第1章39話「琴理の疑問」
琴理はメリアの戦闘の一部始終を見ていた。
琴理「す・・・すごい・・・ここまで力の差があるの・・・」
琴理は自分達の世界の王、メリア・メルトリアに強い憧れと、強い恐怖が植え付けられた。
メリアはバルを消滅させた後、少しの間高台の所から町の状況を確認し、間違いなく町中を覆っていたERRORが増えずに切れていく様子を確認した。
専攻部隊の神々もメリアの突如の登場から、一瞬とも呼べる戦闘の終焉を目の当たりにし、
「この人だけは絶対に逆らってはいけない」と強い忠誠、恐怖を植え付けることになった。
町の様子に満足したメリアは最初に専攻部隊員に話した。
メリア「怪我をした子は今すぐ私の所に来なさい、今から治療します。」
メリアがそういうと、専攻部隊の神々は一瞬でメリアの元に集まる、それはメリアに自分達の都合で1秒、コンマという刹那の時間すら与えるわけにはいかないという強い思いからだった。
メリアは少し困ったような顔をして
メリア「怪我してるのですから無茶はしないで、私は皆が大事なんです、皆が居るから帝国が支えられているの、貴女達は駒ではない、大事な家族よ」
メリアは専攻部隊の神々に先ほどとはまた程遠い優しさに溢れた美しい笑顔を見せ話す
メリア「無事でよかったです。まあ、さっきの戦闘を見て怖がるなっていうのは無理な相談ですけど、安心して、私は貴女達を守る存在、決して刃を向けないわ」
メリアのその発言でさっきまで恐怖心があった専攻部隊の神々から恐怖心が消えた。
そして全員が共通して思った。
「「この人が帝王神で良かった」」と。
メリアは怪我をした専攻部隊の治療を終わらせると次は琴理の元に足を運んだ。
メリア「体調はどうですか?一番重症でしたからね」
琴理「問題ありません、メリア様の治療は本当に素晴らしい、その一言に尽きます」
メリア「ありがとう、これで問題は解決かしらね」
琴理「あの・・・一つ聞いてもよろしいですか?」
メリア「何かしら?」
琴理「なんであのタイミングでこの場所に来てくださったのですか?瑠花やリリアがあの男と戦ってるならともかく、私は帝王神候補ではないから、メリア様の試練も受けていない、本来の力のままでした。今回私が負けたのは、私の日頃の行いです、なのになんで私の所に来てくださったのですか?」
琴理はメリアに疑問をぶつける、メリアはその疑問に対して笑顔を崩さずに話す。
メリア「見ていたからですよ」
メリアはそっと一言話す。
メリア「私はずっと瑠花やリリア、他の帝王神候補の子達の様子を見ていました、それで私は特にリリアと瑠花を見ていたの、リリアは帝王神候補の中で一番力があり、逆に瑠花は帝王神候補の中で一番力が無かった、この両極端な二人をずっと見ていたの。」
琴理「だからメリア様はこのタイミングでこの場に来れたと」
メリア「ええ、でも本当は来る気はなかったんです。これも試練、困難をその場の状況と共に乗り越える力を身に着けてほしかったから。」
メリアはそう話すと上を見て、
メリア「私は帝王神、言え、母親として失格ですね、娘達が可愛すぎた。娘たちは今回凄く頑張ったと思います、おそらく今出せる全力だと私は判断した、だからどうしようもないその先の結果は私が受け持とうと思って、ここまで来てしまいました。」
琴理はメリアの今回の行動は理由があったわけではなく、ただ一人の母親として来てしまった。
帝王神の役割とは関係なく来て、守った、それだけの現実に笑いそうになった。
琴理「メリア様は可愛すぎますよ」
メリア「もう、やめてください、恥ずかしい」
メリアは顔を赤くして笑う、琴理は本当にこのメリアという人物は美しく、可愛く、だが残忍で冷徹で、しっかりしていて、理想の女性、そのものだなっと強く思った。
琴理「あの、この場で聞く内容ではないのは重々承知なのですが教えていただいても良いですか?」
メリア「いいわよ、私が答えられる内容であれば」
琴理「何故私を瑠花の護衛任務に選んだのですか?」
琴理はずっと疑問だったことをメリアに聞いた。
メリア「それはですね、貴女が必ず瑠花を導いてくれる、そう思ったからです。」
メリアは琴理に対して真っ直ぐに答える。嘘偽りのない答えだと琴理は確信し次の質問をする。
琴理「何故、私は帝王神候補に選ばれなかったのですか?」
おそらく琴理が一番聞きたかった内容、それをこの場でメリアに聞く。
メリア「琴理、貴女の才能は帝王神という座ではない、確かにポテンシャルは貴女の妹さんより上です。ですが、貴女の才能は帝王神ではない、だから私は貴女を帝王神候補から外しました。」
琴理はメリアの発言に納得できずに再度聞く
琴理「才能?才能とは何ですか!私は!帝王神に向いていないってことですか!?」
琴理はメリアに駆け寄る。メリアの判断が理解できないと言わんばかりに。
メリア「ええ、向いていない、貴女が向いているのは誰かを支える側、そちらに帝王神という席より強い才能と魅力を私は感じた。」
メリアは琴理に言う、そして
メリア「決して頂点に立つだけがゴールではないのですよ、適材適所、人が一番輝く場があって、そこで最高の結果を出せるの、琴理、貴女の才能は上に立つことじゃない、誰かを支え、助け、そして尽くすことで貴女は輝く、だから貴女が一番信頼と愛情を寄せている瑠花の元に行かせたの。」
メリアは琴理の肩に手を置き、琴理にこの先に道を作る
メリア「月詠琴理、貴女は専属神になりなさい、私も貴女の母親も天帝神王、つまり貴女や瑠花、リリアの父親であるパトの専属神、私はあの方に尽くす事で他の誰よりも強くなり、今に至ります。強さの形はそれぞれなんです。琴理、貴女は瑠花の専属神になり、今後も瑠花に尽くし、守り、支えてあげてほしい、これは命令じゃないわ、一人の義理の母親のちょっとした我儘、専属神は一度契約したら生涯を契約した主に尽くさないといけない、神界では一番重たい契約です。だけど、間違いなく繋がりを持ち続けることが出来る、それが約束された契約です。」
メリアは琴理に瑠花の【専属神】という道を作り、そこで己を磨き強くなってほしい、そういう願いを琴理に託す。
琴理はメリアのその言葉、考え、意図、道しるべを知り、自身の存在意義はそこにあると理解し、メリアに笑顔を向ける
琴理「任せてください、私、月詠琴理今後瑠花に忠誠を誓い、これから先、一生あの子を守ることを約束します!!」
琴理は満面の笑みをメリアに見せ強く答えた、琴理はメリアの言葉に納得したのだ。
琴理は確かに瑠花に尽くしていたこのひと時が最高に幸せだった、もし琴理が帝王神候補なら出来なかった。一番やりたかったことが出来なかった。だからこそ琴理は自身の求める理想は帝王神候補ではなく瑠花の専属神なんだと納得したのだ。
メリア「ありがとう、それでは今後もよろしくね、どうせ隠しても無駄だけど、私は帝国に戻るわ、二人や皆によろしくと伝えておいて」
琴理「はい!ありがとうございました!!」
メリアは琴理や専攻部隊の神々に見送られながら帝国に戻った。
琴理(ありがとうございます!メリア様、貴女のおかげでやっと自分のやりたかったこと、自分が歩みたかった道に惜しみなく進めます!!)
琴理はメリアの配慮に感謝し、町でまだ戦っている仲間達の元に専攻部隊の神々と共に向かった。




