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1日目(Ⅵ)

風俗街の中心地にある、煌びやかな本店。街の支店で働く嬢たちは、ここで〆の作業に入ることになっている。

 「ˇ(キャロン)!!」

 大声で名前を呼ばれ、ˇはビクッと肩を震わせた。自分の勤める支店が閉店した後、彼女は早急に本店へと呼び出され、他の嬢たちの前で言い訳を述べることになってしまった。

 「あんた、また店を荒らしたんだって!?」

 目の前で怒鳴っているのは、絢爛たる着物を身に纏った美しい女性だ。透明な羽衣を腕に通し、豪華な椅子に腰かけて足を組んでいる。その様相は、まさにこの界隈のトップに相応しい。

 花の飾りがついたきれいな黒髪をいじりながら、その女性はˇを呆れたように見つめた。

 「全く、あんたは売り上げが高いってのに、今回は給料から天引きだね!」

 「えーん、ごめんなさーい!!」

 「天引き」の単語を聞き、ˇはわざとらしく泣き始める。

 「ホント、ˇって短気よね。金がない客には、すぐに手を出そうとするんだから」

 「ねー。『殺すか売り飛ばすか』しか考えてないんだから」

 周囲の嬢たちが、彼女のことを見てひそひそとしゃべり出す。彼女の破壊行為は、どうやら日常的なものらしい。

 「でもでもぉ、ε様、聞いてくださいよ! あのおにーさん、怪しい気配を纏ってたんですよー!」

 ˇは怒っているεに対して、必死に話題をそらそうとする。

 「なんか邪悪っていうか、闇っていうか、そんな感じだったんですー! 不思議じゃないですかー?」

 ……その言葉に、εは鋭く反応した。勢い良く椅子から立ち上がり、ˇのキャラメル色の瞳をじっと見つめる。

 「……ˇ、それは本当のことなんだね?」

 「ホントですよ、ε様―! 信じてください!」

 彼女の様子を見て、εはふっと息を吐く。そして右手に持った扇子を広げ、嬢たちに命令した。

 「いいか、あんたたち! ˇが仕留め損ねた男に会ったら、徹底的に叩きのめしな!」

 「はい、ε様!!」

 嬢たちの揃った返事を聞いて、彼女は再び腰を下ろした。

 「……また、悪魔の遣いか。厄介だねぇ」

 そう言うと、彼女は紫色の瞳をすっと細めた。

 「それに、今度はあたしの地区からか。全く、気に入らないね……」


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