第103話 アークスター
「ん...」
ドアをノックする音が聞こえ俺は目を覚ます。
仮面を付けたまま寝てしまったが、寝ている時に外れたようで仮面がベッドの上に落ちている。
仮面を拾うのと同時に部屋の扉が開く。
「ロディ様、おはようございます。朝食の方が出来ているようです」
入り口からマリスの声が聞こえる
俺は起き上がり仮面を付けるとマリスと共に食堂へと向かう。
食堂へ着くとテーブルの上には既に料理が並べられており、それを食べ終わった俺達は玉座の設置されている謁見の間へと移動する。
謁見の間にはいつも通りにアルロンの姿のみがあり、玉座の隣に立っていた。
「おはようございます。ロディ様。もう暫くしたら皆、集まると思いますのでこちらの椅子にてお待ち下さい」
アルロンに言われ、俺は椅子へと腰掛ける。
座り心地は悪くない椅子だ。
「ところでケルティアでそれなりの地位を持つ者となるとどうなるのだ? マリスが四魔将の時には当然、マリスが頂点でその下にお前やトゥエントがいたのだろ?」
この国での地位に関して俺がわかっているのは、王の下に四魔将の4人がいるということだけだ。
その下の位に関しては全くわからない。
領地によりある程度の違いはあるにしろ、結局は全員がクロードの配下になる。階級などはある筈だ。
俺が元いた世界ならば元帥が軍の最高権威で、その下に将校、左官等が続いていたがこちらの世界にそんな位は存在しない。
人間の国では公爵、侯爵、伯爵など貴族の称号は存在しているが、それはあくまでも貴族のみに関するもので、軍に属する者には兵長、部隊長、将軍などが存在しているがその辺りの知識などはあまりない。将軍と呼ばれる人間がかなり上の位にいるだろうと思っているくらいだ。
宰相と呼ばれている人間もいるのだが、それは将軍よりも上の階級なのだろう。
何しろエレンから教わった知識は魔物や戦闘に関することがほとんどで、王族、貴族のことや軍に関することは全くと言って良いほど教わってはいない。
そもそもエレン自体がその辺りをわかっていない可能性すらある。
「ディルクシアでの階級に関しては魔等級という星の数で決められております。これはケルティアのみではなく、ディルクシア全体で有効となるものです」
魔等級? 初めて聞いた言葉だ。星の数ということはその数が多い程位が高いということだろう。
だが、そんな星を示すような物を俺は貰った覚えがないのだが...。
「ロディ様には実際に見て頂きましょう」
『魔等級』
アルロンの右手が白く輝くと右手の甲に光る星が浮かび上がった。
1、2、3、星の数は6つ。
「これが私の魔等級です。星の数は最大で10等級。この星が3等級以上の者が戦場でもある程度の権限を持つことになります。お次はロディ様が魔等級と唱えて頂けますか?」
『魔等級』
そう唱えるとアルロンと同じように俺の右手に星が浮かび上がる。
星の数は8つ。これはマリスが自分の持つ四魔将の座を譲ってくれたお陰だ。
!? だとすれば俺に自分の地位を譲ったマリスはどうなってしまったんだ。
「マリス。私に地位を譲ったお前はどうなってしまうんだ? 1等級になってしまったのではないのか?」
マリスがニコリと笑う。
『魔等級』
マリスの右手に星が浮かび上がる。その星の数は7つ。俺よりは低いが1等級ということではなさそうだ。
「私がロディ様に四魔将の座を譲った後で、クロード様が私にロディ様の相談役という立場で7等級の魔等級を授けてくれました。1等級では色々と面倒が起こるだろうということです」
クロードが...。1等級をいきなり7等級まで上げるとは、確実に公私混同が入っているんじゃないのか? まぁ、マリスならそれだけの実力を伴っているから問題はないと思うが。
それに8等級だったマリスがいきなり1等級になっては、周囲の者達が対応に困るだろう。
しかし四魔将で8等級か。当然、クロードは10等級だとして9等級を持つ者がいるのか? だとすれば四魔将よりも上の地位が存在することになる。
「四魔将で8等級ということは9等級はどうなるのだ?」
「9等級は大魔将という位に当たるのですが、現在9等級の地位にいる方は居ません。元々はクロード様がその地位におられたのですが、クロード様がディルクシアの王になられた後は空白となっております」
次期魔王を目指すなら先ずは大魔将の位を目指せば良いということか。
アルバスとの戦争に勝利すれば確実に一歩、大魔将に近付くことだろう。
「それでケルティアに3等級以上の者はどれくらいいるのだ?」
「直接戦場に赴くのは私とマリス様を含めて8名となります。文官も含めれば12名となりますが」
8人しか居ないのか...。1人がトゥエントだとして残り5人。これは明らかに少ない気がする。基本、戦うことが出来ない文官は戦力としては期待できない。
その時、入り口の扉が開き1人の男が謁見の間へと入ってきた。
「トゥエント! いきなり入ってくるとは失礼だぞ!」
入ってきた男はトゥエントだ。突然部屋に入ってきたトゥエントに対してアルロンが叱咤する。
「悪いな。ついお前しか居ないと思って入ってきてしまったが、ロディ様がみえているんだったな」
トゥエントは俺の前に来ると跪く。
「ロディ様。改めて宜しくお願いします。このトゥエント、ロディ様のために身を粉にして働かせて頂くつもりでございます」
「トゥエントは私と同じく6等級で、ケルティアでの地位は天魔槍となります」
「天魔槍?」
「私の持つ天魔剣と同じく、戦闘においてマリス様に次ぐ権限を持つ地位です」
天魔槍と天魔剣。その名の通りだとするとアルロンの得物は剣なのだろう。
「失礼します。魔空5名、アルロン様の命により参りました」
扉の向こうから声が聞こえる。声の主は男性だ。
「ご苦労。中に入ってくれ」
謁見の間に5人の男女が入ってくる。
5人は俺達の前に来るとその場に跪く。
「ロディ様。彼等が4等級の魔等星を持つ魔空達です」
魔空と呼ばれる5人は全員が様々な外見をしている。




