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色々アップ! 一気にCランク冒険者





 ベスちゃんの見た目は十二歳くらいの可愛い女の子なんだ。手を握って外を歩いていると、お姉ちゃんが弟の世話を焼いているように見えるかもしれないですよね。


 でも違うんですよ? 僕がベスちゃんをお世話してあげてるんです。直ぐ阿呆になっちゃうからね。


 ベスちゃんとギルドに顔を出と、エルフのお姉さんが果実酒を飲んでゆっくり(くつろ)いでいた。煙いギルドの中だというのに、その場所だけは神聖な雰囲気を(かも)し出している。


 まずはミルクさんに頭を下げてから、エルフのお姉さんの所へ向かった。


「エルフのお姉さんこんにちは」


「あら、さっきは大変だったわね。こんにちは」


 お姉さんは小さく微笑んだ。


 僕はこの人のお陰で命拾いしたんだよ。お姉さんの火炎耐性魔法が無ければ、あの獄炎魔法の中で何かを考える余裕すらなく死んでいた。


「ありがとうございました。お陰で今も生きています。本当にありがとうございました」


 誠意を込めて深く頭を下げる。ミルクさんに下げる頭と角度が同等だ。


 エルフのお姉さんが目を丸くしていたので、軽く事情を説明しました。


「そう⋯⋯それは良かったわ。私はCランクだから、中で戦っていたのよ。だから外の戦いは見ていないの。でもキメラ研究所から外を見た時、炎の柱が空高く吹き上がった時は本当にびっくりしたのよ。良く生きていたわね」


「本当にギリギリでした。あの耐火魔法がなければ、僕はここにいませんでした。本当にありがとうございました」


「ふふ。良い子。可愛いわね」


「だろう?」


 僕がエルフのお姉さんから撫でられていると、ベスちゃんが一歩前に出てドヤ顔になる。


「何で貴女が威張るのかしら?」


「私のアークだからな!」


「変なのに気に入られちゃったのねぇ⋯⋯」


 ベスちゃんは変な人だけど、悪い人じゃないんだよ? エルフのお姉さんにも、ちゃんと御礼を言う事が出来ました。

 エルフのお姉さんが気の毒そうに僕を見詰めてくる。この二人は知り合いみたいだね。笑顔で話をしているけど、笑顔じゃないような気がする? 難しいや。


 ミラさんを見つけたのでその場を離れると、喋りかける前に抱き上げられる。キュッと息が苦しい十秒間。うむむむ⋯⋯ベスちゃんと違って、ミラさんは胸があるから口と鼻を塞いで来るんだよ。

 サラサラの長い髪が頬を撫でて気持ち良い。僕はモゾモゾ動いて息ができるようにする。


「心配したんだからね⋯⋯」


「んむ? ごめんまはうぃ?」


「ふぅ。アークちゃんのせいじゃないもんね。さ! マスターが待っているわ。アークちゃん来たら部屋に呼べって言われてたのよ。だからついでに捕まえちゃった」


「捕まっちゃったぁ」

「や〜。離さないわ!」

「あはははは」

「うふふ。くぅ〜」

「んむぅー」


 ミラさんが僕に甘えてるみたいだ。こんなやり取りするの好きだな〜。ミラさんは優しくて良い匂いがする。柔らかくてポカポカだよ。


 ベスちゃんはその場に残り、大きな酒樽を注文していた。ドワーフにとってお酒は水みたいに飲む物なんだって。でも普通の人は水をそんなに飲んだりしないよね。


 僕は抱っこされたまま階段を上がる。そしてそのままキジャさんの部屋の前にやって来ました。


「マスター、アークちゃん来ました」


「おう。入れ」


 部屋の前に到着すると、ミラさんが中に声をかけた。ドアが開きっぱなしだったので、ノックはとくにしていない。

 ミラさんは名残惜しそうに僕を下ろして戻って行く。軽く手を振ると振り返してくれたよ。


「失礼します」


「おうよ。失礼されます」


「失礼しませんよ?」


「失礼な奴だな! はっはっはっはっは!」


 変な会話だなぁ。僕も結構ギルドに慣れてきたよね。大人の世界だけど、皆が優しくしてくれるから僕はやって来れたんだ。


「呼ばれてると聞きましたよ?」


「呼んだぞ。よし、そこに座れ」


 キジャさんはグッと伸びをすると、執務机から離れてソファーに座った。僕はキジャさんとテーブルを挟んだ反対側に腰を下ろす。


「忙しそうですね」


「まあな。でもそんなにいつもと変わらん。今は登録繁忙期の方が忙しい」


「今日の事件は忙しくないのですか?」


「んー、死者は出なかったって意味だが、冒険者に被害は無かった。忙しいのはギルドじゃなく領主だろうよ。家の無くなった奴らに仮設でも住む場所を用意せにゃならんしな。炊き出しや事情の説明なんかもある。俺達は依頼で被害を防いだ。それだけなんだからよ。ただ、これから物資調達の依頼が来るだろうな。それはちと大変になるかもしれねえ」


 言われてみればそうだ。冒険者ギルドが全てをやらなきゃいけないわけじゃない。


「さて、アーク。冒険者カード見せてくれねえか?」


「はい」


 冒険者カードを取り出して、キジャさんに手渡した。それを見たキジャさんは、数回頷いて僕へ返す。


「もうステータス見たか?」


「見てないですね」


「確認してみろ」


「はい」



*名前 アーク

 種族 人族

 年齢 4

 出身地 ドラグス


 魂魄レベル 21


 体力 403

 魔力 358


 力  190

 防御 95

 敏捷 273


 残金 215ゴールド



 うわああ⋯⋯すっごい強くなってるよ! スキルで地味にステータスを上げるのが馬鹿らしくなるくらいだ。


「あれは凄く強かったんだろ?」


「はい。上級の魔法ってあんなに凄いんですね。びっくりしました」


「あれはなぁ⋯⋯確実にCランクに値する魔物だと思う。安全に狩るとしたら、それこそBランク以上じゃねえとな。それを、あっさり倒しやがって」


「あっさりじゃないですよ! 滅茶苦茶大変だったんですから!」


「わかってるよ。と、言うわけで、アークをCランク冒険者にしようかと思うんだが⋯⋯どうする?」


「Cランク!?」


 何それ! 夢なのかな?


「ああ。なんつったって、上級魔法を操る小さな災害クラスの魔物を倒したんだ。あのままアレが町で暴れていたら、被害はこんなもんじゃ済まなかった。領主からアークに金一封もあるそうだぞ」


「金一封!!?」


「おう! だが貧乏貴族だしこんな状況だからあまり期待するな」


 お金は別にそんなにいらないけど、ランクが上がるの嬉しいな。そろそろDランクが見えてきたところだったんだけど、一気にCランクになっちゃった!


「Cランク冒険者になると、ギルドの緊急メンバー表に名前が載るんだよ。何かあった時に、直ぐ頼めるように活動地域を明記しておかなきゃならん」


「ピンチに呼ばれるんですね! 颯爽と駆けつけるわけですね! ふんすっ!」


「あ⋯⋯ああ。何で嬉しそうなんだ?」


 嬉しくないわけながない! まるで父様や母様みたい! 沢山の国を救った話を聞いてきたんだもの。


「そういうわけで、Cランクになるってのも色々面倒なわけよ。ベスなんかは面倒を避けたがってAランクに上がりたがらねえんだ。Aランクになると他国にまで呼ばれる事があるからな」


「なるほど! ふんすっ!」


「⋯⋯Cランクは滅多に招集かけられる事はねえよ。ただ活動地域は明確にしといてくれ。アークは暫くこの町にいるんだろ?」


「はい! 旅に出るのは学園卒業後ですからね。学園終わったら一度戻る予定ですけど」


「その時はデカくなってるんだろうな⋯⋯」


 十年以上も先の話。でも、その時には僕も父様や母様みたいになっていたいな。


 受け付け嬢さんがケーキと紅茶を持って来た。何この黒いケーキは!! って思ったら、新作のチョコレートケーキらしい。

 僕の大好きな一位と二位がまさかの合体!! 天才か!!

 雑談をしながら、本当に美味しく頂きました。口の中でとろけるチョコクリームは大人の味だよね! 僕大人だからとっても美味しいです。


 ミラさんの所へ戻り、新しいギルドカードを貰った。今度は銀色のギルドカードみたいだよ? 角に小さなサファイアが埋まっていて、オシャレでなんか綺麗だね。

 Dランクも銀色のカードらしいけど、そっちはルビーなんだってさ。


「アークちゃん⋯⋯もうCランクだなんて早過ぎよ。緊急メンバーに名前が載るって相当な事なんだからね?」


「僕はまだまだだよ。まだCランクなんだ」


「“もう”Cランクよ!」


「んーん。僕はまずAランクになりたい! 早く⋯⋯」


 Cランクじゃ駄目なんだよ⋯⋯ここじゃ止まれないんだ。


「⋯⋯どうしてそこまで頑張るの?」


「⋯⋯」


 僕の夢は、世界を全て自分の目で見て旅することなんだ。父様と母様が話してくれた世界を全て見たい。そして、誰も見た事のないものを見るんだ。

 Aランクになれば父様も母様もきっと褒めてくれると思う。それを考えると頬が緩むんだ。褒められたいなぁ。


「内緒。えへへ」


「⋯⋯はぁ⋯⋯何でそんなに嬉しそうなのよ。もう⋯⋯怒れないじゃないの」


 ミラさんが少し寂しそうな顔をしていた。そうか、僕が旅立つ時はミラさんともお別れの時なんだ。

 ずっと離れ離れになるわけじゃないと思うけど、その時は僕も覚悟を決めなくちゃね。


「いつか、僕の旅した冒険のお話を聞いてね」


「楽しみに待ってるわね」


「うん」





 夜ベッドの中で、父様と母様に挟まれて横になる。父様は少し疲れた顔をしていた。


「父様。今日のお仕事はどうでしたか?」


 眠る前の軽いお話には丁度いいと思う。父様の姿は見つからなかったけど、兵士のまとめ役でもあるからね。きっと何処かで頑張っていた筈だよ。


「お? 聞きたいか?」


「うん!」


「今日はな、町から流れる不穏な風を感じたんだ」


「不穏な風?」


「うむ。数々の修羅場を潜るとわかるようになるさ」


 数々の修羅場⋯⋯それを生き抜かなきゃ今の父様みたいにはなれないんだ⋯⋯今日みたいな戦いが何度も必要なんだね。


「俺は領主様に警告したんだ。今日、何かあるぞってな! 領主様は俺の言葉を聞いた瞬間に立ち上がって、すぐにペンと剣を持って警戒した」


「ペンと剣持つの?」


「ああ、どっちのパターンでも対応出来るように中腰でな」


「どんな事態にも対応出来るように⋯⋯凄いですね!」


「ああ、そして二時間後」


「二時間もその体勢で?」


「勿論だ。何かあってからでは遅いだろう?」


「ふええ⋯⋯」


「そしたらな。キメラ研究所の職員が駆け込んで来たんだ。そして領主様に助けを求めてきた。不穏な風はこれだ! ってその時確信したね。話を聞けば、キメラ研究所の中には暴走した魔導兵がいると言う。領主様はすぐに兵士に声をかけ、住民の避難を最優先させた」


「ペンと剣は? 父様、ペンと剣は?」


「あ、あ〜。それは扉を開くのに使ったな」


「なるほどっ!!!」


「そして俺は数名の部下を連れて現場に向かった。キメラ研究所の中には、恐ろしい魔導兵がいると聞いていたからな」


 確かに魔導兵は恐ろしい敵だった。硬いし魔法効かないし、それなのに敵は魔法打ち放題だし。反則だよね。


「俺はそいつ等をちぎっては投げちぎっては投げて進む」


「ちぎったの!?」


 ミスリルの体だよ! 本当に硬かったんだよ!


「ああ、俺にかかれば一瞬だった。救出した研究所の職員を部下に任せ、俺は更に奥へ進む」


 そうか。じゃあ父様はキジャさん達と一緒に戦ったのかな?


「中はまさに地獄だった。そこには数万の魔導兵が(うごめ)いていたのだ」


「数万!?」


「ああ⋯⋯もう数えるのも面倒になった。十万から先は数えていない」


「そんなにいたの!?」


「敵も段々と強くなっていった。特に強かったのが赤い魔導兵だ」


「赤なんていたの!?」


「いたさ、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、ピンク⋯⋯五体揃うとその戦闘力は果てしなく強くなる。合体技とかな」


 黒い魔導兵みたいに特別なやつだったのかも。やっぱり父様は凄すぎだね。


「その後も俺は戦った。孤独な戦いだったよ」


 はぇぇ。ベスちゃんでも十体しか倒してないのに、父様は本当に凄い。


 やっぱり二人の冒険は本にしてもらいたいな。出版社さんにはいつ行こうかな?







さあ二章が始まりましたよ。


この章ではマスコット的なキャラクターがでてくるかも?|*・ω・)チラッに

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