第二章41話「第四関門 九騎神使ネロ1」
瑠花「着いたね、それでここから探索ってことかな」
琴理「そうね、とりあえずアトリー、このまま一定の空間頼めるかしら?」
アトリー「問題ないよ、とりあえず瑠花姉様は素材探しに集中してください」
瑠花「ありがとうね、アトリーちゃん!ここからは頑張って見つけるね!」
瑠花達はアトリーのオーラ壁の範囲を広げ、最下層を泳ぎながら探す
瑠花「でも凄いね、ここまで来ると何もないと思ってたんだけど、ちゃんとお魚とか居るんだね」
琴理「まあね、その場に適した生物がどこの星にも居るわ、それに今回探してる水粋花だってそうよ、あれはここまでの水の純度がなければ咲かない貴重な花、だから最低でも水深2万キロ以上ある深海が探索条件なのよ、水質もあるけどね」
水粋花は汚染された水からは生成されないとされている、琴理によると、純度が高い水に加え、純度の高い水で長年ろ過された砂と深海に住む生物の排泄物によって生まれた栄養で、長い年月を得て、自然栽培が行われている。帝国ではこれを人口的に作ろうとしたのだが、水粋花のような高水準の花は作れないという
瑠花「あ!あれそうじゃないかな?」
瑠花が水色に薄く輝く花の元へ急いで泳ぐ
琴理「間違いなさそうね、とりあえず花は寿命が短いから、この深海の水と砂と一緒に瓶に入れて持って帰りましょう」
瑠花「そうだね・・・よし!これで水粋花ゲット!よーーし!アトリーちゃん!このまま地上に戻ろうよ!」
瑠花が意気揚々とアトリーの元に泳ぎ寄ると声がかかる
ネロ「おめでとうございます、大変な道のりだったのによく頑張りましたね」
琴理「ネロさん!」
ネロはアトリーが張っていた結界の外側に居た、だが、それが原因で瑠花に近づけないとわかるとアトリーのオーラ壁に触れ、思いっきり破壊する!
アトリー「わあああああ!!何やってるの!?」
琴理「瑠花!!分厚いオーラ壁を張りなさい!!」
瑠花と琴理は急いでオーラ壁を作り、自身の身を守る、そしてネロは何食わぬ顔で瑠花の元に泳ぎ寄る
ネロ「う~ん、そのクオリティーでここまで来たのですか?」
ネロが少し困った顔をしながら瑠花を見る
瑠花「まさか、ダメ?」
ネロ「いいえ、この試練は別に一人の力で達成しないといけないというものではないので、まったく問題ありません、ですが、今のその瑠花様の状況を見ると、私の試練を超えることが出来るのか心配でして・・・」
ネロはそう言うと、水の中とは思えないようなスピードで勢いよく瑠花に近づく」
瑠花(は・・・早い・・・!?)
瑠花は昔からネロの事は知っていた、月花の傍に居て、常に九騎神使の温厚なお姉さんという印象、そして争いを嫌い、誰かが怪我したりすると笑顔で優しく治してくれる、そんな存在だった。
だが今瑠花に近づいてきたネロはそんな今までの思い出を疑わせるような威圧感があった。
琴理「凄いプレッシャー、あのネロさんが・・・」
琴理(確かネロさんの九騎神使内序列は4位、アイレちゃんは7位、リアは5位、テラは9位、今までは九騎神使でも下半分の順位、ネロさんは間違いなく九騎神使の中でも上位の実力者なんだ・・・しかもネロさんが一番得意とする水中で・・・)
この状態はつまり、ネロの得意とする環境、逆に瑠花は最近やっと泳ぎを覚えた程度、圧倒的に不利なのである
琴理(くそ!まただ!戦闘のことまで踏まえるとアトリーがやっていたオーラ噴出型の移動方法を教えるべきだった!)
琴理が瑠花に教えたのはあくまで『水中での移動方法』であり、『水中での戦闘方法』ではなかった。なぜ教えなかったか?
それは今回の瑠花はまだその状態まで出来ていなかったからだ、
いつもは瑠花が完全に星を攻略できるまで仕上げてから攻略に入る、
だが今回はあまりにも時間が掛かり過ぎるためにその工程を無視して、ただ【移動出来るだけ】の状態でここまで来てしまったのだ。
瑠花(うん、はっきり言える、この勝負・・・絶対に勝てない・・・しかも無抵抗のままやられる)
瑠花は今まで万全の状態で戦ってきた、本来もしっかり長い時間を掛けて瑠花を仕上げ、万全の状態でネロに挑むはずだった。だがそうではない、それは瑠花達が結果を焦った故に起きたミス。
ネロ「さて、ここで今から戦いますけど準備はいいですか?」
ネロからはそんな2人に見向きもせずにただ瑠花に戦意を見せる
するとアトリーが今度は水ごと除外した空間を作る。
アトリー「とりあえず今の状況は正々堂々じゃないね、悪いけど私は瑠花姉様のアシストをするよ、別に戦闘に参加しているわけじゃないし、問題ないでしょ?」
アトリーは何食わぬ顔でネロに言い放つ
琴理「馬鹿!やめなさい!それも手助けになるのよ!」
アトリー「琴理も何言ってるの?関係ないよ、別にルールは瑠花姉様と九騎神使が1対1で戦う、これは別に私が戦いに加わってるわけじゃないし、問題ないよ」
アトリーはどや顔で琴理に言い放つ、ネロはアトリーの手助けを見過ごさずに対処する
ネロ【吸収支配 アンチオーラドレイン】
ネロがアトリーのオーラ壁に触れると同時にアトリーのオーラ壁がどんどんネロに吸収されていった
ネロ「別に問題はありません、ですが私個人としては許容できませんね」
アトリー「うう!せっかく私が張ったオーラ壁を!!」
アトリーのオーラ壁がネロの手によって薄くなっていっているのがわかった
瑠花「・・・」
瑠花(どうする・・・今この状態で・・・でもネロさんはこの状況は問題ないって言った・・・なら私はアトリーちゃんが作ってくれたこの状況を守りながらネロさんと戦わないといけないよね!!)
瑠花は悩み、そしてネロが自分の『水中での戦うという状況』を得るためにアトリーのオーラ壁を壊しているように瑠花はアトリーのオーラ壁によって得ている『自分の有利な状況』を守る必要があると考え、ネロの元に向かい攻撃を仕掛ける!
瑠花「やああああ!!」
瑠花は足に膨大なオーラを溜め、ネロに向かって飛び蹴りをぶつける!!だがそれに気付いたネロはオーラを吸収している手を離し、瑠花から距離を取る
ネロ「あら、いきなりやる気になったわね」
瑠花「別にこの状況が問題ないなら、わざわざ自分の不利な状況を作る必要はないからね、私はこの状態でネロさんを倒すよ」
瑠花はそういうと身体全体にオーラを纏い、臨戦態勢に入る
ネロ「軽いオーラね、この水圧に耐えて来たならもっと力強いオーラになっていたでしょうに、いいです、なら私も心を鬼にして、迎え撃ちましょう」
ネロも体全体にオーラを纏う、だがネロの纏うオーラはどこか神秘的であり、今までのオーラとは明らかに違っていた
琴理「ネロさんのオーラは種族的な物よ!そのオーラがある限りネロさんはダメージを受けないわ!」
琴理が瑠花にアドバイスを送る。
ネロの種族は【聖天守護天神】
パトの第九専属神ラルの種族と同じ種族であり
主に【癒し】【守護】【恩恵】【加護】に特化した種族で、守護系最強の種族である。
故にネロにダメージを与えるという行為自体が非常に難しいのだ。
琴理(瑠花がネロさんを倒すためには守護や恩恵、加護を全て貫いて一撃で仕留める、それが出来なければ全て回復されてしまう、でもこの種族は守備力も桁外れに高い、故に倒すことが『ほぼ不可能』というレベルの種族・・・瑠花・・・)
瑠花はその情報は既に知っていたため、ネロに的確に攻撃を仕掛けるが、ネロの分厚い守備を突破できずにいた
瑠花(流石ネロさん、分厚い、全然攻撃を入れることが出来ない・・・中途半端な攻撃をしてるとこっちがガス欠で倒れてしまう・・・)
アトリーは瑠花とネロの戦いを見ながら近くに居た琴理に話しかける
アトリー「瑠花姉様、変化支配で【気体化攻撃】しないのかな?あれかなり強い攻撃だと思うんだけど」
琴理「そうね、確かアトリーはその技にイメージの世界でやられたのよね、正直その通りよ、でも瑠花自身が思いつかない限り意味がないの、何故なら私達から瑠花の能力の詳細を教えることが出来ないからね」
アトリーは瑠花の試練の状況を再度思い出し、少しもどかしい気持ちになる
アトリー「砂漠の時もそうだったけど、本来の瑠花姉様だったらあそこまで苦戦しないのに・・・勿体ないよね」
琴理「それが試練だからね、それで一番苦労してるのは瑠花本人よ、私達はただ見てるだけなんだから」
琴理は瑠花とネロの戦闘を見ながら少し寂しそうな顔をする
琴理「それに今回もだけど、私は毎度毎度抜けてる、今回はアトリーが無理に結界を張ってくれたからこうやって勝負になったけど、もし、あのまま水の中での戦闘になってたら100%瑠花は負けてた、むしろ無抵抗のまま負けてたと言ってもいい、そしてそのまま死んでたかもしれない・・・」
琴理は顔をしかめ、自分の毎度の浅はか差に後悔する。
アトリー「それは何度も失敗して理解していくしかないんじゃないの?私だって優秀だけど、絶対にミスをしないわけじゃないし、だから瑠花姉様だって笑って許してくれるんだろうし」
アトリーは琴理に話す、そして琴理はアトリーの言葉を聞き、「そうね」と一言アトリーに言う
ネロ「どうしました?私はまだまだ戦えますよ?」
瑠花「流石ネロさん、ここまで涼しい顔されたら私でもちょっと心が動揺しちゃうよ」
瑠花(他の三人は私が攻撃を仕掛ける度にそれなりの表情の変化やアクションがあった、でもネロさんにはそれがない、むしろそこまで持っていけてない・・・)
瑠花は表では【まだ元気だ】と言わんばかりの笑みを浮かべながらネロと戦っているが内心は早くも疲労が出てきていた。
瑠花(そもそも私はここに来る間に結構体力を使ってる、体力なんか全然ない私がここまで来るのにも結構余裕ないのに、まだここでネロさんと戦わないといけない、正直、過去一番最悪のシチュエーションかも!!)
瑠花は状況と自身の状態の過酷な状況から焦りが生まれる
瑠花「さて・・・どうしようか」




