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闇奴隷とは⋯⋯。イチゴもらいます。すいません。ありがとうございますありがとうございます。





 ここは冒険者ギルドの応接室。ロムドさんと僕はキジャさんに迷宮で起こったことを説明した。

 ビビは壁際で背景のように立っていて、誰も気にした様子は無い。


 僕はキジャさんの表情を説明しながら伺っている⋯⋯何かを知っていて隠しているような気がしたんだ。気の所為かもしれないけどさ⋯⋯


 奴隷の言葉が出た時に、変な威圧感を感じたんだ。押し殺した怒りのようなものが、一瞬溢れてしまったように感じた。


 ロムドさんと僕の説明が終わると、キジャさんは大きく頷く。


「そうか。扉はギルドで管理をしているが、出入りは基本的に自由なんだ。独占していると思われるのはいけねえしよ⋯⋯対策は領主と相談しとくわ。危険な目に合わせて済まなかったな。奴等の目的がわからねえ以上、学校も迷宮を控えてはくれねーか?」


「そうですね。今回の事件は保護者達も知るところになるでしょう。十分な護衛を用意出来なければ、戦闘特化のクラスでも控えさせた方が懸命ですね。学生が自由日に迷宮に行くのも控えさせるように学校長に相談してみます」


「ああ。よろしく頼む」


「それでもヤンチャな学生はいますからね。私達も教壇から生徒達に注意致しますが、不足の事態がありましたら頼らせて下さい」


「そりゃしょうがねぇよな。俺も学生の頃は自由日にドラゴン探しに行ったもんだ。ハッハッハ」


「生きているから笑えるんですがね。ここにもヤンチャな子がいるみたいですけど」


「ちげえねえ! ハッハッハッハッハッハッハ」


「ははは」


 僕が会話のダシに使われた⋯⋯父様程ヤンチャじゃないけどね。父様は学生の頃、自由日にはいつも世界を救ってたんだって。逆に言うと毎日世界がピンチだったわけだよね! 世界って凄い綱渡りの上に存在していたわけなんだよ。


 話し合いが終わり、ロムドさんは帰って行く。でも僕は残るようにキジャさんから言われたんだ。イチゴのショートケーキを出されたから、帰れって言われても帰らないけどね。


 半分ビビに残そうと思うんだけど、上に乗ってるイチゴは僕が食べるべきだと思う? それともこれ半分齧ってちゃんと半分こにした方が良い? これは難しい問題だ。歯形がついてもビビはイチゴを食べたいのか、半分のイチゴが無くても許してもらうるのか⋯⋯んんんー⋯⋯


「珍しいなアーク。好物にも手が出ない程に悩んでいるのか?」


「好物だからこそ悩んでいるのです! 折衷案(せっちゅうあん)として、キジャさんからイチゴをもらいます。すいません。ありがとうございます」


「おいおい⋯⋯まあ構わんがな」


 ふぅ。頭使い過ぎて危なかった。何処の間をとったのかわからないけど、キジャさんのイチゴをゲットしたよ! このイチゴを僕のにするか、ビビのにするかで悩むよね? どっちの方が甘い? ここまできて、そのことへ思い至るとは⋯⋯僕は真剣に色合いと大きさを確かめる。


「その奴隷って奴等は強かったか?」


「え? そうですね⋯⋯奴隷は弱かったです。Dランク冒険者くらいですかね?」


「世間一般では、Dランク冒険者はベテランの腕利きだぜ? それはまあいいか。最近色んな場所で同じような事件が起きているんだ」


 なん⋯⋯だって⋯⋯? 同じような事って、


「奴隷を使ってですか?」


「ああ。だがお手柄だったぞ? 生け捕りが出来たのはアークのお陰だ。他の案件では犯人が死んじまったからな⋯⋯後味悪かったんだ。これで少しは情報が掴める筈だ」


「死んでしまった⋯⋯同じような奴隷が⋯⋯無理矢理命令されて死ぬなんて、どんな気持ちだったんだろう。最後は何を考えてたんだろう。助けてあげたかったなぁ」


「⋯⋯人は手の届く場所までしか救えねえよアーク。思いやれるその気持ちを何時までも大事にしてくれよな。手の届かない場所も何とかしたかったら、それこそ沢山の仲間を作るこった。伸ばした手の届かないその先へ、きっと誰かが繋いでくれる。そんな仲間を作っていったらいい」


「キジャさんがそんなこと言うなんて⋯⋯」


「これでも俺はギルドマスターだぜ?」


「そうでしたね」


「忘れんなよ?」


 僕はビビに振り返った。きっとビビみたいに信頼出来る仲間が増えれば、僕はきっと色んなことが出来るようになる。そんな気がするよ。


「暫くはそんな事件が続くかもしれん。気を締めといてくれよ。本当は大人だけでどうにかしなきゃならんが、Bランクのアークも狙われる可能性が高い。うちのギルドでも五番目の実力者なんだからな」


 狙われるって? 奴隷から?


「何で狙われるんです?」


「んー⋯⋯この問題はややこしいんだ。アークにもわかるように簡単に説明すると、悪い貴族がここの領主と冒険者ギルドに色んな失敗をさせて、迷宮の管理を国に奪わせようって考えている。このまま開発が続けば、うちの領主は子爵家並の金と権力を握ることになるからな。それがわかっているからこそ、何とか潰そうと考えている貴族がいるわけだ。ここまではいいか?」


「⋯⋯はい」


 う、うん⋯⋯わかる? わかったようなわからないような⋯⋯


「で、何で潰そうとしてくるかだが、貴族には派閥っていう面倒なもんがあってな、敵派閥には力をつけて欲しくないと考えているんだ。この国にはいくつかのグループがある。それを全部説明するには時間がかかるんだ。だからアークにわかるように要点だけを説明しよう」


「はい」


「敵は迷宮を取り上げたい。または奪いたい。そのために、国が無視出来ないような失態を領主にさせたいんだ。だから迷宮で学生を皆殺しにして、民に被害を出させる計画だったのだろう。アークのお陰で助かったがな⋯⋯他にも動いている気配があるんだ。冒険者ギルドにもちょっかいを出してきてやがる。だからアークも油断するな」


 なるほど⋯⋯何とか僕の頭にも全体の流れが見えてきた。派閥争い⋯⋯そんなことのために奴隷の命が使われた? それも沢山?


「一つ聞きたいのですが」


「おう」


「奴隷の人はどうなるんですか?」


「まずは魔術を解く。これが大変なんだが、次に話を聞いて素性を調べる。帰れる家があるならば帰してやる。闇奴隷は拐われた一般人の可能性が高い。だからきっと悪いようにはならねぇ」


「拐われた⋯⋯」


 じゃあ無理に家族と引き離された? 自由も奪ってやりたくないことをさせて?


「⋯⋯それが貴族ってやつなんだよ。全員が悪い貴族ってわけじゃねえ。だがな、平民の命は軽く見られているのが現状だ。だからこんな捨て駒みたいなことをしやがるんだ」


 僕の中ではとても理解に苦しむことだ。もし僕が奴隷にされて、全員から引き離されたらどんな気持ちになるだろうか? 命令されて、誰かを殺せって言われたら? もしそれが僕の大事な人達だったら?


 怖い⋯⋯怖いよ。僕はそんなこと⋯⋯


 肩に手が置かれてビクッとなった。


 冷たい手だ。でも僕にとってはとても温かく感じる。僕にはビビがいる。そんなことにはなりはしない⋯⋯そう言われてるように感じた。


「貴族がどうとかわかりません。正直どうでもいいんです。でも奴隷を見つけたら、すぐに拘束して連れて来ます。絶対です!」


「ああ。それでいい」


「はい!」


「この国では奴隷は違法だが、他の国では結構使われている」


「え?」


「盗賊や殺人などの犯罪を犯した犯罪奴隷、借金を返せなくなった借金奴隷、期間を決めて奉仕する契約奴隷、自由を売ることで金を得るってやつだ」


「奴隷になること全部が悪いわけじゃないってことですね」


「そうだ。やっぱりアークは理解が早いな。はっはっは! 他国で奴隷を見ても、衣食住は保証されてんだよ。だから全部が全部悪いってことにはならねえ。ただし立場は弱えぞ? アークは世界を旅するって言ってたからな。そこら辺は覚えておけよ」


「ありがとうございます」


 そうなんだね。とっても勉強になったよ。この国は奴隷イコール悪だから、知らずに僕が他国に行ったら問題を起こしてたかもね。


「大事なことは話せたようだ。それで、そのネックレスは何だ?」


「これですか? これは魔装“ベヒモス”です! かっこいいんですよ!」


「やはり魔装か。その魔剣もそうだが、ちょっとずつ装備が揃ってきたな」


「はい!」


「頑張れや。アークならいつかAランクも夢じゃねえ。Aランクの冒険者カードがあれば、面倒な国越えの手続きをすっ飛ばせるからな。旅をするなら楽になる筈だぜ」


「そうなんですか!? Aランク目指して頑張ります」


「あ、ちょっと聞きたいと思ってたんだが、アークは領主と面識が無かったのか? この前の面会でそんな感じだっただろう?」


「えーっとですね。礼儀作法を学んで、十歳になってから紹介される予定になってます。だから領主様も僕のことを知らないフリしたんじゃないですかね?」


「なるほど? 本気で知らないっぽかったんだが⋯⋯まあいいか。その方が面白そうだ」


「???」


「こっちの話だよ。今日はもう帰るのか?」


「時間が半端ですし、ミラさん達と喋ってから帰ります」


「そうか。町中も気をつけて帰れよ」


「はい。ありがとうございました」


「また何かあれば来い」


「はい」


 暗い気持ちにもなったけど、最後はちょっと回復する事が出来た。奴隷さん達は僕が絶対に助けてみせるよ。


 応接室を出て扉を閉める。そしてビビの方へ顔を向けた。


「ありがとうビビ」


「感謝しとけ」


 ビビがあの時肩に手を置いてくれなかったら、とても暗い所まで心が落ちそうになっていたよ。


「僕ビビの手好きだな」


「冷たいだろ?」


「夏場は気持ち良さそう」


「私で涼むな」


「ケチ」


「ケチなのはお前だ! イチゴであそこまで悩むとは⋯⋯」


「何でわかったの!?」


「丸わかりだよ」


 むむむ。僕がケーキを何ミリまで削るか悩んだのもお見通しかな? 買えないわけじゃないけどさ。


 僕の中でケーキはあの場所で食べるっていうルールのようなものがあるんだ。きっとケーキは貴重なほど美味しいんだよね。

 でもそのうちビビとケーキ屋さん行ってみよ。それはそれできっと美味しいと思うんだ。



side キジャ



 アークが下の階に下りて行った。なかなか扉の前から動かないから、何をしているのかと思ったぞ。かっこよく⋯⋯というわけじゃないが、仕事をするのに俺は部屋に戻らなけりゃならねぇ。廊下にアーク達がいる状態では、今別れたのに「あ、また会いましたね」ってちょっと気まずいだろ?

 何故か要らん空気を読んでしまった。キャラじゃねーな。


 アークにも気をつけろとは言ったが、自宅は領主の屋敷だからそこは問題ねえ。寝首を搔きに入る馬鹿もいないだろう。今リフレが領主に一日中張りついて、護衛の仕事をしているんだからな。

 領主も毎日美人なエルフと一緒にいれて幸せだろう。鼻の下伸ばして変な問題は起さないでくれよな。


 今回の件で、また領主と話し合いが必要なようだ。きっと領主の方からこっちに来るだろうが、奴隷がどこまで秘密を握っているかが重要だ。


 本当に面倒くせえ。俺がちょっと行って黒い噂の伯爵殺っちまった方が早くねえか? だが俺が動くと疑いは領主にかかるだろうし。


 これから先は何をしてくるか⋯⋯最初の妨害工作の標的に選ばれたのはアークだった。Bランクに相応しいか試験をするとか言ってたんだったな。挙句の果てに拳銃まで使いやがって⋯⋯しっかりお縄にしといたけどな。


 その次はCランク魔獣を差し向けてきやがった⋯⋯呆れるぜ⋯⋯これには蒼炎が一人で対処した。ベスには町へ運ばれてくる城壁建設のための資材に不良品が無いかチェックさせている。既に数件の不正を発見した。


 サブマスのテイターには、夜の町の外を警戒してもらっているんだ。ターキが結構万能で、テイターが気に入ってこき使っているらしい。


 街道の襲撃も何件かあった。これには死者が出てるから笑えねえな⋯⋯一応制圧は出来たが、敵も奴隷で自害してしまう。情報が何も得られなかった。


 今回のアークの働きはとても大きいもんだ。学生を守ったこともそうだが、奴隷を無事に保護出来たのは良かった。これできっと情報は得られるだろうが、平民の言う言葉で伯爵を糾弾できやしないだろう。


 何か証拠がいる。動かぬ証拠が⋯⋯やはり密偵からの報告を待つしかないようだ。弱みでも握れりゃ良いんだがな。







*昨日の(4月27日)PVアクセス数が3000近くありました。楽しんで読んでくれる皆様に本当に感謝しております。

 ブクマも99に! ありがとうございますありがとうございます!

 イチゴ半分どうぞ(´ 。•ω•。)っ⌒♡。.(歯型付き)


 26日、27日と、レビューまでもらってしまいました(´;ω;`)

 これからも、魅力のある作品を目指して頑張ってまいります。


 気軽に感想など書いてもらえると嬉しいです(*^^*)

 酷評でもかまいません。返信率120%ぅ\( ‘ω’)/ウオオオオアアアアーッ!


「んまむぅ!?」←作者が暴走してる!?

「んま!」←大変だぁ!

「むむむまぅう!」←皆アレやるよ!!


「「「むーむまーま〜!!」」」←“ホーミングレーザー”!!


(∩´・Д・)⊃▁▂▃▅▆▇█▓▒.....∑ヾ(;゜□゜)ノギャアアーー!!


 ──チュドーン⋯⋯


 0(:3 )〜 _('、3」 ∠ )_



*後書きですいません。これからもよろしくお願いします。


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