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第57話 カナンの警備兵

「しかしこの村に飛空石があることはアルロンも知っていた筈だな? それなのに村に警備兵などをおかなかったのか? 飛空石ともなればアルバス以外から狙われることもあるだろう」


 当然魔族達が全員仲良しこよしという訳ではない。


 人間の中でも争いが起こったり、盗賊など人に害をなすことを好んでする者がいるように、魔族の中でも大金目当てに飛空石を手に入れようと思う者がいる筈だ。


「もちろんアルロンもそのことは知っていて、カナンには常時100人前後の警備兵がいた筈なのですが...」


 カナンに攻撃を仕掛けたのはおそらく少数の兵とガラムが雇った冒険者達のみだった筈だ。


 騎兵達は村の魔族を何人か連れ去って撤退済みだったし、他の兵士はマリスが蹴散らした奴等以外に見なかった。


 確かにAランク以上の冒険者達ともなると一般兵では荷が思いが、それでも100人前後の人数となれば一方的に蹂躙されることもない筈だ。


「警備兵が全員やられたと言うのか?」


「いえ...カナンに警備兵の姿は1人も見当たりませんでした」


「一体どういうことだ?」


「警備兵が全員村を空けなければいけない理由があったとすれば...」


 警備兵が村を空けなければいけない理由? アルバスが攻めて来たことに気付き、村の外で迎え撃つつもりだったとかか。


 村に入れるよりは地形を利用しながら防衛した方が有利に戦えるのは間違えない。


 だとしたらカナンがアルバスの攻撃を受けた=警備兵達は全滅したことになる。


「アルバスを村の外で迎え撃ったということか?」


「もしくはそれ以外の脅威が村に迫ってきたのかも知れません」


 それ以外の脅威...だとすれば1つしかない。


「うわぁぁぁ!」

 

 村の入り口に着くと外から魔族の男が走ってきた。


 ある程度の装備をしていることから多分、この男がカナンの警備兵の1人なんだろう。


 何かに怯えているのか顔面蒼白になっている。


「どうしたのですか?」


「マ、マリス様...?」


「落ち着いて話して下さい。何があったのですか?」


「じ...実は...」


 マリスがいたことで少し安心したのか男は話出した。


 男の話はこうだ。


 アルバス兵が村に接近しているのに気付き、警備兵達が防衛のため山のふもとで待ち構えていると、突如魔物(モンスター)の群れが襲ってきたと言うのだ。


 警備兵が魔物(モンスター)達と戦っている最中にアルバス兵達が現れたが、魔物(モンスター)達はアルバス兵には一切目もくれずに警備兵だけを狙っていたらしい。


 魔物(モンスター)達との戦闘でアルバス兵達と戦う余裕までなく、アルバス兵が村へ向かうのを止められなかった。


 今、現在他の警備兵達は魔物(モンスター)と戦闘中だが、圧倒的な強さの前に自分だけ逃げ帰ってきたと言うのが、この男の話だった。


「仲間が戦っているというのに自分だけ逃げてきたと言うのか?」


「も、申し訳ありません...。圧倒的な魔物(モンスター)の強さにかなりの仲間が犠牲となり、われを失いました...」


 別にこの男を責める気はない。勝てない相手と戦っていれば逃げ出したくなる気持ちは俺にもわかる。


「それにしてもおかしな話だな...」


「そうですね...。アルバス兵が襲われないこと...。タイミングの良すぎる魔物(モンスター)の群れの出現...」


 普通に考えると魔物(モンスター)の出現にアルバスが関わっていると考えるべきだ。


 それだったら過少戦力でカナンに攻めてきたのにも納得が行く。警備兵達の相手を魔物(モンスター)達にさせれば良いのだから。


魔物(モンスター)を意のままに操ることが出来る人間などいるのか?」


「召喚魔法などを使えば魔物(モンスター)を操ることが出来ますが、群れを操れる程の召喚魔法となると、かなり限られてきますね」


「直ぐに向かえば救える命もある筈だ。マリス...お前の力を借りるぞ」


「はい。お任せ下さい」


 本来ならば少しでも早く拐われた村の皆を救いに行くべきだが、城に連れ去られるのであれば途中で何かされるということはないだろう。


 騎兵の足は速いがマリスの転移門(ゲート)を使えば追い付けるかも知れない。


 一方の命を選ぶのではなく全ての命を助ける。それが俺のやり方だ。


 マリスが山のふもとへ繋がる転移門(ゲート)を開く。村の入り口に男を残し俺達は転移門(ゲート)を潜った。


 転移門(ゲート)を抜けた先では警備兵と魔物(モンスター)達の戦闘が繰り広げられていた。


 立っている警備兵の数はおよそ30人前後。残りは殺られてしまったか、傷を負って戦闘不能になってしまっている。


 それに引き換え倒されている魔物(モンスター)は4-5匹しかいない。


 この場にいるのは全て大型の魔物(モンスター)で、ブラックベアが10匹。

 

 熊の姿をした魔物(モンスター)で体長は優に2mを越える。


 その攻撃力はかなり高く、今の俺では一撃貰っただけで大ダメージを受けてしまう。


 それからトロルが10匹。


 トロルの力はブラックベアすら上回る。


 ただし頭の出来は残念なモンスターなので、知恵を使って戦えば今の俺でも何とかなる筈だ。


 流石に10匹を相手にするのは無理ゲーだが...。


 最後にタイガーファングが5匹。


 コイツが一番ヤバイ相手だ。


 鋭い爪や牙で人間の皮膚など簡単に切り裂く。


 しかも動きが速く、魔法など簡単に避けられてしまうだろう。


 正直こんな魔物(モンスター)を相手に戦いから逃げ出さない彼等を誉めてやりたい。


「くっ...やっぱり俺達じゃ無理だ...」


「諦めるな! 俺達が何とかしなきゃ、カナンが襲われるかも知れないんだぞ!」


 大した装備をしていない警備兵達の攻撃では、中々有効的なダメージを与えることが出来ない。


範囲回復(オールヒール)


 マリスが傷付いた警備兵達に範囲回復魔法を使用すると、倒れていた警備兵達が起き上がり出した。


 起き上がらない者も半数近くいるが、残念ながら既に死んでいるということだ。


「マリス様!?」


「マリス様が来てくれたぞ!」


 絶望的だった警備兵達から歓喜の声が上がる。


「マリス様! アルバスの奴等が村に!」


「ええ、知っています。もう村にアルバスの人間は居ない筈です。この魔物(モンスター)達は私に任せて貴方達は村へ戻りなさい」


「マリス様! ありがとうございます!」


 生き残った警備兵達がカナンの方へと走って行く。


 私も残って戦いますという声がなかったのは、皆マリスの実力を知っていて、自分達がこの場に残っても足手まといになると理解しているのだろう。


「ロディ様。少しお下がり下さい。少々数が多いので範囲魔法を使って数を減らします」


 幸いなことにこの辺りには何もない。警備兵達もかなり離れたし、大きな魔法を発動させたとしても被害が出ることはないだろう。


超熱爆発(エクスプロージョン)


 マリスが魔法を発動させると俺の目の前で大きな爆発が発生した。


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