閑話 森でだらだら
フォレストガバリティウスを倒し、ミラさんと仲良く昼食を食べた。
さっきは弱った姿見せちゃって恥ずかしいな。随分と気を使わせちゃったしさ。
森の中は気持ちいい。木漏れ日を浴びながら⋯⋯って言ってもあまり葉っぱも無いんだけどさ。季節的に失敗したかもと思わなくもないです⋯⋯肌寒い中を寄り添いながら、用意した敷物の上に寝転がっています。
僕は勿論周囲の警戒をしてるけど、警戒には慣れてるから疲れたりしません。
「アークちゃん料理上手よね。とっても美味しかったわよ」
「えへへ。ミト姉さんの料理手伝ってるから」
「社食もそこまで悪くないんだけど、ギルドで交代で食べるから気が休まらないのよ⋯⋯ここは天国だわ」
「ちょっと寒いけど気持ちいいねー。また来たいね」
「また来ましょう。アークちゃんが良ければね」
「うん。次はお弁当何作ろうかな」
「器用に何でも出来ちゃう人はモテないのよ? アークちゃんには関係無さそうだけど」
「モテるって何?」
「モテるって言うのは、異性から好きだって言われたりかな。アークちゃんの場合は女性からね」
「ミラさんにもベスちゃんにも好きだっていわれてる。モカちゃんやミト姉さんや母様からも⋯⋯好きって言われるのは嬉しいよね。僕もミラさん大好きだよ?」
「そうね。単純に考えれば嬉しいわよね。モカちゃんって子はわからないけど、好きには色んな種類があるのよ? 友情と愛情の違いを説明するのはまだ早いかな」
「難しい話?」
「今のアークちゃんには難しい話かな? アークちゃんは私と十年後に結婚してくれる?」
「結婚って父様や母様みたいな? ずっと一緒にいるって事なのかな?」
「ずっと一緒にいるって事で間違いないけど、ずっと一緒にいたいって気持ちで想い合う事が結婚かな。自分よりも相手の幸せを願えるようになって、初めてずっと一緒にいたいって思えるんだと思うわね。って! 恋愛経験無いのに語っちゃったわ! 恥ずかしい⋯⋯」
「ミラさんモテるんだよね? ギルドで冒険者さん達から言われたりしてない?」
「モテる⋯⋯んー、嬉しくないわね。下心が丸出しだし、仕事の邪魔する人しかいないわ。もー嫌! いやいやいや〜! 私、今は恋愛よりも仕事したいのよ」
ミラさんにギュッと抱きしめられた。苦しいけど温かいな。ミラさんは柔らかくて石鹸の匂いがする。このまま抱かれてたら寝てしまいそうだ。
「今はアークちゃんがいれば十分。寂しくなったら頼らせてね?」
「あはは。ミラさん子供みたい。僕もモテたくないなー」
「アークちゃんは絶対将来モテちゃうわよ?」
「えー⋯⋯さっきはモテないって言ってなかった?」
「気遣いできて〜、仕事でお金持ちにもなるでしょ? 顔もきっとハンサムになるわ。言葉遣いも丁寧で、夢に一直線だしね。そんな子は輝いて見えるものなのよ? 家事も色々出来るし、面倒見も良い」
「よくわからないけど、仕事の邪魔になるんでしょ? 僕冒険者したいのに」
「ふふふ。私とアークちゃんじゃ色々違うかな。年頃になればアークちゃんから気になる人を探したくなるはずだわ」
「じゃあ世界を旅しながらそんな人を探す事になるのかなー。ミラさんはまだ年頃じゃないの? 何歳から年頃?」
「わ、私は⋯⋯年頃の女の子ってやつよ? い、一応⋯⋯私も興味はある⋯⋯あ、あるの。でもそういうのってさ、その〜⋯⋯難しいのよ。理想が高いのかな? でも初めての恋愛って、凄く大事な物なのよ? や、優しくされたいし⋯⋯」
「ふーん」
「ふーんで終わった!」
難しい話でわからないね。ミラさん顔が凄く真っ赤になってる。なんか可愛いから前髪撫でてあげた。
もしかしたらモカちゃんやマーズちゃんが話してた恋バナってやつ? んー⋯⋯
「⋯⋯あ、オーク狩って来る」
「オーク? 気をつけて行ってらっしゃい」
パッと行ってパッと狩る。はぐれオーク三匹でした。収納し黙祷を捧げてから、戻ってミラさん体の上に寝そべった。
「えへへ。ただ〜いま」
「早いわね⋯⋯オークって1000ゴールドよ? 一匹1000ゴールドなんだからね!?」
「高いよねー」
「買い取り価格はそれでも安いわよ? 手数料、税金、ギルドの利益が引かれてるもの。でもアークちゃんはソロだし仕事が早いから⋯⋯普通三日の依頼を一日で終わらせたりするでしょ?」
「帰らないとミト姉さんが探しにきちゃうから」
「それが出来ちゃうから凄いのよ。普通三日かかる依頼をパーティーで受けた場合、五人で仲良く五等分するとするわね? それをアークちゃんが1日で終わらせちゃえば、収入は個人で何倍になるのでしょうか?」
「えと、三日を一日なら三倍、そこから一人で五人分だから五倍? なら十五倍?」
「それだけじゃないけどね。五人分の食料だったり、装備の整備も五人分。宿もポーションも全て費用は五倍なんだから。それでもランクの高い冒険者は高給取りなのよ?」
「僕あんまり使わないから沢山お金貯まっちゃうよ。ポーションもギルドから廃棄のやつもらうしね。でも使う武器にはお金かけるくらい興味あるかな」
「無理してお金を使う必要ないもんね。毎日豪遊してたら性格歪むわよ」
「も、もしケーキ三昧したら歪む?」
「お腹が将来歪むかも⋯⋯何事も節度が大事なのよ。アークちゃんは訓練いっぱいしてるから今は大丈夫ね」
「太るかも?」
「将来はわからないわ」
「ほぇ〜⋯⋯あ、またオークいた」
「行け〜新鮮組!」
「鮮度が命! 行ってきます!」
近くに集落でもあるのかな? 今回は五匹⋯⋯サックリ倒す。
ちょっと気配察知を大きく広げてみよう。
⋯⋯考え過ぎかな? 僕の察知出来る範囲内に集落はなさそうだ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「もうそろそろ帰る?」
「帰りたくなーい。いやいや〜!」
ミラさんが駄々をこねている。初めて町の外に出たんだもんね。もう少しゆっくりしようか。
「おいでおいで〜」
「僕はペットじゃないんだけど」
「まだ帰りたくないんだもん」
「では紅茶でも用意致しましょうか」
「我儘聞いてくれるアークちゃん好きよ」
「期間限定の従者ですので」
「じゃあ私はお姫様かしら?」
ミラさんの今日一番の笑顔が見れた。女の人はやっぱりお姫様や王子様に憧れるものなのだろうか。
それからも程よく会話が弾み、たまにオークをサックリ倒したのでした。
美人で可愛いミラさんは好きですか?|*・ω・)チラッ
甘やかされたい(:3_ヽ)_




