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第25話 ザコモンスターの定番

 スフィーダ...忘れもしない。俺を拷問する様に指示を出した男だ。


 どうやらエレンの一撃で死ぬことはなかった様だ。


 悪運の強い男だ。


 何やら北の入り口にいる2人の兵士達と話をしているようだが、俺達に気付いている様子はない。


 アイツが居なくなるのを待ってから外に出ても良いが、王からの指示が伝わっていれば逃げ隠れをする必要もない筈だ。


 俺は堂々と入り口に近付いて行く。


「お、お前は!?」


「こんにちは。スフィーダさん。お元気そうですね」


 スフィーダは俺の姿を見て怯えている様に見えるが、それは俺に対してではなくエレンに対してだろう。


「や、やぁ...シオン君。君が元気そうでなりよりだよ」


「はい。家族に回復魔法を使える者がいましたので、今はピンピンしてますよ」


「そ、そうか...それは良かった....。クレイアの北に何か用があるのかい?」


「冒険者として、クレイアの北に生息するスライムの討伐依頼を受けましたので」


「そ、そうか...エレン殿の息子であるそなたなら、立派な冒険者になることが出来るだろう」


 確かこの前に会った時スフィーダはエレンのことを知らなかった筈だ。


 あの後で王から聞かされたのだろう。


「ロディ様? ロディ様のお知り合いの方ですか?」


「この人は俺達の天礼(レクシール)をしてくれた人だよ。この人が兵士に命令をしてロディを連れて行ったんだ」


「ヘクトル! それは言っちゃ...」


「そうですか...貴方がロディ様をあんな目に合わせた張本人という訳ですね...」


 マリスが俺の前に出る。マリスの目からは凍える様な冷たさを感じる。


「ちょっと! マリス! 何をするつもりなの!」


「何もしませんよ。ただ少し、灼熱地獄(インフェルノ)を使うだけです」


 炎属性の上級魔法である灼熱地獄(インフェルノ)。そんな魔法をこんなところで使われたらクレイアの一部が消滅しかねないぞ。


「駄目だってマリス! そんなの使ったらマリスと一緒に居られなくなっちゃうよ? 母さんと約束したじゃないか!」


「しかしロディ様...」


「スフィーダさん! 死にたくなかったらさっさとこの場所を離れて下さい!」


「ひっ、ひぃぃぃ!」


 スフィーダは猛ダッシュで城の方へと走って行く。


 逃げ足の速さはかなりのもので、直ぐにその姿は見えなくなっていった。


「マリス! 勇者の俺と居る時は、攻撃魔法の使用は禁止だって母さんと約束したじゃないか!」


「申し訳ありません...ロディ様...」


 俺に怒られるとマリスはシュンとしてしまった。マリスの怒りの原因が俺にあるとわかっているから、これ以上強く言うことは出来ない。


「これからは自重するようにね。それから...俺の為に怒ってくれてありがとう」


「ロディ様...」


 俺達の会話が終わるとそれを見計らった様に、スフィーダが話していた兵士がこちらへ歩いて来る。


「スフィーダ様があんなに怯えるなんて...お前達何者なんだ?」


「ただの新米冒険者ですよ」


 俺達は兵士達の前を通りすぎ、クレイアの外へと出る。


 クレイアの北には聖水が蒔かれていないため、普通に魔物(モンスター)が出現する。


 とは言ってもこの辺りに強い魔物(モンスター)は出現せず、メインはスライムなので危険は少ないだろう。


 スライムの場合足も遅く、遭遇した場合は一般人でも簡単に逃げ切ることが出来る。


 全ての能力値(ステータス)が最弱の魔物(モンスター)のため、武器を持っていない俺達でも簡単に倒すことが出来る筈だ。


「おっ! 居たぞ!」


 俺達の少し先に体長30㎝程のブヨブヨしたゼリー状の生き物の姿があった。


 この魔物(モンスター)がゲームなどでザコキャラの定番となっているスライムだ。


 気を付けなければいけないのは、青い身体をしたスライムは通常のスライムだが、色が違うスライムの場合は上位種のスライムの可能性がある。


 上位種相手にスライムだと舐めて掛かると簡単に全滅してしまう。


 この辺りに上位種のスライムの報告はないので、余程大丈夫だとは思うが、一応用心はしておくべきだ。


 スライムを発見したヘクトルはスライムの方へ走って行く。


「とりゃー!」


 ヘクトルが拳を握りしめてスライムを殴り付ける。


 スライムの身体が大きく変化をして後ろに飛ばされる。


 5m程吹き飛んだスライムの身体は地面に落下すると同時に弾け飛んだ。


 スライムが弾けた場所には小さな青い石が転がっていた。


「ヘクトル。これがスライムコアだよ。これを回収するのを忘れないようにね」


 俺は青い石を拾い上げると異空間収納袋(マジックバッグ)に収納した。


「わかったぞ。その石を集めれば良いんだな? 2人とも誰が沢山集められるか競争だ!」


 ヘクトルは新たなスライムを発見した様で、再び走り出した。


 ヘクトルの能力値(ステータス)なら、スライムの攻撃を受けたところで危険な状態になることもないし、好きにやらせておくか。


「ミラ。ミラはあまりスライムに接近しないで、離れた場所から魔法攻撃で倒すんだよ」


「うん。わかった。MPが尽きちゃったら言うね」


 魔法職の人間はMPが尽きれば戦いでは役に立たなくなってしまう。MPを回復させるアイテム何かもあるのだが、今の俺達の手元にはないし、お金もないので買うことも出来ない。


「ニア様。もしもMPが尽きても魔法力補充(マジックチャージ)で私のMPをお分けしますので大丈夫ですよ」


 マリスの使う魔法力補充(マジックチャージ)は自分のMPを分けることが出来る魔法だ。


 MPは少ないが強力な魔法を使える者などは、MPの高い魔法力補充(マジックチャージ)を使える人間を1人パーティーに入れておけば、かなり有利に戦闘を行うことが出来る。


 ただヘクトルの様に最大MPが0の人間には、いくら魔法力補充(マジックチャージ)を使ったところで意味はない。


「ありがとうございます。マリスさん」


 ミラは新たなスライムの姿を見付けた様で、俺から少し離れた場所に小走りをして行く。


火球(ファイアーボール)


 ミラの放った小さな火の玉がスライムにぶつかると、スライムの身体を燃やした。


 スフィーダの放った火球(ファイアーボール)に比べるとかなり小さな火の玉だったが、それでもスライムの身体を燃やすのには十分だった。


 スライムが燃えた跡にはスライムコアが転がっている。


 2人ともスライム相手には十分戦えるな。ここからは俺もスライム退治だ。


 倒しまくって少しでも多くのお金を稼いでやる。


 左前方にスライムの姿を見付けた俺はスライムに向かい走り出した。


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