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第118話 バトウ親子VS土の勇者サウロス

「ちっ...」


 バトウは直ぐに下がり、右手で地面に刺さっていた大剣を引き抜く。


「うぉぉぉ!」


 バトウの大剣がサウロスに降り下ろされる。


 サウロスが土の杖(ユグドラシル)を前に出して、バトウの大剣を受け止める。


 見た目はあんなに脆そうな杖だが、折れることはなく完全にバトウの大剣を受け止めている。


「貴方の力はこんなものですか?」


 逆にバトウの方が押されてしまっている。


 両手で剣を握れば状況は変わるかも知れないが、バトウは左手首から先を失っている。両手で剣を握るということは不可能だ。


 サウロスが一気に力を込めるとバトウの身体が吹き飛ばされる。


「一体どうなってやがるんだ...。この力...とても魔法職の力とは思えん...」


 俺はサウロスの能力値(ステータス)が気になり、確認しようとしたがサウロスの能力値(ステータス)は表示されなかった。


 何かの力が働き、サウロスの能力値(ステータス)を見ることは出来ないようだ。


「おや? 私の力が気になるのですか? 残念ながら、この土の杖(ユグドラシル)には敵対する者からの干渉を無効化する効果があるのです。当然、状態異常なども一切効きませんので、やるだけ無駄ですよ」


 敵対しない者ならば干渉出来るということは、回復魔法や補助魔法何かは受けることが出来るということだ。

 

 随分都合の良い武器だな。流石は神器と言ったところか。


 だが、奴のあの強化に関しては土の杖(ユグドラシル)の力ではなく、何か別の要因がある気がする。


「まぁ、良いでしょう。特別に私の力のことを教えてあげましょう。どうせこの場で死にゆく運命なのですからね」


 別に俺からサウロスに何かを聞いた訳ではない。奴が自分から力の秘密を話してくれるようだ。


 それが分かれば対抗手段を立てることも出来るかも知れない。


「『超魔力変換(トランスマジック)』私だけが使うことの出来る特殊魔法(ユニーク魔法)です。この魔法を使うことにより私の魔法能力を全て、身体能力に変換することが出来るのです。まぁ、デメリットとしてこの魔法を使っている間は一切の魔法やスキルは使えなくなってしまいますがね」


 そういうことか...。魔法職の人間の魔力を全て身体能力に回せるなら、相当な強化が出来る筈だ。


 魔法やスキルすら使えなくなるということは、MPやSPも全て身体能力に回っているのかも知れない。


「なるほどな...。だったら今のお前は特殊技能(ユニークスキル)を使えないということか」


 バトウが口許に笑みを浮かべる。


 元々、バトウ自身はサウロスの特殊技能(ユニークスキル)を怖れる必要はない筈だが。


「!?」


 サウロスが突然土の杖(ユグドラシル)を後ろに回す。


俺には全く気付けなかったが、サウロスの背後からトウマが切り掛かっていた。


中回復(ハイヒール)


 トウマが攻撃をした隙を付いて、アズナがバトウの左手首を繋げる。


 中回復(ハイヒール)では切断した手首を生やすようなことは無理だが、切断先の手があれば別だ。


 どうやらアズナが拾いバトウの手首にくっつけたようだ。


「父上。大丈夫ですか?」


 バトウの治療が終わったようだ。


 切断された手首が元通りになっている。


「ああ、問題ない。アッチは大丈夫なのか?」


 トウマとアズナはマリスやトゥエントと共に魔物(モンスター)達の掃討に当たっていた筈だ。


 まだ向こうでは戦闘が行われている。


「はい。マリス様からロディ様達のサポートに向かうよう言われました。どうやら残りの魔物(モンスター)達はあのお二人で十分なようです」


 アズナがニコッと微笑む。やはり母親に似て美人だ。


「本当なら兄上と私はサポートに徹する予定でしたが、先程の話を聞きました。特殊技能(ユニークスキル)が使えないのなら、私と兄上も父上と共に戦います!」


「そういうことだ! オヤジもまだまだ頑張ってくれよ!」


 トウマが物凄い手数で攻撃を繰り返す。


 二刀流だけあって攻撃回数も相当なものだが、サウロスはそれらの攻撃を全て防いでいる。


火炎槍(フレイムランス)!』


 アズナがサウロスに向けて魔法を放つ。


 サウロスはトウマの攻撃に対応しながら魔法を回避する。


「うぉぉぉ!」


 背後からはトウマが。正面からはバトウが切り掛かる。


「くっ!」


 サウロスは上空に飛び上がり、二人から距離を取ろうとする。


 当然、離れられないように2人がサウロスを追撃する。


火球(ファイアーボール)


 アズナが無数の火球(ファイアーボール)を放ち、サウロスの進路を妨害する。


「おやおや、1人を相手に3人とは戦士としての誇りはないのですかね?」


「悪いな。誇りじゃ腹は脹れないんでな。やるぞ、トウマ!」


「おお。久し振りにアレだな」


『三閃衝撃波!』


 バトウが大剣を振り落とすと、そこから衝撃波が発生しサウロスに向かい飛んで行く。


「ふん!」


 サウロスは土の杖(ユグドラシル)で衝撃波を受け止めようとする。


 しかし衝撃波はサウロスの目の前で両サイドに分裂し、分かれた衝撃波はサウロスの両脇腹を切り裂いた。


「ぐううっ!」


 当然、防御力も上がっているらしく大きなダメージを与えたようには見えない。


『真空斬!』


 トウマがサウロスの両脇腹を切り付ける。


 その場所はまさに今、バトウの攻撃が当たった場所と全く同じ場所だ。


「ぐぁぁぁ!」


 たまらずサウロスが両膝を地面に突く。


「もらった!」


 バトウの大剣が体勢の低くなったサウロスの首に下ろされる。


「ちっ!」


 かろうじてサウロスは土の杖(ユグドラシル)を振り上げてバトウの大剣を受け止める。


「身体ががら空きだぜ」


 トウマがサウロスの背後から心臓を目掛けて2本の剣を突き刺す。


 剣は確実にサウロスの心臓を貫き身体の正面から顔を出す。


「ぐっ...ぐぁぁぁぁ...」


 親子だけあって見事な連携だ。


 サウロスはその場に崩れ落ちた。


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