第34話 Bランクの冒険者
「俺の名前はロディと言います。残りの3人がパーティーメンバーのヘクトル、ミラ、マリスで、全員Fランクの冒険者になります」
俺が声を掛けた3人だが、1人は年齢20代前半くらいで鎧を身に付け、腰には剣を携えた男だ。
「随分と若い冒険者が多いな。新人かい? 俺の名前はクレーべ。Dランクの冒険者だ」
俺はクレーべの能力値を確認してみた。
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クレーべ
戦士 職業LV3
LV15
HP165(10%)
SP60
MP0
力91(7%)
技75
速さ70
魔力0
防御72(3%)
[装備]
鉄の剣
鉄の鎧
攻撃力121 守備力92
[加護]
炎E 水E
風E 地D
聖E 魔E
光E 闇E
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能力値的にはそれほど高い訳ではないな。
今の俺がサシで戦っても良い勝負が出来そうな気がする。
「宜しくお願いします」
「ああ、宜しくな。どうせバストールまではザコ魔物しか現れないから気楽に行こうぜ」
クレーべは俺達の緊張をほぐそうとしてくれている様だが、別に全く緊張はしていないのだが。
受け答えを見る限り、人柄は悪くはなさそうだ。
「俺の名前はスレイブ。Bランクの冒険者だ。頼むから足を引っ張るのだけは止めてくれよ」
スレイブと名乗った男は年齢は30代前半くらいだろうか。
身軽そうな格好をしていて、鎧も軽量の鎧を身に付けている。
クレーべと同じく腰には剣を携えているが、格好的には戦士といった感じはしない。
俺はスレイブの能力値を確認してみた。
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スレイブ
剣士 職業LV5
LV32
HP350
SP216(20%)
MP0
力150
技196(15%)
速さ160
魔力0
防御120
[装備]
ウィングソード
ハードレザーメイル
攻撃力210 守備力160
[加護]
炎E 水E
風C 地E
聖E 魔E
光E 闇E
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なるほど。Bランク冒険者というだけあって、それなりに強い。むしろ、これだけの強さを持っていて何故、Eランクの護衛依頼何かを受けているのだろうか。
「Bランクって凄いですね。スレイブさんは何故、この依頼を受けたんですか? スレイブさんならもっと上の依頼もこなせますよね?」
「たまたまバストールまで行く予定があったからな。ついでだからこの依頼を受けたという訳だ。お前達は運が良いぞ。この俺が居れば、たかがEランクの依頼なんて余裕で達成出来るからな」
クレーべとは違いスレイブは自信過剰タイプな人間のようだ。
正直、あまり好きにはなれない気がする。
「宜しくお願いします...」
「お!? お前の仲間にメチャメチャ綺麗な女が居るじゃないか?」
スレイブはマリスに気付くと、舐め回すようにイヤらしい目付きでマリスを見る。
「マリスと言います。私は戦闘をする訳ではありませんが、宜しくお願いしますね。スレイブ様」
マリスはスレイブに向けてペコリと頭を下げる。
スレイブがマリスに向ける視線は気に食わないが、俺が口を出せることではない。
「宜しくな、マリス。戦いは俺に任せて、マリスは俺の活躍を眺めていれば良いぞ」
スレイブがマリスの肩へと手を回す。
マリスの表情に変化はないが、何も思っていないのだろうか。
「Bランクの冒険者さんが一緒なんて心強いです。私の名前はファンナ。Fランクの冒険者です。皆さん宜しくお願いしますね」
ファンナと名乗った3人目の冒険者は、俺達と同年代くらいの少女だ。
ショートカットに可愛らしいヘアバンドを着けていて、背中には弓と矢が数本入った筒を背負っている。
Fランクということは俺達とそれ程の差はない筈だ。
俺はファンナの能力値を確認した。
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ファンナ
狩人 職業LV1
LV5
HP60
SP31(3%)
MP0
力30
技46(2%)
速さ41(2%)
魔力0
防御25
[装備]
木の弓矢
攻撃力40
守備力25
[加護]
炎E 水D
風E 地E
聖E 魔E
光E 闇E
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ファンナのLVは5だが、能力値に関してはヘクトルやミラの方が強いな。
ファンナが特別弱いという訳ではないのなら、ヘクトルやミラも平均よりは強いのかも知れない。
「宜しくね。ファンナ」
俺のことを伝えた後はヘクトル達も自分の紹介を始めた。
マリスが戦わないと言ったことに対して、3人から反論が出ることはなかった。
「それではお互いの紹介も終わった様ですし、馬車をバストールに向けて発車させます。皆さんには馬車に近付く魔物の討伐をお願い致します」
予想通り馬車の中は荷物で一杯だった。
馬車の操作をジムスが、馬車の右サイドを俺達〖闇の光〗の4人。左サイドを残りの3人が固める。
その陣形のまま馬車はクレイアを出発した。
1時間程進んだところで魔物の集団に出会し馬車が停止する。
スライムが5匹とキラークロウが3羽だ。
キラークロウとはカラスの姿をした魔物で、その攻撃方法は鋭いクチバシだ。
あのクチバシで急所を貫かれたら、場合によっては一撃で死んでしまうこともあり得る。
動きも速く、スライムと比べたら遥かに強敵だ。
スライムと比べたらだが...。
魔物を確認した俺達は直ぐに戦闘体制を取ろうとするが、スレイブが俺達を止める。
「ここは任せろ。こんな奴ら俺1人で十分だ」
スレイブは腰の剣を抜き魔物達に向かって行く。
キラークロウを一振りで二羽同時に切り落とすと、自分に襲い掛かって来たキラークロウの頭に剣を突き刺す。
一瞬でキラークロウを全滅させた後は、スライムの方に向かって行き、二振りでスライムも全滅させる。
これがBランクの実力か。
魔物を全滅させたスレイブはこちらへ戻って来るなり、マリスの前に立った。
「マリス。俺の戦いはどうだったかな?」
「スレイブ様。素晴らしかったですよ」
「そうだろ。そうだろ」
スレイブは満足げにしている。
どうやらマリスに良いところを見せたかったようだ。
いつかスレイブがマリスの爆弾に触れるんじゃないかと不安はあるが、自分のことに関しては怒ることがないマリスだ。
俺に危害が加えられるようなことがなければ大丈夫だろう。
「スッゲーな! ロディ今の見てたか?」
ヘクトルはスレイブの戦い振りを見て興奮している。
一度でもエレンの戦い振りを見ればこれくらい何とも思わなくなるだろう。
「見てたよ。剣速はかなり速かったね」
「だよなー。あの剣重くないのかな?」
スレイブが使用している剣はウィングソードと呼ばれる剣で、速さを武器にしている人間が好んで使う剣だ。
羽のように軽い剣ということからその名が付いたと言われているが、実際に羽のように軽い訳ではないと思う。
ちなみにウィングソードの知識に関してはエレンから得た知識だ。
やたらと色々な剣に詳しいとは思っていたが、まさか勇者だとは微塵も思っていなかった。
「あの剣はウィングソードって言って鉄何かに比べたら、かなり軽い素材で作られている筈だよ」
「へー、そうなのか? 俺も強い武器とか使ってみたいな」
学者と商人のヘクトルに使いこなせる武器となると、結構限られてきそうだ。
商人ならまだしも、学者の場合は剣、槍、斧など代表的な武器は殆ど向いていなかった筈。
まぁ、冒険者を続けていればその内に、ヘクトルにピッタリの武器が手に入ることもあるだろう。
「魔物達も居なくなりましたし、出発しましょう」
ジムスの号令で、再び馬車はバストールに向けて進み始めた。




