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囚われた街






 父様、母様、お元気ですか? 僕はマグマの大地の上空で、大きな猫を抱きながら浮遊しております。猫なのにトラさんですー。可愛い大きな三毛猫なんですよ?




*☆*☆*☆*☆*☆*☆*




 大変だ⋯⋯大きな街がヘイズスパイダーに攻撃されてる!


「ビビ! トラさん!」


「ああ、わかってる。早く行くぞ」

「にゃにゃ! あれは火の国フレイガースにゃ! イフリート様の治める国なんだにゃ。大変なのは水の国だけじゃなかったのにゃ!?」


 ヘイズスパイダーっていったいどれくらいいるの? トラさんの国を大軍で襲って、別の国にまで襲いかかるなんて⋯⋯僕が考えていたよりもずっと深刻な状況みたいだ。


 どうにかしなくちゃいけないよね。トラさんの国も心配だけど、目の前で襲われている精霊さん達がいるなら話は別だよ。


 だから、


「トラさんごめんなさい⋯⋯ちょっと寄り道になるみたい」


「わかってるにゃ⋯⋯でも大丈夫かにゃ? あんなに蜘蛛が沢山いるにゃんて、冒険者ってやつでも危にゃいんじゃにゃいのかにゃ? 寄り道は構わにゃいんだけど、アークが食べられたりしないかにゃ?」


「ふんっ。私達は普通じゃないから大丈夫だ。とりあえず城の近くまで向かうぞ。こんな遠くからでは状況がわからないからな」


 グッと背中に力を入れて、ビビが先に飛び出して行く。僕はトラさんを抱え直し、ビビの小さくなる背中を追いかけた。


 本気で飛ぶビビはとっても速い⋯⋯僕はトラさんを抱いてるから、あまりスピードが出せずにどんどん離される。

 あ、トラさんの顔が風圧で凄いことになってるね⋯⋯瞼が捲れて口がぶわぁってなってるよ。スピードは緩めないけど。


 全部でヘイズスパイダーは何匹くらいいる? わからない⋯⋯少し他の魔物も混じっているみたいだ。


 土煙を上げるヘイズスパイダーは、大小様々な大きさだった。それが大挙して押し寄せていて、まるで砂糖に群がる蟻みたいに見える。


 蜘蛛なのに足が速いね⋯⋯アルフラじゃわからなかったけど、かなり体のスペックが高いみたいだ。


「恐ろしい魔物だにゃ⋯⋯」


 トラさんが小声で呟いた。襲われたばかりなら、ヘイズスパイダーを見るのは怖いかもしれない。


「無理しなくて良いんだよ?」


「無理なんかしてないにゃ」


 そう言うトラさんの体が震えている。


 こんな大規模な大軍見たことないよ? イグラムを襲っていた魔物の数の何倍いるのかな? 考えるのは後で良いや。精霊さん達が危ない⋯⋯


 精霊界の空は薄い青紫色をしている。朝とも夜とも思える不思議な色の空だった。

 地面も普通じゃない場所が沢山見える。溶岩溜りの直ぐ横に雪景色が広がっていたり、大きな氷塊が空を漂ったりしていた。


 人の住む世界とは色々と勝手が違うみたい。気をつけて飛ばないと、空で大岩と激突とかありそうだね。


 そうこう考えているうちに、フレイガースの上空に辿り着いた。酷い状態だな⋯⋯あれは⋯⋯


「ビビは──」


「戦うのは街の外が良い。私の技は大雑把だから」


 流石はビビだね。僕が何を聞こうとしたのかわかっているんだよ。


「そうだね。僕は街中のヘイズスパイダーを狩るよ⋯⋯結構強そうだ」


「オイラはどうしたら良いにゃ?」


 トラさんか⋯⋯んー⋯⋯


「ちょっと背中に張り付いててくれる?」


「にゃぁぁあ。完全にお荷物だにゃぁ」


「トラさんが何を出来るかわからなくてさ、何か凄い戦う手段とかあるの?」


「⋯⋯戦った経験にゃんてにゃいにゃ」


「そっか、出来る事があったら自由に動いて良いよ。怪我しない範囲でね」


 僕は背中に佩剣(はいけん)していたドラシーを抜くと、トラさんに背中へ移動してもらった。体はもふもふしてるけど、爪を立てると痛いから引っ掻かないように気をつけて欲しい。


 フレイガースの街は、半球状のドームみたいな糸に覆われている。糸で全て包み込んで、逃げられないようにして食べちゃうつもりかな?


「酷いね⋯⋯無事なのはお城くらい?」


「それも時間の問題だろう。あの侵攻スピードなら、もって十五分といったところか?」


「うにゃにゃ! イフリート様は大丈夫なのかにゃ!?」


 不幸中の幸い? 精霊とヘイズスパイダーからは、感じる気配が(こと)なっているね。気配拡大感知で補足して、魔物の魔力を色分けした。

 これならホーミングレーザーを撃っても、ヘイズスパイダーだけを狙えると思うよ。


 ビビは少しずつ上昇しながら魔力を練り始めた。僕はさっき魔力を使い切ったばかりだから、一度ちゃんと回復しないと厳しいな。


 魔力回復ポーションのイチゴ味を取り出す。ポーション業界も日々進歩してるんですよ。ふふ⋯⋯あ、不味い⋯⋯美味しくないよぉ。


 ビビが長い髪を解いて服のボタンを外していく。そして白い霧に包まれると、十四、五歳くらいのお姉さんに戻った。きっとこれから大規模な魔法を使うつもりだね⋯⋯あの姿になったビビは、桁違いの魔力を行使出来るようになるのだから。


「凄いにゃ⋯⋯人間じゃにゃいのはわかっていたけど、バンパイアはあそこまで強くなれるのにゃ?」


「わかるの? ビビが特別ってのもあるけど、戦ったら凄く強いよ⋯⋯本当に⋯⋯」


 空き瓶を無限収納へ放り込み、魔力の回復を確かめる。


 ビビは何をするつもりなんだろう⋯⋯魔力の高まりが凄すぎるよ。


 街の外は全方位が蜘蛛だらけになっているから、どこに魔法を放ってもごっそり倒せると思う。


 ビビが手をヘイズスパイダーの群れへ向ける。


 ──キィィィィイイイイン⋯⋯


 黒い粒子が集まりだし、手の平の先に真っ黒い球体が出現した。


 あれは僕も見たことないね⋯⋯離れた方がいい? どんな魔法を使うんだろう?


 球体はどんどん大きくなり、周囲の風を巻き込んで荒れ始めた。僕は両腕で顔を庇いながら、その光景を腕の隙間から見詰めている。


 ビビはあっという間に強くなる⋯⋯生き物としての格が違うのかな。バンパイア子爵になってからの戦闘は初めて見るんだ。


「“ディスティニーエンド”」


 ビビがそう唱えると、大きな黒い球体が高速でヘイズスパイダーの群れに叩き込まれた。爆発も衝撃も襲ってこない⋯⋯疑問に思いながら見ていたら、着弾した地面から赤い霧が溢れ出す。


「あれは⋯⋯」


 その赤い霧はどんどん周囲へ広がっていき、それに触れたヘイズスパイダーの動きが緩慢(かんまん)になった。

 何が起こっているのかわからない。完全に立ち止まったかと思えば、内側から身を引き裂いて真っ赤な薔薇が溢れ出した。


「ふふ。あれなら死んでも愛でてもらえるだろう?」


 え? 何⋯⋯ビビ怖い⋯⋯


「⋯⋯綺麗だとは思う⋯⋯」

「恐ろしい女だにゃ⋯⋯」


 凄い魔法だね⋯⋯どうなっているのかわからないけど、初見で使われたら防ぎようがないよ。多分敵の魔力に自分の魔力を溶け込ませて、体内から全てを蹂躙するんだろうね。


 圧倒的な魔力量もそうだけど、それを支配出来る魔力制御能力がずば抜けているんだなぁ。


「凄いや⋯⋯じゃあ外はお願いねビビ。ヘイズスパイダーが出来るだけ中に入って来ないようにして欲しいんだ。僕はあのドームをどうにかして、魔法を撃ちながら街へ下りてみるよ」


「わかった。ん? ⋯⋯トラ。口がアークの首に近過ぎだ。そこは私の場所だぞ」


「にゃ???」


「にゃ、じゃない! もうちょっと首から口を離せ!」


「や、やめるにゃ! 引っ張ると落ちるに゛ゃ〜」

「ちょ、ちょっとビビ。ああぅ⋯⋯トラさんも暴れないで!」


 ビビがトラさんの猫耳を引っ張っている。重いドラシーを持っているのに、背中でトラさんに暴れられたらテンペストウィングの制御が乱れちゃうよ。


「わー、わー、もう! じゃあトラさんビビの背中に移ってよ」


「仕方ないな。来いトラ」


「⋯⋯にゃんか納得出来にゃいけどわかったにゃ。ビビは怒らせると怖そうだにゃ」






危にゃいにゃヽ('ㅅ' ;ヽ三 ノ; 'ㅅ')ノ

ヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ

(っ`ω´c)ギリィ


 文字数的にいったん切らせていただきました。次から戦闘に入ります。

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