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第27話 マリスへの贈り物

 俺達が向かった先は商店などが多く並ぶ通りだ。


 通りの入り口まではミラと一緒だったが、祖母へのプレゼントを買うミラと、マリスへのプレゼントを買う俺では入る店が異なる。


 俺はマリスを連れてお洒落なアクセサリーなどが並んでいる店へと入った。


 店に入ると店内には5人の女性客がいて、それぞれに商品を見ている。


 店内の奥には小さなカウンターが設置されていて、カウンターの中にはお洒落な格好をした女性が立っている。


 おそらく年齢は20代前半くらいだろう。顔は特別に可愛い訳じゃないが、お洒落な格好をしているお陰で可愛く見える気がする。


「いらっしゃいませ。ゆっくりと見ていって下さいね」


 女性がニコッと微笑む。女性の目に俺とマリスはどう写っているのだろうか。流石にカップルに見られるには俺の年齢が若すぎる気がする。


「マリス。何か気に入った物のはあるかな?」


 俺は店内の商品に軽く目を通してみるが、どれも結構値段の張る物ばかりだ。


 気に入った物はあるかと聞いたものの、予算が1万コルまでと決まっている中で選ぶのは大変かも知れない。


「ロディ様。ロディ様が選んで下さい」


 俺に女性へのプレゼントを贈った経験はない。

  

 センスもないし、マリスに喜んで貰える物を選べる自信はないのだが...。


 俺は1万コル以内で買える物の中からプレゼントを3択に絞った。


 1つ目はシンプルな形の銀の指輪。2つ目は少し大人っぽい見た目のイヤリング。3つ目がマリスには少し子供っぽい花柄のネックレスだ。


 俺は悩んだ結果、無難な指輪を選ぶことにした。


「マリス。この指輪とかどうかな?」


「素敵な指輪だと思います。流石ロディ様です」


 マリスが笑顔で応えてくれる。もしも自分に気に入らない物だったとしても、マリスならこう言うだろう。


 俺は指輪を手に取るとカウンターへと持って行く。


「この指輪を下さい」


 俺がカウンターの上に指輪を置くと女性が指輪に付いている値札を確認する。


「ありがとうございます。9000コルになります」


 俺が代金を支払うと女性は値札を剥がし、指輪を梱包しようとする。


「付けていきますので梱包は必要ないですよ」


 マリスがそう言うと女性は指輪をそのまま俺に手渡す。


「ロディ様。ロディ様が付けて下さい」


 マリスが俺に左手を差し出す。この場で指輪を付けろということなのだろう。


 他にも人がいる前で女性に指輪を付けるなんて恥ずかしいが、こうなってしまっては仕方がない。


 俺がマリスの中指に指輪を付けようとすると、マリスは指先を揺らしその指ではないとアピールをしてくる。


 マリスの言いたいことを理解した俺はマリスの薬指に指輪を付ける。


「ロディ様。ありがとうございます。ロディ様に頂いたこの指輪を肌身離さず身に付けて一生大切にしますね」


 マリスが嬉しそうな顔をする。マリスの嬉しそうな顔が見られて俺も嬉しくなる。


「素敵な彼女さんですね!」


 流石に男が女性の薬指に指輪を付けている姿を見れば、カップルだと誤解されるだろう。


「マリス。いつも俺の傍に居てくれてありがとうね」


「いえ。マリスはマリスの意思でロディ様のお傍にいるのです」


 マリスを俺の傍に付けてくれたクロードには、本当に感謝をしてもしきれない。


「マリスへのプレゼントも買えたし、皆と合流しようか?」


「はい」


 俺達は店を後にするとクレイアの南入り口へと向かった。


 南入り口に着くとミラの姿はあったが、ヘクトルの姿はまだなかった。


「ミラ。お祖母ちゃんへのプレゼントは買えたのかい?」


「うん。お祖母ちゃんが欲しがってた薬の本があったからそれを買ったよ」


 ミラが買った本をチラっと見せてくる。色々な薬のことに関して記された本のようだ。


 俺達が暫くその場で待っているとヘクトルが姿を現した。


 口許には食べた物のソースだと思われる跡がベットリとくっついている。


「それじゃあヘクトルも来たことだし、村に帰ろうか」


 エレンには帰宅しないかもと伝えてあったが、クレイアに宿泊しなければいけないような依頼も受けなかったし、クレイアに残る理由はないだろう。


 俺達はクレイアを出るとテベルへと向かった。


 またここから村まで1時間か。


 正直、転移門(ゲート)を使えば冒険者ギルドまでの往復2時間を短縮することが出来る。


 毎回それだけの時間を短縮出来るとなるとかなり大きいが、今更転移門(ゲート)を使ってくれと言うのも格好の悪い話だ。


 結局、徒歩でテベルまで戻ってきた俺達は村の途中まで一緒に進み、それぞれの家へと帰るために分かれる場所へと着き足を止めた。


「ごめんロディ。明日はお祖母ちゃんのお手伝いをしなくちゃいけないんだ」


「そうか。わかったよ。それじゃあ今度冒険者ギルドに行くのは明後日だね。俺も明日はディルクシアへ行くことにするよ」


「それじゃあ俺は家で勉強することにするか。何たって俺は学者と商人だからな」


 ヘクトルが勉強をすることで、せめて人並みの頭脳になってくれたら本当に助かる。


「それじゃあまた明後日」


 俺達は2人と分かれ家へと向かった。


 家に戻り、中に入るとエレンの姿はなかった。


 エレンも冒険者をやっていることだし、何か依頼を受けてそれが終わってないのかも知れない。


 それから1時間程が経過するとエレンが家へと戻ってきた。


 左手には酒のボトルが握られている。


「マリス。今日は良い酒が手に入ったんだ。この酒に合う料理を頼むよ」


「かしこまりました」


 エレンの帰宅を確認するとマリスが夕食の準備を始める。


「ロディ。今日は冒険者ギルドで依頼を受けたんだろう? どうだった?」


「スライム討伐の依頼を受けたんだけど、俺1人で150匹くらいのスライムを討伐したよ」


 ギルド職員の女性は新米パーティーでも頑張れば100匹くらい倒せると言っていた。


 1人で150匹ならかなり凄いと思うのだが、話の相手はエレンだ。


「情けないねー。私がお前くらいの年齢にはスライムなんて、1時間もあれば300匹は倒せたもんだよ」


 やはりエレンの物差しで測れば、俺なんてただの新米冒険者と変わりはない。


 夕食の準備が終わったようでマリスが俺達を呼びに来る。


 食事をする部屋へ入るとテーブルの上には既に食事が用意されていた。


 全員が椅子に座ったのを確認すると俺は料理を食べ始めた。


 エレンは料理よりも酒といった感じで、ボトルの酒をラッパ飲みで飲み始める。


 凄い勢いで流し込んでいるが、そんなに弱い酒なのだろうか。


「ん? この酒が気になるのかい? お前も天礼(レクシール)を受けて大人になったんだ。酒くらいは飲めるようにならないとね」


 エレンが俺にボトルを差し出す。この世界では飲酒に対しての年齢制限などはない。


 だが、一般的には天礼(レクシール)を受けて大人として認められてから飲むようになることが多い。


 転生前の世界ではそれ程酒に強い訳ではなかったが、流石に一口飲むくらいなら大丈夫だろう。


「ロディ様!」


 俺がボトルに口を付けるとマリスが慌てて止めようとする。


 ゴクン。一口飲んだ瞬間に身体の中が熱くなり頭がふらつく。目の前がフラフラして座っていられない。


 転生前にテキーラを飲まされたことがあるが、この酒はその時よりも遥かに強い気がする。


 俺の意識は遠くなり、椅子から床へとずり落ちてしまった。


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