混戦のフレイガース、舞い降りた銀閃(3)
25万PV!? ⋯⋯嬉しいです(´;ω;`)
ありがとうございます┏〇゛
やっとアイセアさんが離れてくれました。それを見て落ち着いたのか、ビビの操る蝙蝠も大人しく頭上を旋回しているよ。
僕は巨大なライフルになったドラシーを、蜘蛛の巣ドームの残り半分へ向ける。
威力は申し分ないと思うんだけど⋯⋯問題は街に出るかもしれない被害だよね。
銃口の先から伸びる三本の骸骨のような指が開き、バチバチと黒い雷を纏いながら巨大なマグマ球を形成していく。
今回は少し威力の出し方を工夫するつもりだった。蜘蛛の巣が燃えて街に落ちると大変なので、街に落ちる前に燃え尽きるようにしたい。
ドラシー、出来るかな?
『⋯⋯!!』
ドラシーが気合いを入れたのがわかった。それと同時に、持っていかれる魔力も増えちゃったんだけどね。
「アーク。何それ⋯⋯凄い魔力だよ」
「アイセアさんは危ないから離れててね⋯⋯今の僕は無防備だから、敵が来たら守ってくれると嬉しいです」
「りょーかい! アークは私に任せなさい」
「私にもアークを守れる!」
「ぴーぴー五月蝿いのよ。魔物と人間が一緒になれるわけがないでしょうが!」
「そんな⋯⋯⋯⋯」
ふふ。アイセアさんって、何だかちょっと可愛いなぁ。仕事オフのミラさんと気が合いそうだと思う。なんかちょっと雰囲気が似てるんだ⋯⋯
少し懐かしくなっちゃったな⋯⋯でもビビを怒らせないで? ビビは僕の大事な⋯⋯大事な? 友達? なんか違う⋯⋯家族みたいな感じなんだから。
マグマ球はどんどんと大きくなる。普段なら赤黒い見た目なのに、青白い炎へと変化した⋯⋯
凄く熱い⋯⋯流石はドラシー。僕の頼れる相棒だよ。
そのマグマの塊は、一メートル、二メートルと、どんどん大きさを増していった。もう少し上空へ上がらないと、民家を燃やしてしまいそう⋯⋯
いつもより反動がキツイかもしれないね⋯⋯ドラシーもA級魔剣になったから、その分威力も強くなってるとは思うんだよ。
僕は魔気融合身体強化をレベル3へあげる。頭髪が銀色へと変わり、瞳も青紫色に変わっている筈だ。何で色が変わっちゃうんだろうね⋯⋯僕に詳しい人がいたら、髪や目の色で魔気融合身体強化のレベルがバレちゃうよ。
力を溜めているだけなのに、ドラシーから伝わってくる振動が凄い。
無理をしているのかな? でも、それもここまでみたいだ。
マグマ球は直径十メートルを超えて、有り得ないような熱量を放っている。
いくよドラシー。準備は良い?
『♪』
一度深呼吸してから、肩でドラシーを構えた。狙いをしっかりと蜘蛛の巣へ定め、テンペストウィングを大きく広げる。
「“黒溶岩砲”!!」
トリガーを引くと、マグマ球がハンマーで弾かれたように飛び出していく。
限界まで踏ん張ろうとしたけど、やっぱり体が後ろへ飛ばされてしまった。
肩が痛──
──ポフン。
何か柔らかい物にぶつかったと思ったら、後ろに待機していたアイセアさんが僕を受け止めてくれたらしい。
「ありがとうございます」
「この国のために戦ってくれてるんだもん。何でもしてあげるよ」
アイセアさんがそう言いながら、人差し指を立ててウインクしてきた。その指に向かって、ビビの操る蝙蝠が牙を──
──グサッ⋯⋯
「痛い! 痛たたた! っ──」
何をやっているんだか⋯⋯まったく⋯⋯
──ドゴアァァァァアアア!!
「ッ!!」
圧倒的な眩い光が解き放たれた。黒溶岩砲が空を覆う蜘蛛の巣を焼き尽くしていく。それを見たアイセアさんが、目が飛び出す程に驚愕していた。
きっと上手くやれたと思うよ。一気に巨大な巣も消し飛ばせた。街にも殆ど被害もないし、巣にいたヘイズスパイダーもかなり倒せたと思う。後はあの大きいやつだね。
悠然と構える大きなヘイズスパイダーの複眼が、全て僕へ注がれているのがわかった。
きっとあいつが司令塔なんだ。何もしていないように見えるけど、あいつの周りにはヘイズスパイダーが集まっているもんね。
自分を守るように指示を出しているのかもしれない。それに、存在感が桁違いなんだよね⋯⋯今のうちに何とか出来れば、後は烏合の衆となるかも。
でも、きっとあれは強い⋯⋯それに、まだ人型もいるかも?
剣に戻ったドラシーを片手で構え、額の汗を袖で拭った。
*
side オンミール
あれだけ外が騒がしいのに、まだ王が動いていない? どういう事だ⋯⋯理由がわからない。
イフリート様は何をしているのだ? あの子供が来なければ、自分もアイセアも危ないところだった⋯⋯
私は城の外側から空を飛び、謁見の間にあるベランダから中へ勢い良く飛び込んだ。
玉座へ背後から行く形になってしまうけど、この際礼儀だなんだと言ってられない。
「イフリート様ー!! イフリート様ー!!」
玉座の前へ周り込むと、その椅子はもぬけの殻だった。
何が起こっている!? こんな緊急時にイフリート様が居ないなど有り得ない!
民を蔑ろにするような御方ではないのだ。イフリート様はいつも精霊達を大事にしてくれる。
ここじゃないとすれば、いったい何処に行ったと言うのだ⋯⋯
「ま、まさか⋯⋯」
食われたとでも言うのだろうか? いや違う! それこそ有り得ない。イフリート様は精霊の王の一人なんだ。その身の内に溢れる力は、神の次に強大なのだと言われている。
急いで謁見の間から廊下へ飛び出した。すると、目の前を水の精霊が横切って行く。
「おい!」
「ッ!!! オンミール様!」
焦りからか、少し乱暴に呼び止めてしまった。だが私は止まれない⋯⋯その勢いのまま、一気に距離を詰めていく。
「イフリート様は何処におられる!? 街が緊急事態なのだ!」
「い、イフリート様は通信の間です。勿論この国が攻められている事はご存知です」
そ、そうか⋯⋯それなら良かった⋯⋯が、では何故イフリート様は通信の間へ?
「今は急いで蜘蛛を殲滅出来る部隊を組織なさっております! オンミール様も急ぎ通信の間へ向かって下さい。陛下がお待ちです」
「通信の間へ? わかった! すまんな」
私は素早く飛び立つと、城の壁に焦げ目がつくのも構わない勢いでスピードを上げた。周りの装飾を駄目にしてしまうが、緊急事態だから仕方ないだろう。
大きな螺旋階段を滑るように下りて、地下通路の最奥を目指した。なりふり構わず飛んでいったので、通信の間へは直ぐに到着する。
「オンミール! 只今参上致しました!」
「入れ!」
イフリート様のくぐもった声が聞こえてくる。中へ入ると、三メートルを超える悪魔のような見た目の大男が立っていた。
難しい顔をするイフリート様⋯⋯私は直ぐに目の前で傅き、許しがあるまで待機をする。本来ならばだ。
直ぐさま頭をはね上げて、イフリート様の顔を見た。
「イフリート様。街が大変なので──」
「わかっている。向こうを見ろ」
通信の間の中央には、巨大な水晶球が浮かび上がっている。そこから光が伸び、三つの大きなスクリーンを映し出していた。
私は息を呑んだ。その画面の向こう側には、シルフ様、ウンディーネ様、ノーム様がいたのだから。
「これはどういう──」
「少々待て」
「ハッ!」
事態は思ったよりも深刻なのかもしれない。通信の間を使っているとはいえ、精霊四大国の王が顔を合わせているのだから。
緊張感からか、生唾をゴクリと飲み込んだ。
「現状は何処も悪そうだな⋯⋯やはりノームの所は」
『ああ、特にうちは地下都市じゃからのう⋯⋯まいったのう⋯⋯これじゃあ外に出れんわい』
ノーム様がそう言いながら頭を抱えていた。それって⋯⋯もしかして⋯⋯
『俺っちのとこも駄目さぁ。あいつら地上から糸を飛ばしてきて、どんどんこの浮遊都市に上がってくる。何なの? ねえ何なのあの蜘蛛!? 本当に面倒⋯⋯やんなるよね!』
緑色の豪華な衣を纏う青年。シルフ様がイライラしながらテーブルを叩く。
『うちの所もいきなりやったわ。えらい困っとる⋯⋯もう精霊界全て水に沈めてええか?』
「『『駄目だ(さ)(じゃ)』』」
ウンディーネ様はほんわかしているのに、四大精霊王の中では一番考え方が過激だ。薄い水色のベールを纏ってはいるが、ほぼ裸同然な格好をしている。
ノーム様は堅実な考え方をするけれど、欲望任せに動く事もしばしば⋯⋯伝説級の武器や防具に目が無く、人間の世界へ出掛ける事もあったとか。
シルフ様は結構適当だったりする。性格は良さそうだが気分屋で、優しかったり短気だったりとその日で違う。それに少し残酷な一面もあったりする。
うちのイフリート様は真面目な性格だけど、興味があるものには燃え上がる。
それぞれ個性的な王様達だった。強力な力も持っているけれど、強力過ぎて使い勝手が悪い。
「皆手一杯のようだな⋯⋯オンミール。外の状況はどうだ?」
「はい。その事なのですが⋯⋯実は⋯⋯」
ビビが暴走中です。年齢不詳ですが、ウブなので許してやって下さい(っ ॑꒳ ॑c)
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