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第43話 クラウドカンパニー

「それでこの金額で問題はないかな?」


「はい。お願いします」


 ジャスカが用意してあったお金をファンナへと手渡す。


「ありがとうございます」


「こっちこそありがとう。これだけ上質な魔水晶は本当に貴重なんだ」


 ファンナが俺の前へ立ち1万コルだけ抜いたお金を渡そうとする。


「ありがとうロディ。私はこれで充分だから残りはロディに返すね」


 25000コル。俺にとっては相当な大金だがこれを受け取るのは、何かカッコ悪い気がする。


「1度ファンナに上げるって言ったんだ。俺は受け取る気はないよ。それだけあれば宿に客が戻るまで充分持つと思うから」


「ロディ...」


「君はこれだけの魔水晶をファンナに上げたのかい? ひょっとしてファンナに気でもあるのかな?」


 ジャスカが俺を冷やかす。


 残念ながら中身は37歳の俺としてはファンナも子供にしか見えない。


 ミラと同じく恋愛対象外なのだ。


「いや、そんなつもりはないですよ」


 俺の発言を聞きファンナが少しガッカリしている様に見えるのは気のせいだろうか。


「それじゃあクラウドカンパニーにお金を渡しに行きましょう」


 俺達はジャスカの店を後にすると、借金の返済をするためファンナの案内で、クラウドカンパニーへと向かった。


 街中を歩いていると辺りから人の気配がなくなっていく。


 クラウドカンパニーは随分と人通りのない所にあるようだ。


 人気のない通りを歩いていると、突然周りを柄の悪い男達に囲まれた。


「何か金を持っている匂いがするなぁー!」


「本当だぜ。子供がそんな大金を持っているとか危険だから、俺達が預かっておいてやるよ」


 俺達を囲んでいる人数は4人。


 全員が武器を構えている。


 たまたまこんな状況になったとは考えづらい。


 普通に考えれば、ファンナがお金を持っていることを知っている人間の差し金の筈だ。


「お前達、悪い奴等だな? 悪い奴は俺がぶっ飛ばしてやる!」


 ヘクトルが男の1人にいきなり殴りかかる。


 男は剣を持っていたが剣を使うよりも早く、ヘクトルの拳が男の頬を捉える。


「うごっ!」


 頬を殴られた男は地面に倒れる。


「こいつ! いきなり何しやがるんだ!」


「構わねぇ! 殺っちまおうぜ!」


 男達が一斉に襲い掛かってくる。


 俺はファンナに近付く男を蹴り飛ばした。


「ぐはっ!」


 直ぐ様ミラに近付く男の腹部を殴り付ける。


「あがっ!」


 2人はその場に崩れ落ち、一瞬にしてこの場に立っている男の数は1人だけとなった。


 最後の1人がマリスに近付くと、持っていた剣をマリスの喉元に突き付ける。


「へっ! 多少はやるようだが、人質さえ取っちまえば何も出来ないだろう。この女を殺されたくなかったら武器を捨てな!」


 この男は馬鹿なのか? 俺もヘクトルも武器なんて持っていない。


 素手で殴り倒したのを見ていた筈なのだが。


「人質に取る人間を完全に間違えたね。まぁ、ミラとファンナなら人質に取らせなかったけどね」


 俺は男にジリジリと近付いて行く。


「マリス! その男は俺がやるからマリスは手を出さないでね」


 マリスは自衛の為なら力を使っても良いことになっているが、スレイブくらいの実力を持つ者ならともかく、こんなザコ相手にマリスが攻撃をしたら死んでしまう可能性が高い。この男は俺が倒さなければ。


「テメェ! 近付くんじゃねーよ! この女がどうなっても良いのか!?」


 男が突き付けた剣をマリスの首に突き立てようとしたところ、マリスが剣の刃の部分を握る。


「わかりました。ロディ様にお任せします」


 マリスが手に力を入れると男の剣が砕ける。


「バ、バカな!?」


 俺は走り込んで男に飛び蹴りを入れる。


「ぐはっ!」


 男は大きく後方へと飛ばされる。


「くっ、ううっ...」


 男が力を振り絞り立ち上がる。


 気が付くと倒れていた他の3人も立ち上がっていた。


「こんなに強い奴等とか...聞いてないぜ...」


「て、撤退だ!」


 男達が逃げて行く。追い掛ければ簡単に追い付けそうだが、別にその必要もないだろう。


 誰の差し金なのかは想像も付いていることだしな。


「今の人達は一体...」


「ファンナが今日お金を持っていることを知っている人間なんて、1人しか居ないよね」


「まさか...」


「クラウドカンパニーに行けば全部わかると思うよ」


 俺達はクラウドカンパニーに向けて再び歩き始めた。


 大きな建物の前に着くとファンナが足を止める。


「ここがクラウドカンパニーよ」


 クラウドカンパニーと言っても建物はこの世界に多くある木造の建物だ。


 入口には柄の悪そうな男が1人立っている。


「何だオメェらは? ここがクラウドカンパニーと知ってるのか?」


「月兎亭の者です。借りていたお金を返しに来たのですが」


 宿屋の名前が月兎亭だということを初めて知った。


 看板は出ていたと思うが、宿屋の名前なんて気にすることがないからだ。


「...中に入れ。奥の部屋にクラウドさんが居るからそこに行くんだ」


 建物の中に入ったところは大きな部屋になっていた。


 部屋には4つの扉が付いており、右に2つ、左に1つ、正面に1つだ。


 部屋の中には柄の悪そうな人間が2人。


 奥の部屋ということは、おそらく正面の扉を入った部屋だろう。


 建物の中に入ってからは俺を先頭とし、正面の扉を軽くノックして一声掛けてから扉を開いた。


「失礼します」


 部屋の中には2人の男の姿があった。


 足を机に乗せた体制で椅子に座っている男と、その隣には宿に取立てに来ていた男だ。


「月兎亭のガキか? 一体何の用だ?」


 椅子に座っていた男が話す。


 その声はとても低く如何にも悪の親玉といった雰囲気をしている。


「借金の返済に来ました」


 ファンナは机の上に1万コルを乗せる。


 これで借金返済の筈だがそう上手くは行かない予感がする。


「おう。確かに受け取ったぞ。それじゃあもう帰っても良いぞ」


「ファンナ。借用書みたいなのは書いてないの?」


「いえ、借りる時にお母さんが書いた筈よ」


 借用書を渡したままでは、ただ1万コルを取られたのと変わらない。


「借金は返したんです。ファンナの母親が書いた借用書を返して貰えますか?」


「あ? 何だテメェは? 借用書は後で処分しておくから心配しなくて良いぞ」


「処分するなら俺達の目の前で処分して下さい」


「うるせぇガキだな! 処分しとくって言ってるじゃねぇか! 余計なことばかり言ってると、痛い目に合うことになるぞ?」


 男は椅子から立ち上がり腰の鞘から剣を抜いた。


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