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第119話 獣の力

「まぁ、俺達に掛かればこんなもんだろう」


 トウマがサウロスに突き刺さった2本の剣を抜き、サウロスを後ろにして振り返る。


「!? トウマ! まだだ!」


 サウロスが突然起き上がると左手でトウマの左足を掴む。


「バカな! 何故生きているんだ!?」


 右手で握った土の杖(ユグドラシル)をトウマの右足目掛けて振る。


 見た目は木の杖に見えるくせに、鋭い切れ味でトウマの右足を切断した。


「ぐうっ!」


 右足を失いバランスを崩したトウマがその場に倒れる。


 おそらく、先程バトウの手首を落としたのも土の杖(ユグドラシル)だろう。あの切れ味は剣と同等。いや、それよりも鋭い切れ味と考えた方が良い。


「一瞬、死ぬかと思いましたよ。よくもやってくれましたね」


 サウロスが土の杖(ユグドラシル)を振り上げると、倒れたトウマに向かって降り下ろす。


 土の杖(ユグドラシル)はトウマの腹を貫通し地面に突き刺さる。


「がはっ!」


 トウマが大量の吐血をする。


 流石にあの傷を放っておいては、待つべきものは死だ。


「兄上! 貴様...よくも!」


 アズナがサウロスを睨み付ける


 アズナでもこんな表情をするのだと、少し驚いた。


蒼炎(ブルーフレイム)!』


 アズナから放たれた蒼い炎がサウロスの身体を捉えた。


 炎は一瞬でサウロスの身体に広がっていく。


「私の使える最強の魔法です。蒼い炎により受けた傷は治療することが出来ません。死ぬまで苦しみなさい」


 中々えげつない魔法を使うな。アズナは怒らせないようにしないと。


 炎が収まると、そこには全身を火傷したサウロスの姿があった。


「痛いじゃないですか...ですが...」


 サウロスの身体の火傷が治っていく。おそらくあれは物凄い速度の自己治療能力だ。気付けばトウマから受けた胸の傷も治ってしまっている。


「うぉぉぉ!」


 バトウがサウロスに切り掛かる。


 バトウの攻撃によって、サウロスがトウマから少し離れる。


「アズナ!」


 アズナが切断されたトウマの足を拾い、足を繋げる。


中回復(ハイヒール)


「ううっ...」


 切断されたトウマの足が繋がっていく。


 足が繋がったことを確認すると、今度は貫かれた腹に手を添えて中回復(ハイヒール)を発動させる。


「ぐうっ...悪いな...アズナ...」


「いえ...それにしてもあの人間は一体...。私の蒼炎(ブルーフレイム)の傷を回復させられる人間なんて初めてです...」


「俺は確実に奴の心臓を貫いた筈だ。心臓を貫かれて生きていられる人間など存在する筈がないんだ」


 そうだ。魔族ならまだしも心臓を貫かれて生きていられる人間なんてあり得ない。


 まさか、サウロスは人間じゃないとでも言うのか? 確かに人間でないと八竜勇者(ブレイブエイト)になれないという条件はなかったと思うが...。


 もしそんな条件があれば、魔族との混血である俺はかなり微妙かも知れない。


「ぐうっ!」


 サウロスと交戦中だったバトウの身体が吹き飛ばされて、トウマ達の前に転がる。


「オヤジ!」

「父上!」


「くっ、ううっ...どうやらアイツは出し惜しみをして勝てる相手じゃないみたいだな...」


「アレをやるのか? 暫く戦闘が出来なくなるが、確かにそんなことは言ってられないか...」


 サウロスが3人の元にゆっくりと近付いてくる。


 自分の勝利を確信しているのか、口許には笑みを浮かべている。


「じゃあやるか」


『『五獣降臨(ファイブビースト)』』


 2人はスキルを発動させたが、外見上に何か違いがあるようには見えない。


「一瞬で終わらせるぞ。トウマ」


 バトウが走り込むと一瞬でサウロスの目の前まで到達する。


 あの速度はなんだ? さっきまでのバトウの速さを遥かに上回っている。


 速度を上々させるスキルか? だが、速度が速くなったところで、結局力の差があり過ぎてはサウロスに致命的なダメージを与えることは出来ない。自己回復力の高さからも強力な一撃を決めなければ倒しきることは出来ないだろう。


「食らえ」


 バトウが大剣を降り下ろす。


 だが、土の杖(ユグドラシル)で受け止められて終わるだけだ。


 予想通りにサウロスが土の杖(ユグドラシル)を掲げる。


「...!」


 何かを感じたのか、サウロスは土の杖(ユグドラシル)でバトウの剣を受け止めるのではなく、受け流し地面へと落とした。


 バトウの剣が地面に触れると大地が砕ける。


 物凄い破壊力だ。速さだけじゃなく力もさっきまでとは桁違いだ。


「オヤジだけじゃなくて、俺もいるぜ!」


 バトウ同様にトウマの速度も大幅に上がっている。


「オラァ!」


 トウマが2本の剣でサウロスに切り掛かる。


 サウロスは何とか土の杖(ユグドラシル)でトウマの攻撃を防いでいるが、明らかに余裕がなさそうだ。


「お前達も私と同じく身体能力の強化を得意としているとはな...」


「身体強化とは言ってもお前とは全く別物だけどな。この能力は獣の力を借りて、この身に宿している。人間よりも遥かに高い身体能力を持つ獣のな!」


 トウマの攻撃速度が更に速くなる。


 サウロスは攻撃を防ぎ切れずに、その身体に攻撃を受ける。


「ぐっ!」


 この機会を逃すまいとトウマが更に攻撃を繰り出す。


 サウロスの身体に次々と傷が付いていくが、それと同時に自己回復により傷が塞がっていく。


「オラ! オラ! オラァ!」


 サウロスの自己回復よりもトウマが傷を付ける早さの方が上回っていく。


「はぁっ!」


 更にバトウが攻撃に加わる。


「ぐぁぁぁぁっ!」


 バトウの攻撃がサウロスを捉えると、サウロスの右肩から先が切断され地面に落ちる。当然、握っていた土の杖(ユグドラシル)もその場に落ちる。


「くっそぉぉぉ!」


 サウロスが落ちた土の杖(ユグドラシル)を必死に左手で拾う。


「ぐうっ...今回は私が引きましょう。ですが、次回は必ず貴方達全員を殺します。必ずです!」


 サウロスが胸元から小さな石を取り出す。


「不味い! バトウ! サウロスを殺してくれ!」


 バトウの剣がサウロスに触れる瞬間、サウロスの身体が歪みその場から姿を消した。


「転移魔法を封じた石か...」


 エアリに掛けられた呪いを解くためにはサウロスの命を奪う必要があった。


 サウロスに逃げられてしまった今となってはエアリを救うことは出来ないのだろうか...。


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