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第111話 エルザからの情報

 フォルスとエルザを連れて俺達は夜営時に話し合いなどが出来るように作られたテントの中へとやってきた。


 この場にいるのはアルロン、マリスを含めた5人のみだ。


 中央に置かれた丸いテーブルの回りにある椅子に2人を座らせると、その正面に俺は座る。


「アルバスのことに関してと言うのはこの戦争のことか?」


「はい。私はこの戦争を早く終結させたいと願う兄、エルディンに言われこの場所にきました」


「エルディン?」


 アルバス7世のことは知っていたが、その子供に関しての情報は全くない。


 俺は知っているであろうマリスに視線を向ける。


「アルバス7世の長男で次期アルバス国王になる男ですよ。父親とは違い民のことも思い遣り、民からの信頼も厚い人物です」


 なるほど。そんな人物が国王ならこんな戦争など起こることもなかっただろうな。


「それでエルディンとやらは私に何を望むのだ?」


 エルザが一瞬間を開け、フォルスの方に視線を向けると無言でフォルスが頷く。


「わが兄エルディンは戦争の早期終結を望み、ケルティアが勝利したあかつきには、民に対して危害を加えないお約束をして頂きたいと望んでおります」


 元々アルバスの民に危害を加える気など全くない。部下達にも厳重に注意をしている。


 しかしアルバスからすればそんなことがわかる筈がない。


 俺がその気になれば民から全てを奪うことも出来る。他国の民がどうなろうと関係はないからな。


「そんな約束をして私に何のメリットがあるというのだ? どの道この戦はケルティアの勝利に終わる。勝利した側が敗北した側に何をするのも自由であろう?」


 そんな気は毛頭ないが、こう言っておく方が良い気がする。


「ロディ様がお約束して頂ければ1つ情報をお教えしたいと思います」


「何の情報だ? そもそもこの話が全て罠だという可能性もある。王女自らが赴けば罠だと思わないという裏を書いてな」


 勝利のためなら王女1人の命くらい安いものだと、アルバス王が考えている可能性もある。


 フォルスの傷は明らかに致命傷だったが、それすらも俺が信じるためのものだという考え方も出来る。


「お父様はケルティア軍を城下内に入れて、魔物(モンスター)の大群を使うつもりでいます」


 土の勇者サウロスか。城下で魔物(モンスター)などを使おうものならどれだけの被害が出るかわからない。


 当然、ケルティア、アルバス共にだ。


「私達を倒すために自国の民を犠牲にすると言うのか? 愚かな...」


「お兄様もアルバスの民を犠牲にすることは反対なされました。それによって現在は城の牢に入れられてしまったのです...」


 エルディン本人は牢に捕らえられているため、妹のエルザがここまでやってきた。


 まぁ、辻褄は合う話だ。


「それで情報と言うのは何だ? まさかサウロスが街中で魔物(モンスター)を使うというのを伝えたかった訳ではないだろう?」


「はい。それをお伝えしたところでロディ様にはあまり意味がありませんからね。私が持つ情報はアルバス城にいるサウロスの居場所です。予めサウロスの居場所がわかれば魔物(モンスター)を放つ前にサウロスを討つことが出来るかも知れません」


 これはかなり大きな情報だ。


 サウロスさえ討ってしまえば魔物(モンスター)と戦う必要はなくなる。


 当然、アルバス、ケルティア、共に犠牲になる数をかなり少なく出来る筈だ。


「その話が本当ならばケルティアにとってかなり有益となるが、そなたたちは実の父親であるアルバス国王を完全に裏切ると言うのか?」


「お兄様はアルバスのことを思い決断致しました。私はお兄様に従うだけです」


 悪い話ではない。元々アルバスの民には手を出さないつもりだったんだ。こちらにとって何もデメリットはない。問題はこの話が罠だった場合だ。


 サウロスを倒すために小数精鋭で向かったところ、待ち伏せなどがあれば全滅は必至だ。


「お前がサウロスの居場所を教えるのであれば、抵抗をしないアルバスの民には危害を加えないと約束をしよう。だが、お前の話が真実だとする確証がないのだ」


 おそらくエルザの言っていることは真実だ。


 だが、慎重になるに越したことはない。


「もしも私の話に嘘があればどうぞ私の命をお取り下さい」


 エルザを信じても良いだろう。よくある言葉だが目を見ればわかる。


 俺が返事をしようとしたところ再びエルザが口を開く。


「願いを聞き遂げて下さるのなら私の身体を自由にして頂いても構いません!」


「エルザ様! それは!」


 明らかにフォルスが焦っている。


 この話はエルディンやフォルスには言わずエルザが勝手に決めたことなのだろう。


 確かに普通の男ならこんな美味しい提案には直ぐに乗ってしまうだろう。


 だが、俺は違う。


 本当ならば直ぐに飛び付きたいところだが、領主としての威厳を見せる必要がある。


「子供がそんなことをする必要はない。今回はお前の話を信じよう」


 子供と言っても見た目は俺より少し歳上に見える。


「お聞き遂げ頂きありがとうございます」


 エルザが何度も頭を下げる。


 こちらとしては単に情報が得られて、何かが変わるわけではないのであまり感謝をされても気まずくなる。


「それでは詳しく話を聞かせて貰おうか」


 エルザからサウロスの居場所を聞き出す。


 サウロスがいるのは城下街にある大きな屋敷。


 屋敷には特に警備兵などはおらず、魔物(モンスター)はサウロスの空間魔法によって召喚されているらしい。


 一瞬で数千という魔物(モンスター)を召喚出来る訳ではないので、気付かれずに近付くことが出来ればサウロスを直接倒すことが出来る。


 サウロスを倒しに行く者は特殊技能(ユニークスキル)によって操られないため、確実にサウロスよりもレベルが高い者で行く必要がある。


「サウロスのレベルはわかるか?」


「すみません...。私にはわかりません...」


 流石にエルザはサウロスのレベルを知らないようだ。だが...。


「私が知っています。サウロスの現在のレベルは101。アルバスではこのレベルを越える者はいません」


 フォルスがサウロスのレベルを知っていたようだ。101か...。マリスなら問題ないな。


「マリス。お前以外にレベルが101を越えている者はいるか?」


「アルロンとトゥエントの2人が越えていますね」


 全部で3人か。アルロンにはここに残って兵達の管理をして貰わなければいけない。


「そうか。トゥエントをここに呼んでくれ」


 アルロンがこの場を離れてトゥエントを呼びに行く。


 暫くするとアルロンがトゥエントを連れて戻ってきた。


「ロディ様。何かあったのですか?」


「トゥエント。今からマリスと3人でアルバス城に向かうぞ」


「!?」


 俺の発言に、この場に居る全員が驚きをみせていた。


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