることは終わったの?」


「ああ。丁度昨日帰ってきたところだよ。これはアンタに土産だ」


 そう言ってエレンは俺に一着の黒いローブを手渡たす。


 如何にも魔王が着ていそうなローブだ。


「このローブは?」


「バーナックで光竜を倒した時にドロップしたアイテムだよ。覇王のローブって名前で、そんな見た目だけど防具としての性能は最強クラスだから」


 覇王のローブ...凄そうな名前だ。と言うか今、光竜を倒したとか言ってなかったか? 確か光竜と言えば竜族の中でも最強クラスにあたる筈だ。


 人間に倒せるような存在ではない筈...。


 一瞬そう思ったが、よくよく考えれば相手はエレンだ。人間として考えてはいけない人物だった。


 アレスがバーナック王の指示でエレンを連れにきたのは光竜の討伐を依頼したかったからか。


 確かに光竜に対しては闇の勇者であるエレン程適任な人物は居ないだろう。


「そんな凄い防具を俺にくれるのは何故なの? 母さんが使えば良いんじゃないの?」


 エレンがまともな防具を身に付けているところを見たことがない。


 攻撃を受けたとしてもダメージを受けないから良いという考え方なのかも知れない。


 ちなみに物理攻撃に関しては防御力により軽減させることが出来るが、魔法によるダメージは魔力によって軽減させることが出来る。


 なので魔力が高い人間は魔法の威力も高くなる上、他者から受けた魔法によるダメージも軽減させることが出来る。


 物理攻撃と違って魔力に倍くらいの差があったとしても完全にノーダメージという訳にはいかないが、圧倒的な差がある場合にはノーダメージなこともある。もちろん魔法の種類によっても威力はピンキリだ。


 魔法や属性が付与された攻撃に関しては更に加護の力も影響するため、自分の加護と相手の加護を把握しておくと有利に戦闘を行うことが出来る。


「私には装備出来なかったんだよ。まぁ、全部の職業で試した訳じゃないけど、普段使うような職業は全滅だったよ」


 この口振りだとエレンの持つ職業は最低でも5つ以上はある気がする。


 下手をしたら10種類くらいあるかも知れないが、エレン本人に聞いてもいつも教えてはくれない。


「母さんが装備出来ないってことは俺も勇者の時は装備出来ないね。魔王の時はどうかな...」


 現在の職業は魔王の状態だ。


 俺は覇王のローブを身に付けてみた。


 良かった。魔王なら無事に装備が出来るようだ。


 ん? どうやらこのローブには特殊効果があるみたいだ。


〖物理攻撃90%軽減〗

物理攻撃を受けた時にダメージを90%軽減してくれる。


〖魔法攻撃90%軽減〗

魔法攻撃を受けた時にダメージを90%軽減してくれる。


〖状態異常無効化〗

状態異常に一切掛からなくなる。


 この防具チート過ぎるだろ...。下手をしたら世界最強の防具でもおかしくないレベルだ。


 ちなみにスキルによるダメージもスキルによって物理攻撃と魔法攻撃に分けられるので、どんな攻撃を受けても10%で済むということだ。


 とは言っても今の俺では、マリスクラスの攻撃を受ければ例え10%のダメージだとしても即死してしまうだろう。


「ありがとう母さん! このローブ凄いよ!」


「そりゃあそうだよ。1000万コルで買い取るって言われたくらいだからね」


 1000万コル!? 日本円にしたら10億...そんな防具が存在するのか。


「そんな大金なのに売らなかったんだね」


 俺なら10億と言われたら0.1秒で売ってしまいそうだ...。


「バーナック王からたんまりふんだくったからね。ちなみにわかっていると思うけど、命が惜しかったら売ろうなんて考えるんじゃないよ?」


 命が惜しかったらというのは魔物(モンスター)に殺されるということか、エレンに殺されるということかわからないが、そこは敢えて確認することもないだろう。流石にエレンがくれた物を売る訳にはいかない。


「朝食の準備が出来ましたよー。あ! ロディ様。そのローブ似合ってますね」


 朝食の準備が終わったようでマリスが俺達を呼びにきた。


 そのままテーブルに着き食事を済ませた俺は話を切り出した。


「これからカナンへ行こう...。結局俺は連れていかれた村人を1人も救うことは出来なかった...。それだけじゃない。ティナ達の遺体を村へ連れて行くことすら出来なかった...」


 村人達の遺体は全て闇に飲み込まれてしまった。

 

 必ず助けると約束したのに、村長に何と言って詫びれば良いのかわからない。


「ロディ。闇の力に支配されるんじゃないよ。アンタが闇を支配する立場になるんだ」


 結局エレンに昨日の状況を詳しく話す機会はなかったが、状況だけで察したようだった。


 あの力(ダークテリトリー)は危険過ぎる...。2度とあんなことが起こらないようにしなければならない。


 覇王のローブを羽織り、邪神の仮面も身に付け準備は整った。


「それでは頼むぞ。マリス」


「はい」


 マリスがカナンへと繋がる転移門(ゲート)を発動させた。


「それでは行ってくるぞ」


「ああ。行ってきな」


 俺の口調に関してエレンからの突っ込みはないようだ。


 エレンをその場に残し俺達はカナンへと続くゲートに入って行った。


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