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第21話 パーティー結成

 冒険者になる為には先ず冒険者ギルドに登録をする必要がある。


 もちろんこんな村に冒険者ギルドなんてある訳もなく、登録をする為にはクレイアまで行かなければならない。


 あそこには苦い思い出しかないが、必要とあればそんなことは言ってられない。


「取り敢えず冒険者ギルドに登録をしなくちゃいけないし、クレイアまで行って来るよ。そのまま依頼を受けると思うから、もしかしたら今日は帰らないかも知れない」


「わかったよ。別にアンタがその気なら魔王なんて止めて、勇者1本で行っても良いんだからね?」


 流石に領地を持った今の立場でそんな簡単に投げ出す訳にはいかない。


 マリスに至っては自分の地位を俺に譲ってまで力になってくれている。


 仮に俺が魔王を辞めたいと言ってもマリスは笑って許してくれるとは思うが、絶対にそんな真似だけはしたくない。


「俺は勇者も魔王も両立させるって決めたから」


「ロディ様。クレイアに向かわれる前にお食事をされますよね?」


 そう言えばやたらとお腹が減っている。朝からこんなにお腹が空いていることなんて初めてかも知れない。


「俺の分は大盛りで頼むよ。何か、やたらとお腹が減ってるんだよね」


「当たり前だろ? アンタは丸1日以上眠っていたんだからね」


 丸1日? 俺が眠っている間に1日半が経過していたのか...。それはお腹も空く筈だ。


 と言うことはマリスはそれだけの長い間、ずっと俺の傍に居てくれたんだろうか。


「そう言うだろうと思ってロディ様の分は大盛りを用意していますよ」


 俺達はマリスが用意してくれた朝食を食べ終えると、俺は旅に出られる様に支度を整えた。


 クロードがくれた異空間収納袋(マジックバッグ)のお陰で手ぶらで出掛けられるのが楽で良い。


「それじゃあ行って来るよ」


「まぁ、精々死なない様に気を付けるんだよ」


 俺が家を出ようと入り口の方へ向かい歩きだすと、マリスが後ろを付いてくる。


「アンタどこに行くつもりだい?」


「どこって? ロディ様のお供をするつもりですよ」


「駄目だ。それは認められない。アンタはここに残るかディルクシアに帰るんだよ」


「何故ですか!? もちろん能力値(ステータス)は隠蔽しますし、絶対に魔族だということは知られない様に致します。ロディ様にご迷惑を掛ける様なことは致しません!」


「そうじゃないんだよ。アンタが居たらロディがアンタに頼っちまう。アンタが一瞬で戦闘を終わらせる様なことがあればロディの為にならないからね」


 確かにエレンの言うことには一理ある。正直、マリスがいたら全ての戦闘が一瞬にして終わってしまう。それでは俺自信のレベルアップには繋がらないだろう。


 それにマリスがいれば、いざって時にはマリスが何とかしてくれるという甘えが出てしまうかも知れない。


「わかりました...。それでは私は一切戦闘には参加しないと誓います! なので、せめてロディ様の傍に居ることをお許し下さい!」


「...本当にそれを誓えるのかい?」


「はい!」


 マリスは即答だった。仮に戦いには参加しないとなってもマリスが傍に居てくれたら、これ程心強いことはない。マリスが応援してくれるだけで俺の力になる。


「良いだろう。もしもロディが死ぬようなピンチになったとしても絶対に手を出すんじゃないよ?」


「...わかりました」


 仮にマリスは約束をしていたとしても、俺の命が本当にピンチになればエレンとの約束を破ってしまうかも知れない。


 俺はマリスにそんなことをさせない為にも強くならなければいけない。


「直接戦闘に参加することは禁止するけど、回復魔法なんかの援護だけなら許すよ。攻撃魔法以外の魔法なら自由に使ってくれても構わないから。また、どうしても戦闘が必要になる時は私に連絡してきな。それで私が判断して必要と思った時には戦うことを認めよう」


「回復魔法なら良いんですね! それならロディ様のお役に立てそうです!」


 マリスの表情がパッと明るくなる。いくらマリスが回復魔法を使えても一撃で殺されたら意味がない。過信はしない様にしよう。


「ちなみにロディとは関係のないところで、アンタが争いに巻き込まれた時は好きに戦っても良いから。アンタはそれなりに綺麗な顔をしているからね。変な男が寄って来ることもあるだろう。その時は煮るなり焼くなり殺すなり好きにしな」


 マリスはそれなりに綺麗どころのレベルじゃない。見た目だけならエレンに勝っても全然おかしくはないだろう。中身も含めるなら100対0でマリスの勝ちだ。


 それにしてもエレンは勇者のクセに物騒過ぎる。


 マリスの魔法ならば煮ても焼いても待っているものは死のみだ。


「それじゃあ行って来るよ」


 俺達はエレンと分かれ家の外へ出た。


 するとそこにはヘクトルとミラの姿があった。


 2人ともどこかに出掛けるのか、旅にでも出るような格好をしている。


「オッス! おはよう! ロディ」


「ロディ...」


 ミラが何か言いたそうな顔をしている。


「おはよう! ヘクトル。ミラ」


「ヘクトル様。ミラ様。おはようございます」


「マリスさんもおはよー!」


「おはようございます」


「一昨日はありがとう。2人が母さんに伝えてくれたお陰で、何とか生き残ることが出来たよ。それでこんな時間に2人はどうしたの?」


 俺が今こうして無事にいられるのは、2人がクレイア城でのことをエレンに伝えてくれたお陰だ。当然2人は俺が魔族の血を引いていることも魔王になれることも知っている。


「昨日エレンさんに聞いたんだけど、ロディって勇者と魔王を両方やることにしたんだろ? 勇者をやるってことは冒険者になるんだよな?」


 エレンは2人には全てを話している様だ。だったら俺が何かを隠す必要もない。


「そうだよ。調度今からクレイアに冒険者登録をしに行くところなんだ」


「俺もロディと一緒に冒険者になるよ。俺達でパーティー組んだら楽しそうじゃないか?」


 ヘクトルとパーティーか...。確かにヘクトル相手なら何でも言い合うことが出来る。ヘクトルは冒険者としてはかなり微妙な職業だが、まぁ、何とかなるだろう。


「俺は魔王のこともあるから冒険者をやれる時間は半分しかないけど、それでも良いかな?」


「全然大丈夫だ! 俺だって学者と商人だから勉強する時間が必要だからな!」


 ...勉強をしてヘクトルの頭が良くなってくれると良いのだが...。


「私も...私もロディと冒険者になる!」


 ミラがずっと言おうとしていたのはこの言葉だった様だ。別にそんなこと簡単に言えると思うのだが、ミラなりに何か思うところがあったのだろう。


「ミラも冒険者になるの?」


「うん! ロディが冒険者になるって言うなら私も一緒になりたい!」


 ヘクトルとミラ。それにマリスを加えたパーティーか。この4人でパーティーを組むとか楽しそうだ。


「ヘクトルにも言ったけど、俺は魔王も両立させるつもりでいるんだ。それでもミラは大丈夫なの?」


「ロディは魔王になってもラウンドハールに攻撃をしたりしないよね?」


「する訳ないじゃないか。俺はラウンドハールの勇者なんだよ」


「だったら大丈夫! 私もロディが居ない時はお婆ちゃんの薬屋を手伝うから」


「わかったよ。それじゃあ皆でクレイアに行こう!」


 俺達は冒険者登録をするため、クレイアへ向けて歩き出した。


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