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混戦のフレイガース、舞い降りた銀閃(2)

 ('°◻︎°` ; )ぁゎゎ!!


 予定投稿のミス( ̄▽ ̄;)

 慌てて解除!!






 大きなヘイズスパイダーの群れに、僕は弾かれたようなスピードで襲いかかった。

 最初からドラシーの魔気融合増幅スキルを使い、レベル3の状態で突撃する。

 迫る僕を迎撃しようと、毛糸玉のような糸の塊を吐き出してきた。


 出し惜しみしている場合でもないね。魔装“ベヒモス”を起動させると、地面を蹴って“加歩”スキルを発動した。


 まずはヘイズスパイダーの機動力を奪うだけで良い。それだけで助かる精霊さんが沢山いる筈だよ。


 緩急をつけて、加歩スキルをアシストに使う。分身しているかのように見せながら、ヘイズスパイダーの遠距離攻撃を(ことごと)く避けて距離を詰める。


 集中力を高めると、視界がセピア色に染まった。加速する思考と分割、並列思考スキルを組み合わせ、回避をしながらドラシーで攻撃を薙ぎ払った。


 ヘイズスパイダーは三メートル以上になると、体の硬度が段違いだった。振られる大鎌のような腕を低空で躱し、すれ違いざまに脚を数本斬り落とす。


「シッ!」


 ──ドザシュッ! ザザンッ!


 宙を舞う白く太い脚。鮮血が飛び散るのも確認せずに、僕は次のターゲットへ向けて走り出す。

 一体二体三体と、巨体の隙間を走り抜けながら斬り裂いていった。


 そして僕が辿り着いた場所には、震えて目を閉じている精霊さんがいる。


 はぁ。間に合って良かった。


「助けに来たよ。大丈夫だった?」


「⋯⋯に、人間さん? うん⋯⋯ありがとう」


 蜘蛛の糸に絡め取られ、身動きがとれないかったら怖いよね。小さな女の子で、頭にピンク色の花を咲かせていた。シスターさんみたいな修道服を着ているよ。


 精霊さんって、思ってたより沢山種類が分かれているんだね。この子は花の精霊さんなのかな?


 ドラシーで慎重に糸を切る。きっとこれで逃げれる筈だ。


「一人で大丈夫?」


「うん! 大丈夫! バッチリ全開! これでも私、蜘蛛以外には捕まった事ないの!」


「その蜘蛛が、今まさに沢山いる⋯⋯んだけど⋯⋯」


 と、言い切る前に、その子は風のように走り出した。


 ⋯⋯うん。きっと大丈夫だね⋯⋯ヘイズスパイダーの少ない方へ走って行ったみたい。


 テンペストウィングを羽ばたかせて、アイセアさんのいる上空へと戻る。


 ──カッ! ズガアァン⋯⋯


 アイセアさんはヘイズスパイダーを狩りながら、仲間の救助を頑張っていたみたい。


 さっきは話の途中だったから、急に飛び出して悪い事しちゃったな。


「ただいまです」


「あ、おかえり」


 アイセアさんから仮契約をしたいと言われてたんだよね。


 でもそれってどういう事なのかな? 精霊さんだから、ビビとのテイムとは話が違うと思うんだ。長く時間がかかるようなら、今忙しいから後にして欲しいんだけど⋯⋯


「アイセアさん。その契約ってするとどうなるの?」


 ビビが空で頑張ってくれているから、新しく街へ入ってくるヘイズスパイダーは少ない。


 それでも魔力には限界があるんだよね⋯⋯この四方から攻められ続ける状況を(くつがえ)せるのならば、その契約ってのをやっても構わないと思うんだ。


 僕はテンペストウィングを広げて、一旦空中に静止する。アイセアさんと見つめ合いながら、意識は周囲の警戒をしていた。


「契約って言っても、まずは仮契約になるわ。私が見る限り、アークは精霊と相性が良さそうな気がするの。そんな風に思ったのは初めてなんだぁ。アークは不思議な子供ね」


 アイセアさんは自分の頬に人差し指を置いた。その仕草はどこか優雅で気品がある。ドレスのような服を着ているせいか、貴族やお姫様のようにも見えるんだ。


 精霊さんとの相性? 僕は普通だと思うんだけど、自分じゃ不思議って言われてもわからないよ。僕も今帯電してるから、アイセアさんとは帯電仲間だと思う。


「その仮契約です⋯⋯? 僕はどうすれば良いですか?」


「ちょっと手を出してくれる?」


「はい」


 右手にドラシーを持っていたので、左手をアイセアさんに差し出した。アイセアさんは僕のその手を両手で掴むと、自分の胸に押し当てて目を閉じる。


 何をするんだろう? 僕の魔気融合身体強化が、アイセアさんの何かに反応を示していた。


 これが仮の契約儀式みたいなものなのかな⋯⋯何をしているのかわからないから、とりあえず任せるしかないね。


 気配拡大感知スキルを使いながら、アイセアさんのその儀式を見ていたんだけど、僕達はいきなり何かに弾かれた。


 ──バチィン!


「ッ!」


「え? う⋯⋯そ⋯⋯」


「だ、大丈夫ですか?」


 アイセアさんが信じられないと言うような顔で見詰めてくる。


 何がどうなってるの? 仮契約失敗ってやつ? 僕に何か落ち度があったのかも⋯⋯


 とりあえずもう一度減らしとこうかな⋯⋯むむむ。


「“ホーミングレーザー”!」


 ──ズドドドドドドドドドーン⋯⋯


 スキルを空へ向けて放ち、また沢山のヘイズスパイダーを貫いた。フォレストガバリティウスのこのスキルは、大勢と戦うのに必須な技になっちゃったね。

 ありがとうございます!


「嘘よ⋯⋯これでも私は上位精霊なのに⋯⋯アークの魔力が受け止められなかったわ。どうなってるの?」


「そう言われましても⋯⋯僕にはわからないです」


 僕は魔力量が多い。魔法を沢山覚えた事で、魔法使い系の称号を持っているから。でも、もっと上位の称号もあるから、飛び抜けて多い訳じゃないと思うんだ。


「うぅ⋯⋯」


「!」


 アイセアさんが急にバランスを崩した。さっきの契約が上手く出来なかった影響? 急いでアイセアさんの脇の下に左腕を入れて、正面から落ちないように支えてあげた。


「大丈夫ですか?」


「ええ、ごめんなさい。ちょっと精霊としての力を使い過ぎたみたい」


「ポーション飲めます?」


「人間のポーションは意味が無いの。ありがとう」


 顔色も良くないと思う。精霊の力の(みなもと)は、自然と外から取り入れられる何かだと思っているんだ。自分が精霊の体になった時に感じた答えなんだけど、実際のところ良くわかってないんだよね。


 僕はまだ慣れてない“精霊体転化”じゃ魔物と戦う事が出来ない。可能性は感じるんだけど、試行錯誤するのは雑木林に行ってからにしようと思ってたんだ。


 それと同じ理由で、イグラムで倒したCランクの魔物も、収納に入ったままになっている。


「少し落ち着いたわ」


 アイセアさんが僕の背中に両腕を回した。何かと思ったら、ただ抱き着いただけみたい。


「ねえ、アークはさっきから私に触ってるけど、ビリビリしないの?」


「??? ビリビリしませんよ?」


「そう⋯⋯ふふふ」


 何だかわからないけど、アイセアさんがとても嬉しそうな顔をした。まだ戦闘中なので、その顔が見れたのは一瞬だけだったけどね。


 小さな精霊さんがこちらに向かって飛んでくる。なんだろうと思って見てみると、その精霊さんはアイセアさんの頭の上に飛び乗ってくる。


 見た目は小さなドラゴンだ。アイセアさんと同じように、体に雷を纏ってるみたい。


「ぴー、ぴっぴー! ぴー!」


「ん。わかった。無理しちゃ駄目だよ」


「ぴぴ!」


 何か会話をしたみたい。触ってみたいけど、アイセアさんとドラシーで両手が塞がっちゃってるんだ。

 小さなドラゴンは、チラリと僕の顔を見て直ぐに飛び立ってしまう。残念だけど、また今度触らせてもらおうかな。


「今何を話していたの?」


「下位の小精霊の避難がだいたい済んだみたい。戦える精霊が反撃を開始するって」


 その言葉を聞いたのと同時に、街のあちこちから爆発音が聞こえてくる。精霊さんは魔力を使ってないみたいで、魔法発動の気配がわかりずらい。


 でもそれなら僕は大きなヘイズスパイダーに集中出来そうだ。


「良かった。じゃあ僕は大きいのを倒すね」


「大丈夫? 凄く強そうよ⋯⋯アレ」


 僕の見詰める先にいるのは、この蜘蛛部隊のリーダーっぽいやつだった。


 体長が二十メートルはあるね⋯⋯きっと強いとは思うけど、アレが動き出したら折角反撃に出た精霊さん達がやられちゃいそうだ。


「君、かっこいいね」


「え? えへへ。ありがとう」


 急に褒められちゃった。うん、頑張らないと!


 また何か小さいのが飛んでくる。今度は何だろうかと見てみると、赤黒い蝙蝠(こうもり)の姿だった。


 魔力を感じるから、ビビの魔法だとは思うんだけど。


 その蝙蝠は僕の頭の上で旋回を始める。


「こら! 精霊! アークから早く離れろ!」


「え? 何この生き物?」

「僕の仲間のビビだよ。上で戦ってるんだ。ほら、向こう見てみて」

「⋯⋯ふーん」


 アイセアさんがビビに顔を向けた。そして目を細めた後に、ビビに向かってアッカンベーってする。


 ちょっとびっくりしました。ビビに喧嘩を売る人がいるなんて⋯⋯人じゃないけど⋯⋯


「おう、上等だ。後で覚えてろよクソ精霊⋯⋯」


「しーらない。何かと思えば吸血鬼じゃない。べーっだ」


「喧嘩しちゃ駄目⋯⋯」


 アイセアさんから離れようと思ったんだけど、背中に回された腕に力が入っている。


 こんな時に困ったな。仲良くして欲しいのに⋯⋯


 僕はドラシーに魔力を集中させた。一気に臨界点に達したドラシーが、僕の意を汲んで変形を始める。


「何? それ」


「ドラシー。僕の相棒だよ」


 剣から長大なライフルへと姿を変える。その見た目は禍々しく、不吉を孕んだかのように真っ黒だ。


 狙うのは蜘蛛の巣の残り半分。あれをどうにかすれば、精霊さん達がもっと有利に戦えると思う。


「離れて、衝撃が凄いんだ」


「もう⋯⋯わかった」

「早く離れるんだな。年増精霊」

「ぐぅ⋯⋯そう言うあんたは何歳なの!?」


 あ〜!! もー喧嘩しないで〜!






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