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第105話 作戦会議

 地図を見る限りこの大陸の全体地図ではないようだ。


 ディルクシアとアルバスの2ヶ国だけがピックアップされている。


 アルバス国内を見ると城が4ヶ所に街が15。それに村が5ヶ所程記載されている。


 俺の特殊技能(ユニークスキル)により消滅したバーラン城が北にあり、そこから南にアルバス城。アルバス城から南西と南東にそれぞれ1つづつ城があるようだ。


 バーラン城からアルバス城までは結構近い距離にあるが、アルバス城から残り2つの城まではここからアルバス城くらいまでの距離がありそうだ。


「ここにアルバス美術館という建物があります」


 アルロンがアルバス城から少し西の場所を指差す。


 流石に美術館となると地図に記載はないようだ。


「この美術館にはアルバス国王が世界中から集めた貴重な美術品などが置かれています。アルバス国王は美術品を集めることを何よりの趣味としているようです」


 その美術舘を攻撃して美術品を奪うということか? 確かにそれなら余裕で魔流族への報酬は払えそうだが...。


「第2部隊でこの美術館に攻撃を仕掛けます。当然、美術館には盗賊達から美術品を守るための兵が配置されていますが、所詮は百人程。第2部隊の戦力なら簡単に全滅させることが出来ます」


「だが、この状況で美術舘を攻撃している余裕などあるのか?」


 高価な美術品を手に入れたところで結局、戦争に負けてしまえば意味がない。戦力を減らしている場合ではないと思うのだが...。


「美術舘に部隊が迫っているとなれば、アルバス王は必ず軍を派遣します。美術館に近付かせることなく完全に殲滅が出来るよう3000~5000の兵は送るでしょう」


 美術館が攻撃に巻き込まれれば、少なからず美術品に被害が出る筈だ。


 一切の被害を出さずに撃退するためには多くの兵が必要となる。


「それで、その間に兵が少なくなったアルバス城を攻めるというのか?」


「はい。少なくなったといってもアルバス城には2万を越える兵力があります。更には他の城からも援軍を派遣すれば全軍ではないにしろ、総兵力は5万を越えます」


 700人で3000~5000人の兵士を減らすことが出来れば御の字だが、それでも残り15000以上の兵か...。3倍以上の差があるな。


 他の城から援軍がこれば10倍以上の兵力差となってしまう。流石にそれだけの兵力差を跳ね返すのは個々の力で勝っていても難しいだろう。


「アルバスを守る兵の数を減らし、援軍が到着するまでに決着をつけるということか?」


「はい。出来れば八竜勇者(ブレイブエイト)が美術館の方に向かってくれると更に良いのですが...」


 当然、アルバスにも八竜勇者(ブレイブエイト)が存在する。確かアルバスにいるのは地の勇者だった筈。


「アルバスにいる八竜勇者(ブレイブエイト)の実力はどうなのだ?」


「アルバスの八竜勇者(ブレイブエイト)は地の勇者サウロス。サウロスの戦闘力自体はそれ程恐れるものではありません。ただ、問題はその特殊技能(ユニークスキル)です」


特殊技能(ユニークスキル)? 一体どんなスキルを持っているというのだ?」


「『従わせる者(マニュピレイション)』このスキルは自分よりもレベルが低い者を意のままに操ることが出来るのです。それは人間、魔族、魔物、どんな相手だろうとです」


 恐ろしい技能(スキル)だ...。魔法ではなく技能(スキル)ならば魔法反射などで防ぐことも出来ないし、条件がレベルだけならレベルさえ上回っていれば全ての相手に有効となってしまう。


「サウロスのレベルはいくつなんだ?」


「現在の正確なレベルはわかりませんが、おそらく100前後かと思われます」


 戦闘の際にはレベル100以上の者のみで戦わなければいけない。覇者のローブの状態異常無効化のお陰で俺も操られることはないだろう。


「ちなみに対象は1人のみなのか? それとも複数同時に操ることが出来るのか?」


「同時に操れる数は無制限と言われています。1人で魔物の大群を操り戦場に現れることもあります」


!? ...そうか...あの時、村に魔物(モンスター)の群れが向かっていたのはサウロスが原因か...。魔物(モンスター)を操り村を襲わせようとした。だとすればティナ達の死にも関わっていることになる。


「操っている者が死ねば操られている者は正気に戻るのか?」


「おそらくそうだと思われます」


 もしもサウロスが魔物(モンスター)の大群率いているようなことがあれば、サウロスに集中攻撃をして倒してしまえば良い。


 ティナ達の仇は必ず討ってみせる。


「サウロスが美術館の防衛に向かった場合は、アルバス城を落とした後に後方からサウロスに攻撃を仕掛ける。奴は必ず殺すぞ」


「かしこまりました。ゼクス、わかっていると思うが、お前の役目は兵の分断だ。無理に戦闘をする必要はない。敵を引き付けたら安全な距離を保ちながら撤退すれば良い」


「はっ! 心得ております」


 騎兵だけで編成されている第2部隊なら、敵兵に追い付かれることなく安全に撤退することが出来るだろう。


「ロディ様。残りの兵でアルバス城を攻めることになりますが、1つ問題がございます」


「問題だと?」


「はい。アルバス城は特殊な作りになっていて、城の回りに強固な防壁が作られており、その防壁の外部に城下街があるのです。当然、城下街を囲うように防壁も作られています」


「二重の防壁により守られているということか?」


「はい。そして、防壁は内部の防壁の方が強固なものとなります」


 外部の防壁を突破した後で更に内部の防壁を突破しなければいけないということか。かなり厄介だな。


 ただでさえ時間に追われながら攻め落とさないといけないというのに...。


「もしもアルバス軍が街を放棄して内部の防壁内に立て籠ることになった場合はどう致しますか?」


 そんなことがあり得るのか? 相手次第では街の人間を盾に取り、城の明け渡しを要求する可能性だってある。最悪の場合、街の人間が皆殺しにされる可能性すらあると考えなければいけない筈だ。


「敵とはいえ、街の人間に危害を加えることは禁止とする。抵抗された場合は別だが、無抵抗な人間に手を出すような場合には厳罰に処する。これを徹底させろ」


「わかりました。全兵に通達致します」


 他国の民への略奪行為などは別に珍しいことではない。ごく当然のものとして行われている行為だ。


 しかし、俺は戦争とは関係のない民への略奪などを許すつもりはない。


 責任を取らせるのは上の立場にいる者達だけで十分だ。


 基本的な方針が決まった後、アルロンから各部隊長に細かい指示が出された。


 結局、作戦会議が全て終了する頃には夕方前となっていた。


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