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第52話 石で出来た人形

 右奥の道を進むと細い通路のような道になっていた。


 横に2人並ぶのも無理な狭さで俺達は一直線になって進む。


 この通路内で戦闘になったら近接戦闘が出来るのは先頭にいるヘクトルだけだろう。


 俺とミラに関しては後方からの魔法支援くらいなら出来そうなスペースはあるので、敢えてこの並びで道を進んでいた。


 モンスターを警戒しつつ進んでいると、細い通路を抜けた先で大きな空間へと出る。


 先程モンスター達と戦闘した場所よりも更に広い空間だ。


「おお! メッチャ石が埋まっているぞ!」


 辺りを見ると地面からいくつの石の塊が飛び出している。


 これがベルン鉱石で間違えないだろう。


 埋っている物を全て掘り出せば、かなりの量になる筈だ。


 ヘクトルが一番近くの塊に走って行くと突如地面が揺れだした。


「何だ! 地震か!?」


 かなりの強い揺れだ。もしも鉱山が崩れるようなことになったら、全員生き埋めになってしまう。


「ヘクトル様。足元にご注意して下さい!」


 マリスの指示でヘクトルが少し下がる。


 するとヘクトルがいた場所の地面が裂け、石で作られた人形のような魔物(モンスター)が姿を現した。


 見た目からすると、おそらくストーンゴーレムだ。


 その身体が石で作られたゴーレムで、物理攻撃に対してはかなりの耐性を持っている。


 地面の揺れはこのゴーレムの仕業だったのだろう。


「こんにゃろー!」


 ヘクトルが両手で斧を降り下ろしゴーレムに渾身の一撃を叩きこむ。


 ゴーレムの身体がパラパラと少しだけ崩れる。


「痛てて...やっぱり硬いなー」


 斧を降り下ろしたヘクトルの手にもかなりの衝撃があったようだ。


 思い切り石に斧をぶつければ手にもそれなりのダメージがあるのは想像出来る。


闇の弾丸(ダークバレット)!』


 ゴーレムなら魔法には弱いだろうと思い俺は闇の弾丸(ダークバレット)を放った。


 闇の弾丸(ダークバレット)ストーンゴーレムの身体に当たりその身体を崩すが、先程のヘクトルの攻撃とあまり大差はない。


火球(ファイヤーボール)


 ミラの放った火球(ファイヤーボール)がゴーレムを捉えるが、石で出来た身体が燃えることはなかった。


 攻撃を受けるばかりのゴーレムが反撃に転じる。


 ヘクトルに接近するとその大きな右腕を振り上げ、ヘクトルの頭上に降り下ろす。


「うおっ!」


 ヘクトルが頭上に斧を振り上げゴーレムの腕を受け止める。


「くっ、凄い力だ...」


 ジリジリとヘクトルの斧が下がっていく。


 俺はヘクトルを援護するためにゴーレムに向かい走りだし、そのまま飛び蹴りを入れる。


 俺の蹴りがモロに入ったが、ゴーレムは微動だにしない。


 ただ、今の攻撃で標的がヘクトルから俺に変わったようで、今度は俺に向けて両腕を降り下ろした。


「うわっ!」


 俺は横に転がりながらゴーレムの攻撃を避けると、ゴーレムの両腕が地面を砕いた。


 物凄い破壊力だ...。あんな一撃をモロに食らえば一発で勝負が決まってしまう。


「初めてのボスキャラ戦ってところかな...」


 あの耐久度を考えると長期戦は避けられなさそうだ。


 大きな一撃を絶対に食らわないように気を付けながら、少しづつ削っていくしかない。


 特に攻撃の矛先がミラにだけは絶対に向かないようにしなくては...。


 俺とヘクトルはある程度近い距離を保ちながらゴーレムとの戦闘を続ける。


 ミラには、ある程度の距離を取ってもらい水球(ウォーターボール)での支援をして貰う。


 もちろんいざという時のためにマリスにはミラに付いて貰っている。


「はぁっ!」


 ヘクトルが何度目かの攻撃をゴーレムにぶつける。


 強打(スマッシュ)などのスキルが使えればかなり有効だった筈だが、近接系の職業以外では覚えることが出来ない。


「ロディ様。今のお二人の攻撃力ではあまり有効的なダメージを与えることは出来ないようです。宜しければ私がお二人に強化魔法をお掛けしましょうか?」


 強化魔法。身体能力を強化できる魔法で、筋力を強化して攻撃力を上げたり、敏捷性を上げて素早く動けるようにしたりと、魔法によって様々な効果を持つ。


「マリス。頼むよ」


「かしこまりました」

筋力強化大(ハイストレンジ)


 マリスに強化魔法を掛けて貰うと、身体にみなぎる力を感じることが出来た。これならいけるかも知れない。


「うぉぉぉ!」


 俺は右の拳を握りしめゴーレムを殴り付けた。


 俺の拳が当たった場所からは石が飛び散り、拳の形にそってへこみが出来る。


「これならいける!」


 強化魔法のお陰なのか、ゴーレムを殴った俺の右手にそれほど痛みを感じることはなかった。


「よーし! 俺もやるぞー!」


 ヘクトルが両手で斧を握り締め、思い切りゴーレムに降り下ろした。


 ヘクトルの斧がゴーレムの左肩に当たるとかなり深い位置にまで入っていった。


「もう一発ー!」


 左肩から斧を引き抜き、再び左肩を目掛けて斧を降り下ろす。


 ヘクトルの斧がゴーレムの左肩を切断すると、ドスンという大きな音を立て、ゴーレムの左腕が地面へと落下する。


「このまま一気に倒そう!」


 俺は飛び上がりゴーレムの顔を目掛けて拳を放った。


 俺の拳が当たるとゴーレムの頭が後ろにズレる。普通の人間ならこれで確実に死ぬが、相手はゴーレムだ。残った右腕を振り上げ俺に叩き付けようとする。


「させるかー!」


 ヘクトルがゴーレムの右腕に斧を叩き付けるとゴーレムの右腕が吹き飛んだ。


「これで終わりだ!」


 ヘクトルが飛び上がりゴーレムの頭上に斧を叩き落とす。


 斧は頭から進入し、ゴーレムの身体を完全に切断した。


 ゴーレムの身体が半分に分かれ、地面へと落ちる。


 いくらマリスの強化魔法の補正があるとはいえ、あの斧強力過ぎないか? エレンの様な達人になれば鉄の剣だろうと簡単にゴーレムを切断することが出来ると思うが、ヘクトルはただ力任せに斧を振っているだけだ。並の斧なら簡単にへし折れてしまうだろう。


「へへへ! やっぱりこの斧良いなぁー!」


 どうせこの後は武器屋に行くことになるし、その時この斧のことを聞いても良いかも知れないな。


「もうモンスターも居なくなったことだし、ベルン鉱石の採取を始めよう」


 俺達は地面に埋まったベルン鉱石の掘り出し作業に入った。


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