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精霊界の危機(10)





三人称視点



 ユシウスは焦りながら、アークの斬撃を受け止める。アークの力は精霊に頼ったものだと思っていたが、その考えは一瞬で吹き飛ばされた。


(⋯⋯重い⋯⋯速い⋯⋯この力は何だろうねぇ)


 アークの剣術はまだ拙い。だが、それは上位者から見ればの話だ。

 人間達を基準にすれば、一般的には達人の領域にあるだろう。ユシウスから見ればまだまだ未熟だが、力で強引に押し込まれていく。


(まだ暫くは加護を全開にする事は出来ない。それに、あれはボクでも連発するのはかなり厳しい。黒狐と戦うのに仕方なく切り札を使ったけど、こんな伏兵が存在するとは思わなかったねぇ。完全に計算ミスだ)



「は!」


「ッ!」


 アークの攻撃には一切の遠慮が無かった。飛んでくる銀閃を睨み、ユシウスは冷静に対処をする。



(あの剣⋯⋯見た事も聞いた事もないねぇ⋯⋯あれだけ強力な力を持っているのなら、有名になっていても不思議じゃない。剣狂いのオルカが黙ってないだろうねぇ。精霊を部下に調べさせたけど、こんな子供がいるなんて情報は無かった。職務怠慢も甚だしいよ)


 アークの力を分析しながら、ユシウスは様々な事を考える。



「はあ!」


「⋯⋯チッ!」



 ユシウスの背後には、この精霊界でもっとも大切な世界コアがあった。傷をつける訳にはいかないが、全ての攻撃から守る事が出来ない。


「コアを破壊しようだなんて、随分と思い切るじゃないか」


「ハッ! “ホーミングレーザー”!!」


「グッ⋯⋯」


 ──ズドドドドドドド⋯⋯


 この手数と破壊力は、到底無視出来るものじゃない。ユシウスが世界コアから離れれば、アークは狙いを世界コアへ変えてしまう。


 防ぎきれなかったホーミングレーザーが、背後の世界コアを削っていく。


 ユシウスは会話で時間を稼ごうとした。だが、アークはそんな事お構い無しに攻撃を繰り返してくる。


「⋯⋯やりずらいねぇ」


「⋯⋯」


 不意にアークの攻撃する手が止まった。ユシウスから少し離れたと思ったら、大胆にも背中を向ける。



「⋯⋯何を考えているんだい? はぁ⋯⋯本当にやりずらいよ⋯⋯君は」


 アークが普通の子供であれば、ユシウスもここまでペースを崩されなかっただろう。

 高い戦闘能力もそうだが、アークからは底知れない何かを感じていた。



「あれ? 何だろう?」


 アークは誰にも聞こえない声で呟いた。栞に似た不思議な気配が近づいてきて、アークは首を傾げる。そんな行動にも、ユシウスは理解が出来なかった。



 アークは勿論ユシウスに集中している。そのアークの見つめる先で、栞と同じ服を着た人が現れた、



side アーク



「へぇ、まだ残ってたんだ」


 ユシウスが面白そうに呟く。その言葉の意味はわからない。


 あの人は僕の味方なのかな?


「これ以上、貴方の好きにはさせません!」


「ひゃひひひ。人形が増えたところで何も変わりませんよ」


「私の名前は(れん)です。雑用タイプですが、これくらいなら⋯⋯」


 その人は、丸い筒のような物をどこからか取り出した。

 何だろうと思って見ていると、肩に担いで筒の先をユシウスの魔導具へ向ける。


「ファイア!」


 ──ズドーン!


 ユシウスの魔導具が一瞬で破壊された。


「く⋯⋯黒狐の人形が! あれを作るのにどれだけの時間がかかったと思っている!」


「あははは、少しは気分が晴れました。次は貴方の番ですよ?」


「本気でそんな事が出来ると思っているのかねぇ」


「やれますよ。アーク様がやります」


「あ、僕がやるのね⋯⋯」


 あの人は敵じゃないっぽいな。初めて見る人だけど、僕の事を知っているんだね。


 ユシウスに向き直ると、僕はドラシーを構える。


「⋯⋯こんなに上手くいかなかった事はありません。ですので、少しは役に立ってもらわなければ困りますねぇ」


「? どういう意味?」


「気にしなくていいよ。君に言った訳じゃない」


 ⋯⋯僕に言った訳じゃない? それって⋯⋯


「蓮さん! 逃げて!」


 僕は急いで蓮さんに呼びかけながら、栞さんの元へ向かった。気がついた時にはもう遅く、蓮の胸からは黒い刀身が生えていた。



「お待たせ致しました。ユシウス様」


「良いタイミングだったよ。アルフレッド」


 狙いは蓮さんの方だったのか。


 蓮さんの胸から剣が抜かれると、蓮さんはその場に崩れ落ちた。


「久しぶりだな⋯⋯お前には借りがあったなぁ」


「三本角の魔族⋯⋯」


 この人は僕が最初に戦った魔族の人だ。二対一⋯⋯


 蓮さんが無事か気になるよ。大丈夫かな? もしかして死んじゃった?


「形勢逆転だねぇ」


 ──ビシィ!


「ッ!!」


 その時、世界コアから変な音が聞こえてきた。何かと思ったら、僕が攻撃した場所から亀裂が拡がり始める。

 ニヤけた顔になっていたユシウスが、悔しそうな表情を浮かべた。


「⋯⋯こっちは駄目だったんだねぇ⋯⋯本当に上手くいかない」


 世界コアが崩壊を始める。それとタイミングを同じくして、更に沢山の気配が近づいてきた。


「ユシウス様」


「⋯⋯遅いじゃないか」


 まずい⋯⋯何でこんなに?


 沢山の気配は魔族の増援だったらしい。全部で二十人はいる⋯⋯世界コアは壊せたけど、手負いの栞さんと蓮さんを庇いながらこの人数を相手には出来ない。


 どうしよう⋯⋯早くビビの方にも戻らなきゃいけないのに⋯⋯


「アーク様。私の事は気にしないで下さい」


 栞さんが微笑みながら言った。


「栞さんも蓮さんも助ける。僕が何とかする!」


「ですが⋯⋯」


「するったらするの!」


「⋯⋯」


 嫌だ。僕は絶対に助けたいんだよ。


 世界コアは壊せた。次はユシウスも他の魔族も倒して、これ以上誰も死なせない!


 ドラシーに力を注ぎ込み、増幅と循環を繰り返す。


 もっともっと力が必要だ。もっともっと⋯⋯


 体が悲鳴を上げていた。強引にでもSスタンダードレベル4に出来れば何とかなるかもしれない。


「駄目です! 体が壊れてしまいますよ!」


「⋯⋯」


 父様、母様、僕に力を貸して下さい。


 父様はいつも限界を超えてきた。母様も誰にも負けなかった! なら、僕がやる事は一つしかない。


「はぁ⋯⋯アレは君達に任せるよ。ボクは帰って報告をしなきゃいけないからねぇ」


「「「ハッ!」」」


 ユシウスが何かの呪文を唱えると、大きな黒い渦が出現した。


 逃げられてしまう。黒狐様の仇なのに⋯⋯栞さんと約束したのに⋯⋯


 悔しく奥歯を噛み締めていたら、黒い渦がいきなり消えて無くなった。


「⋯⋯あれ? おかしいな。転移系魔術阻害は無くした筈なのに」


『ふふふ⋯⋯』


 どこかからか声が聞こえてきた。そして僕とユシウス達の間に、空間の裂け目が出来上がる。



「お前は⋯⋯まさか!」


 ユシウスが驚愕に目を見開いた。中から出てきたのは、長い緑色の髪をした綺麗な女の人だったんだ。


 もの凄い力を感じる⋯⋯それに、僕はこの人を何処かで見た事がある気がする?


「へぶっ!」


「⋯⋯」


 空間の裂け目に足を引っ掛けて、緑の髪の人が盛大に転んだ。






更新ペースを上げたいですが、なかなか⋯⋯が、頑張ります!(ºωº э)З

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