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素直になれないビビ。ハゲと狩人

 みんなの応援のお陰で、初めてアクションランキング日間1位になれました!ありがとうございます(´;ω;`)


*年齢の記載ミス。改稿





 とても綺麗な湖⋯⋯太陽の光に照らされて、水面がキラキラと輝いてみえる。桟橋の上から覗き込むと、底の方まで良く見えた。

 人が住み着いても汚れない理由は、スライムが老廃物などを食べているからだそうだよ。


 魔導飛行艇を港へ出して、船長に引き渡した。


「すまねーな。徹夜お疲れさん」


「いーえ。整備頑張って下さいね。また貴族がちょっかい出して来たら直ぐ呼んで下さい」


「ありがとうよ。ゆっくり休んでくれ」


 いきなりの徹夜仕事で疲れたから、宿に帰ったらぐっすり寝られそうだね。


 欠伸をしながら船長に手を振る。「はしたないですわよアークちゃん」と、ミト姉さんに言われたような気がした。


 ドラグスの皆は今何をしているんだろう。ベスちゃんとベルフさんは町に戻った頃かな? もうずっと会ってないないように感じられた。

 皆に会いたいよぉ⋯⋯





 宿に到着すると、案内された部屋がかなり豪華だった。窓からは綺麗な街並みが見えるし、冷たいジュースを部屋に無料で持って来てくれるみたい。


 ビビが部屋にあったソファーに座ると、髪を解いて欠伸をする。僕は紅茶を二人分用意してから、対面に座わってクッキーを取り出した。

 紅茶の香りを嗅ぐと落ち着くよね。クッキーも焼きたてを収納しておいたから、直ぐに甘い香りが漂ってきた。


「ねえ。ビビはヘイズスパイダーって知ってた?」


「いや、初めて聞いた魔物だ。奇っ怪な魔物だよなぁ」


「Bランク冒険者さんが探しているみたいだけど、手掛かりは見つかったかな?」


「親の蜘蛛が姿を消していたら厳しいだろう。どんな探し方をしているかわからないけど、そもそもどうやって探すんだ?」


「わからな⋯⋯ふわああ⋯⋯」


 欠伸がでるぅ。眠くなってきちゃった。


「⋯⋯眠そうだな。また夜にギルドへ行く。その時に話を聞けば良い。今日は寝よう」


「寝る前に⋯⋯お風呂かなぁ」


「風呂の中で寝そうだな」


 眠くて頭が回らないや。ふわああ⋯⋯


 何とかお風呂をいただいて、パジャマへ着替える。ベッドへ入ると僕はジャンガリアン⋯⋯zzZ





 目が覚めると、ビビの目が僕の顔を覗き込んでいた。薄目でぼんやりそれを見詰めていたら、また瞼が重くなってくる。


「アーク、好きだ。⋯⋯違うか⋯⋯私もずっと一緒にいたい⋯⋯それも違う⋯⋯いや、違わないけど⋯⋯どう言えば良い? わからない⋯⋯愛? んー⋯⋯はぁ。言えない⋯⋯でも」


「⋯⋯」


 ビビが小さな声で呟いている。僕の頭をそっと撫でてみたり、抱かれるように腕の中に入り込んでみたり⋯⋯何だか一人で楽しそうだな。


 好きだって言われるのも、ずっと一緒にいたいって言われるのも嬉しいよ。

 優しさで胸がいっぱいになり、そのままビビを抱きしめる。


「ひゃ⋯⋯あ、アーク?」


 ぼーっとするぅ⋯⋯


「な、なんだ⋯⋯まだ寝てるのか?」


「⋯⋯」


「ふぅ⋯⋯危ない⋯⋯」


 ビビの手が首の下から背後へと回される。キュって抱きついてきたかと思ったら、首筋をそっと舐め始める。

 これはビビの癖なんだ。ちょっと(くすぐ)ったいです。


「アークの全てが欲しい⋯⋯駄目だ⋯⋯恥ずかしい⋯⋯アークの血以外飲みたくない⋯⋯これも私には言えないな。どうすれば好きだと言えるんだ?」


 好きだと言えなくて困ってる? ゴソゴソとイタズラされると(くすぐ)ったいよ。もう⋯⋯


 大丈夫。ビビの気持ちはちゃんと聞いた。でも知らないフリしとこう。ビビ楽しそうだから。





 あれからまたちょびっと寝ていたみたい。ビビも悩み疲れちゃったのかな? 僕の腕の中で気持ち良さそうに寝息を立てている。

 呼吸で上下するビビの背中を撫でてから、今のうちにステータスを確認しておこうと思った。

 僕は無限収納から冒険者カードを取り出して、カードに少し魔力を流す。



*名前 アーク

 種族 人族

 年齢 6

 出身地 ドラグス


 魂魄レベル 72


 体力 1612

 魔力 3150


 力  1022

 防御 685

 敏捷 2786


 残金 20081365ゴールド


 武術系スキル


 中級剣術レベル2

 剣技“パワースラッシュ”、“ウェポンスナッチ”、“アーマーブレイク”、“オーラスティンガー”

 中級短剣術レベル2

 短剣技“クイックシャドウ”、“シャドウウォーリアー”、“スピードバインド”、“バックスタブ”

 中級体術レベル3

 体技“二段跳び”、“岩砕脚”、“震激雷波掌”、“加歩”、“超重踵落とし”

 中級弓術レベル2

 弓技“ディスタントビュー”、“エンチャントアロー”、“インビジブルセカンドアロー”、“ディスタントルーラー”



 魔法系スキル


 生活魔法レベル4

 “クリーンウォッシュ”、“イグナイト”、“フリーズ”、“ドライ”

 火魔法レベル5

 “ファイアバレット”、“ファイアスネイク”、“ファイアアロー”、“ファイアボール”、“ボイルドファイア”

 火炎魔法レベル2

 “フレイムランス”、“アンチフレイム”

 水魔法レベル5

 “バブルボム”、“ウォーターフォール”、“ドライミスト”、“ウォーターウィップ”、“エリアレイン”

 氷魔法レベル2

 “ブリザード”、“アイスウォール”

 風魔法レベル5

 “エアークエイク”、“エアーショット”、“エアーコントロール”、“エアーカッター”、“ダストデビル”

 暴風魔法レベル3

 “サイクロンブレード”、“テンペストウィング”、“ウィンドプレス”

 土魔法レベル5

 “ヘキサゴンストーン”、“クレイゴーレム”、“ストーンハンド”、“フォーリングロックス”、“ストーンエッジ”

 大地魔法レベル2

 “アースドリル”、“サンドクラッシュ”

 光魔法レベル5

 “ライト”、“ポイントレーザー”、“オプティカルカムフラージュ”、“ミラージュ”、“ライトフェザー”

 極光魔法レベル1

 “オーロラカーテン”

 神聖魔法レベル6

 “ヒール”、“リジェネーション”、“キュアポイズン”、“リフレクション”、“セイクリッドスペース”、“キュアノーマリー”


 補助スキル


 魔力感知レベルMAX、魔力操作レベルMAX、魔力高速循環レベル5、魔力消費軽減レベルMAX、魔力効率化レベル1、魔力増強レベル5、魔法威力増強レベル3、探索レベル7、気配察知レベルMAX、気配拡大感知レベル2、罠察知レベル3、尾行レベル7、隠密レベルMAX、透過レベル2、悪路走行レベルMAX、忍び足レベル2、水上走行レベル2、荷運びレベル8、忍耐レベルMAX、物理耐性レベル3、苦痛耐性レベル8、精神耐性レベル3、毒耐性レベル5、火耐性レベル7、水耐性レベル3、氷耐性レベル3、風耐性レベル3、土耐性レベル2、光耐性レベル2、血晶耐性レベル3、礼儀作法レベル6、暗視レベル7、自然回復力向上レベルMAX、超回復レベル3、敏捷強化レベルMAX、高速移動レベル4、筋力増強レベルMAX、剛腕レベル1、剛脚レベル1、分割思考レベルMAX、並列思考レベル4、思考加速レベル3、投擲レベル8、料理レベル6、解体レベル5、釣りレベル3、回避レベルMAX、超回避レベル3、危険感知レベルMAX、危険予知レベル2、威圧レベル5、気力操作レベル9、身体強化レベル8、再生レベル3。


 ???スキル


 魔気融合身体強化レベル3

 精霊体転化


 ユニークスキル


 恩恵の手引書、無限収納


 称号


 猫の天敵、お姉さん殺し、町のアイドル、魔法使い、小金持ち、我が道をゆく者、ゴブリンキラー、オークキラー、夢を追いかける者、異名を持つ者、金持ち、町の英雄、見習い賢者、大魔法使い、絵本の主人公、お兄ちゃん、小さな英雄、男を惑わす笑顔、オタクのアイドル、猫耳メイド


 テイム


 ヴァンパイア子爵 ビビ レベル8/60


 A級魔剣“ドラゴンシーカー”

 “遺伝子吸収”、“魔気融合増幅”、“魔法強化”、“ホーミングレーザー”、“毒尾”、“ブルードラゴンブレス”、“アルティメットスケイル”、“黒溶岩砲”、“エレメンタルブレイク”



 魂魄レベルはイグラムの戦いで結構上がったね。流石にCランクの魔物を連続で五体はキツかったよ。

 ステータスもそこそこ上がってきたと思うんだ。でも上級冒険者としてはまだ頼りないかもしれないね。


 んー⋯⋯ギルドに預けたお金が凄いことになってる。ストーンゴーレム狩りを一ヶ月半くらい頑張ったのと、マグニリムリザードの討伐にその素材、イグラムの防衛で倒した魔物のお金が入っているからだろうね。お金持ちだなぁ。


 これにイグラムのタシックナル様からいただいたお金も入れたら、5000万ゴールド超えちゃうんだけど⋯⋯まあ貯めるのは嫌いじゃないよ。いつか何かのために使えるもんね。


 実はドラシーにも新しいスキルが増えていたんだ。発見の難易度SSSランクの魔物だから、かなりレアなスキルだと思う。実は猫耳メイド喫茶で働ていた数日で、どんなスキルなのかは試してあります。結構えげつない威力だったんだ⋯⋯“黒溶岩砲”を撃つよりも、若干消耗が少ない。


 魔物のスキルまでは僕のユニークスキルでもわからない。きっと人間には取得する術がないからだと思うんだけど、ドラシーのお陰で使えちゃうんだなー。ありがとうねドラシー。


 このまま頑張れば⋯⋯届く? 僕は父様や母様みたいになれるかな?


 虚空を見詰めながら、僕はゆっくり目を閉じる。


 今回のヘイズスパイダーもそうだけど、僕にかかる責任の重さに怖くなる時があるよ。でも、僕が目指す先はずっと遠いんだ。寄り道してる時間なんて無い。


「ビビがいれば大丈夫⋯⋯きっと大丈夫だから」


 そう自分に言い聞かせた。でもやっぱり少し怖いなぁ。


 僕は見たい景色があるんだよ。誰も見た事のない場所まで行くんだから。


「ふあぇ⋯⋯アーク⋯⋯しゅき」


 もぞもぞ動いたと思ったら、ビビが起きたみたいだね。ちょっと寝惚けた顔になっているよ。目がとろんとしていて、口がにヘラァってなっているんだ。


「しゅき?」


「しゅき〜⋯⋯す⋯⋯あ」


「あ?」


「!」


 我に返ったビビが、腕の中で固まっている。目が泳いだと思ったら、途方に暮れた顔になった。

 つい笑いそうになったけど、可哀想だから助け舟を出してみようかな。


「おはよう。僕、寝てるうちにビビを抱き寄せてたみたい」


「そ、そのようだ⋯⋯おはよう」


「何時ものことだけどさ」


「そうだな⋯⋯いや、まいるなあ」


「まいるの?」


「そんなことは! ない⋯⋯んだけど⋯⋯」


 身長はあまり変わらないんだけど、少しビビが小さくなって見えた。ビビの顎を持ち上げて、瞳の色を確認する。

 ほんのり赤っぽいかな? そろそろ血が飲みたい筈だ。


「ビビ」


「ん⋯⋯」


 ビビが頬まで赤くしながら目を閉じた。口を少し突き出してどうしたんだろう? 変な反応だな。


「血、吸わないの?」


「ち、血か! そうだな! 血だよな!」


 うん? 血が吸いたいんじゃなかったのかな? 本当にぐっすり寝れたね。今は何時だろう?


 壁の時計は今十六時を指しているね。昨日蜘蛛が出始めたのが二十時過ぎだったから、まだ四時間は暇があると思う。


 ソファーに移動して座ると、ビビが恥ずかしそうにしていた。何かを言いたそうにしていたけど、僕の膝に(またが)って血を吸い始めた。


 仕事の前には魔導飛行艇を回収した方が良いよね。ヘイズスパイダーの親が見つかっていたら、共同で討伐とかもあるのかな? 一応十九時にはギルドへ行こう。


「アークのバカ⋯⋯」


「え? 何で?」


「しらん⋯⋯」


 うぅ⋯⋯わからないけど、何かごめんね? ビビが満足するまで血を吸わせてから、着替えて街の中を歩いて行く。



 朝じゃないけれど、朝食に屋台で食べ物を購入する。勿論ちゃんとベンチを見つけてから食べますよ。


 湖の見える人工の高台公園で、ビビが焼き鳥を頬張っている。空は綺麗な茜色で、湖も一緒に染まっていた。


 綺麗だなぁ。風も気持ちが良い⋯⋯ギブ達に自慢する事が増えちゃったよ。

 ビビはやっぱり花より団子だね。僕は大きな肉饅頭を買ったんだ。湯気を立てるそれにかぶりつくと、中から肉汁が溢れてきた⋯⋯程よい塩加減とスパイスの良い香り。んー⋯⋯中のお肉がトロトロだ。野菜の旨みも染み出していて、噛む度に幸せな気分になれます。



 ミルクティーを飲んで食後の休憩をしていたら、知っている気配に気がついた。背中がぞわりと撫でられたような不吉な気分⋯⋯なんで? なんでなの?


 間違いない⋯⋯嘘でしょ? この気配は⋯⋯だってこれは⋯⋯


 僕はベンチから立ち上がると、バッとその方向へ体を向ける。


「ビビ、警戒して」


「ん? あ⋯⋯何で奴が?」


「わからない⋯⋯行ってみよう」


「仕方ないな。だが戦闘になったら街が滅ぶぞ?」


「でも⋯⋯放っておけないよ」


「まーな。さて、どうする?」


「どうしよう?」


 二度と忘れられない気配だよ。向こうもこちらに気がついたみたい。僕が行かなくても向こうから走って来た。


 彼奴(あいつ)は剣を抜いて飛び上がった。僕もドラシーを抜き放つ!


 ──ズガァンッ!


 物凄い重さが伝わってくる。激突の衝撃波で、近くにあったベンチが吹き飛んでしまった。

 相手は本気じゃないみたいだけど、身体強化プラス気力操作で対抗してもギリギリだ。


「久しぶりだな銀閃のアーク」


「何で⋯⋯アルフラにいるの? えっと、後頭部ハゲの人」


「ああ!? もう治ったよ! 思い出したら腹が立ってきたぜ!」


 この人は氷竜剣を使っていた人だ。人を攫って奴隷にする悪い人で、モウメスさんの仲間を二人殺したんだ。⋯⋯そんな人が、何でこんな所にいるの?


「捕まえた筈なのに⋯⋯」


「ああ、捕まったぜ。お前のせいでな! らあ!」


「ッ!!」


 強引に力で剣を振り切られる。僕は足の力を抜いて、それに逆らわずに後ろへ吹き飛ばされた。


「アークッ!!!」


 ──バシュッ!


 動き出そうとしたビビの足元に、狙いすましたかのような矢が突き刺さる。


 僕は大丈夫だから安心して。ビビ。


 それよりも、矢を放ったのは誰? 飛んできた方向を見ると、狩人の格好をした黒髪のおじさんが弓を構えていた。


「戦いに来たんじゃないでしょう? ジルクバーン・フォルティーニ」


「ちっ、うるせーよ」


 低い声でそう言うと、一歩一歩近ずいてくる。雰囲気のある人だ⋯⋯もしかしたら、氷竜剣の人より強いかもしれない。


 まずい状況だね。何でこんな場所で会ったのかも気になるけど、これじゃ下手に動けないよ⋯⋯


「すまないね。銀閃のアーク君」


「⋯⋯」


 一触即発の危機的状況は避ける事が出来た。でも、これからどうしたらいいのかわからない。


 どうしたらいいの? どんな理由があるにせよ、僕はこの人を⋯⋯


 ドラシーを握る手に、自然と力が入ってしまう。僕は今でも奴隷さん達の涙を覚えているんだから⋯⋯







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