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第28話 邪神の仮面

「う...ううう...」


 俺が目を覚ますと目の前には見慣れた天井が見える。


 どうやら俺は自分のベッドの上に寝ているようだ。


「ロディ様。目を覚まされましたか?」


 目の前にマリスの顔がある。どうやら酒を飲んだ途端に倒れてしまった俺をマリスがベッドに運んでくれたようだ。


 前にも同じ状況があったな...。


「はは...またマリスに面倒を掛けちゃったみたいだね...」


「お酒を飲んだことがないロディ様に、いきなりあのお酒はムチャが過ぎます。あのお酒を2杯以上飲んで平気でいられる人なんて、エレン様以外に見たことがないですからね」


 一応、酒を飲んだのは初めてではなかったのだが、この身体になってからは初めてということになるのか。


 エレンはそんな酒を水でも飲むような勢いで飲んでいたのだが...。


 エレンはバッカスの生まれ変わりなんじゃないのか。


「お身体の方は大丈夫ですか?」


 飲んだ瞬間はヤバかったが、引きずることはなく今は何ともない。良い酒とはそういう物なのだろうか。


「大丈夫だよ。あれからどれくらい経ったかな?」


「2時間くらいですかね。既にエレン様はお休みになられています」


 ちなみにこの世界にも時計という物は存在する。


 もちろんデジタルなどの技術はないので、全てアナログな時計になるが、ある程度の時間を知るだけならそれで十分だ。


 それにしてもエレンの奴...酒を飲んで息子が倒れたというのに寝るってどういう神経してるんだ。


 急性アルコール中毒とかで人が死ぬことだってあるんだぞ。


「俺はこのまま朝まで寝ることにするよ。明日はディルクシアだ。マリスも十分に睡眠を取ってね」


「はい」


 はいと答えた割りにマリスが俺の部屋から出て行く気配はない。


 マリスのことを気にしていた俺だったが、気付けばいつの間にか眠りに落ちていた。





「うーん...」


「ロディ様。おはようございます」


 俺が目を覚ますとマリスが立っていた。


 あの後ずっと俺の部屋に居たのか、朝になって来たのかはわからない。


「マリス。おはよう」


 俺はベッドから半分身体を起こした。


 身体に二日酔いなどの症状はない。


「直ぐに朝食に致しますので、テーブルに付きお待ち下さい」


 俺が朝食を取るべく、奥の部屋に向かうと既にエレンがテーブルに着いていた。


 テーブルの上に置かれた酒のボトルは空になっている。


 あれだけの酒を全部飲んだというのにエレンの顔に普段との変化はない。


「おはよう。母さん」


「おはよう。ロディ。あれだけの量で倒れるとか、アンタは本当に私の息子なのかい?」


 俺はエレンに本当に人間なのかと突っ込んでやりたい。


「そう言えばアンタ、今日はディルクシアへ行くんだろ? そのままの格好で行く気なのかい?」


 そのままの格好? 俺にスーツでも着てみっともなくない格好をしろと言っているのだろうか。


「一応、そのつもりだったけど問題あるのかな?」


「はぁー...アンタ勇者と魔王を両方やるつもりなんだろ? 流石に勇者が魔王をやってるって知られれば、色々と面倒臭いことが起きるかも知れないじゃないか」


 確かに...。1人の人間が勇者と魔王をやっているとバレるのは不味い気がする。


 勇者として他の勇者と共闘をすることもあれば、魔王として共闘をした勇者と戦う場合もあるかも知れないからだ。


「魔王をやっている時は、何か俺だってバレないような変装をした方が良いね...」


「これをアンタにやるよ」


 エレンが不気味な仮面をテーブルの上に置く。


「これは?」


「前に邪神教という組織を潰した時に手に入れた邪神の仮面だよ。魔王をしている時にはこの仮面を付けるようにすればいい」


 見た目的にもヤバそうで、名前が邪神の仮面とか、装備したら呪われるんじゃないのか。


 装備に強力な呪いが掛かっていることは珍しいことではない。呪いによっては解呪魔法によって簡単に解呪出来る物もあれば、装備しただけで装備者の命を奪うような物もある。


 正直、俺からすれば闇の剣(レーヴァテイン)も呪われているようなものだ。


「これって呪われているかどうかの判別はしたの?」


「してないけど、装備してみればわかることじゃないか」


 そんな危ないこと出来る訳がない。もしも呪われてて一生仮面が外せなくなったりしたら、キスすら出来なくなるじゃないか。ファーストキスもまだな俺としては辛過ぎるぞ...。


 俺が仮面を着けるのを躊躇していると、エレンが仮面を手に取り無理矢理俺の顔に着けた。


「うわっ!」


 能力値(ステータス)表示に呪いの表示はない。どうやら呪われてはいない様だが、何故か仮面を着けてから不思議な高揚感がある。


 気持ちを高めて戦闘能力を上げる的な効果があるのかも知れない。


「ほら。大丈夫だっただろ?」


「母さん...呪われてたら一体どうするつもりだったの?」


「その時は解呪魔法で何とかするんじゃない? マリスが。流石の私も解呪魔法までは使えないからね」


「...」


「あれ? ロディ様。その仮面はどうしたんですか?」


 マリスが朝食をテーブルの上に運んで来た。仮面を着けた俺の姿を見て不思議に思っているようだ。


 俺はマリスに事の経緯を説明した。


「なるほど...ロディ様の素敵なお顔が見えなくなるのは残念ですが、そういう理由があれば仕方ありませんね...」


「俺が魔王でいる時に人間と戦闘する様な状況があれば、マリスにも顔を隠してもらいたいんだけど、大丈夫かな?」


「そう言うことでしたら...」

身体変化(メタモルフォーゼ)


 マリスの姿が変化をしていく。


 両方の額からは角が生え、髪の毛の色はピンク色から青色へと変わる。


 顔自体は元のマリスの顔と変わっていないが、これなら誰が見ても同一人物だとは思えないだろう。


 それにしても便利な魔法があるものだ。他にも色々な状況で役に立ちそうな気がする。


「何か問題が起こりそうな時はこの姿になることにしますね」


 俺は仮面を外しマリスの用意してくれた朝食を食べ始めた。


 20分程で全ての食事を済ませるとマリスは食事の後片付けを始めた。


 俺は仮面を着けディルクシアへと向かう準備をする。


 マリスの後片付けと準備が終わった様で、ルクザリア城への転移門(ゲート)を開く。


「母さん。じゃあ行って来るよ」


「ああ。アンタは弱いんだから、精々死なないように気を付けるんだよ」


 エレンの憎まれ口を聞きながら俺達は転移門(ゲート)を潜った。


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