作戦開始!
今回の戦いは、まずシルフ先生の国に取り付いたヘイズスパイダーを倒す事から始まる。
「うおおぁぁあ!」
「輝いてみせる!」
「ヒャッハー!」
テンション上がり過ぎじゃない? ⋯⋯それにしても、凄い数の精霊さんだ。
今フレイガースの城壁の上には、五千に届く数の精霊さん達がいるのだから。
それに強そうな精霊さんがいっぱいいるよ。僕を見ると深々と頭を下げてくるから、僕も深々と頭を下げ返しています。
シルフ先生の国を助け、そのままウンディーネ様の国へ雪崩込む予定になっている。
総指揮官はムーディスさんで、僕は状況に応じて遊撃隊になるみたい。イレギュラーが無ければ良いけど、強敵が出た時のためにノームが待機するらしい。
ノームの技は大雑把だから、乱戦には不向きなのもあるかな。
僕は自分の部隊を見渡した。
ビビはどこまでも僕に着いて来てくれる。それを当たり前だと思っちゃ駄目だよね。
ベスちゃんは親友を助けられて良かった。
雷の大精霊アイセアさん。直ぐベタベタしてくるけど僕は嫌いじゃないよ。
水で変幻自在な精霊バブリン。喋る事はないけれど、気遣いが出来て優しいんだ。
風の狼精霊ウィディガー。よく足にスリスリしてくるのが可愛い。
闇の鷹精霊ブラーティス。礼儀正しくて凄く真面目なんだ。
輝く白馬精霊シャニガル。同じく礼儀正しくとても真面目。体毛がすべすべしてて触ると気持ち良いよ。
砂の体をもつ精霊ジュスルン。内気だけどやる時はやる子。
うっとりするような白い体毛の雪月虎。中位の精霊さんの中では、群を抜いて力が強い。
小さな火竜に見える精霊アムラ。触ると意外とぷにぷにしてるんだ。見た目はちょっと可愛いと思う。
頭に花を咲かせる小さな女の子精霊マリー。一言で言うとわからない子。でも、とっても良い子だと思う。
赤雷を纏う大きな兎精霊ヴォルティム。大きな耳を持っているだけに聴力が良い。蹴り技が豊富で強いんだ。
強力な美しいレイピアの形をした精霊シャムシェル。綺麗な女性の声がするんだ。
空間を操るおじいちゃん精霊オルカタ。僕よりも小さな体をしていて、少しおっとりしているよ。
体を刃物に変える褐色黒髪ショートの精霊アクセイラ。明るくて軽い性格で、温泉で見たおっぱいが大きかった。ベスちゃんに理不尽に絡まれてたなぁ。
骨を操る不思議な精霊ボーネイト。僕の隊では最強の精霊さんらしいけど、マリーによく振り回されている。
「皆。今日はよろしくね」
精霊界での大きな戦いは、これで三度目になる。
沢山の精霊さんを助けて、ヘイズスパイダーを倒さなくちゃ。アルフラの人達のためにも、トラさんのためにもね。
皆笑って過ごせるようにしたいなぁ。
「アーク。困った事があれば直ぐ言うんだぞ?」
「わかった。ベスちゃん」
「⋯⋯はは、いや〜⋯⋯最近お姉ちゃんポジションが危うい気がしてな⋯⋯」
ん? そんな事はないよ。ベスちゃんには沢山の事を教わったんだ。スキルの取得条件だけは知っていても、それ以外の事を教えてくれたのはベスちゃんだもん。
僕はベスちゃんに会えて本当に良かったと思ってる。
「⋯⋯ベスちゃんはベスちゃんだよ。僕の冒険者としての先生で、大事な友達だよ。ドラグスに戻ったら遊ぼうね!」
「そうか、そうだな」
ベスちゃんが少し縮こまっている気がする。周りが皆凄い精霊さん達ばっかりだし、こんなベスちゃんは珍しいな。
って思ったらちゅーしてこようとするし⋯⋯てい!
「痛!」
軽くチョップしておく事にする。
今日のビビは初めから大人の姿になっていた。真っ赤なドレスに薄いロンググローブ、腰にはシャムシェルを装備している。
アイセアさんと背中合わせになり、何やら集中力を高めているみたい。
精霊の皆は、少しだけ緊張しているような気がするよ。
「皆。僕達は一番隊の中でも特殊なグループとして動きます。何か問題があった場合は、ノームと同じで遊撃部隊になります」
「「「はい!」」」
皆の気力は充実してる。きっと大丈夫!
「見えてきたぞーー!!!」
誰かの叫び声が聞こえた。
もしかしたらシルフ先生の国かな? 我先に見ようとする精霊さん達⋯⋯僕も見たいけど、隊長がはしゃいだら示しがつかない! むむ⋯⋯お菓子食べて我慢しよ!
「なーなー」
「うむ?」
声をかけられて振り返ると、黄金に輝く鎧に身を包んだ短髪の青年が立っていた。
金髪で鋭い眼光⋯⋯もしかして?
「お前がアークだな」
青年はニヤリと微笑んだ。
「ふぁい、しょうれす!」
「⋯⋯何食ってんだ?」
「もぐもぐ⋯⋯ゴクン⋯⋯三色団子です」
「俺にもくれよ」
お団子を二本渡すと、その人は早速頬張った。
精霊界には無い食べ物だよね。
不思議な新食感に困惑しつつも、頷きながら食べている。
「二番隊! 三番隊! 蜘蛛の巣及び雑魚の討伐だ! 出陣!」
「「「おーー!!!!」」」
ムーディスさんの号令に、沢山の精霊さんが飛び立って行く。
それを見た目の前の青年は、目を見開いて咀嚼を急いだ。
「む⋯⋯やべえ! 出遅れちまう! また後でな!」
「はい」
多分この人はノームの子供かもしれないね。凄い力を持っているのがわかるよ。
僕達は一番隊だ。全隊で十に分かれていて、四番隊と五番隊は街の防衛を任されていた。
「六番隊から九番隊! 五メートル超えを各個撃破だ! 行け!」
「「「おおーーー!!!!」」」
「一番隊、十番隊は待機!」
「「「はい!!」」」
前にいた精霊さん達が出て行って、シルフ先生の国が見えるようになった。
凄い数の敵がいる⋯⋯蜘蛛の糸のせいで、国が繭のように包まれて見えるね。
敵陣のど真ん中で、激しい白い炎の竜巻が出現した。
「あれは⋯⋯」
「あれは暴炎玉だよ。ビビ」
「この玉には、あんなとんでもないのが入っているんだな」
「頑張って沢山作ったからね」
「あんな物があれば、楽勝で勝てるんじゃないか?」
──ゴゴゴゴゴゴ⋯⋯
ビビがそんな事を言った瞬間、地鳴りのような音が聞こえてきた。
「そんな上手くはいかないみたい」
土煙を上げながら、巨大なヘイズスパイダーの群れが現れた。
どの蜘蛛も十メートル以上ある。近づけば直ぐにわかった筈なのに、どうしてこんなに近くに来るまでわからなかったのか⋯⋯どこからあんなに⋯⋯
「地中に隠れていたんだな」
「なるほど」
巨大なヘイズスパイダーは約三百体。これはもうイレギュラーな事態だと思っても良いのでは?
「一番隊!」
ムーディスさんの大きな声が響いた。
「新手の殲滅だ!」
「「「おおーー!!!」」」
出番だ! 行くよドラシー!
『ッ!』




