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ビビの秘密特訓





 城の中庭へ降りると、まだ宴会をしていた様子が伺えた。


 イフリンったら、ちゃんとお仕事してたのかな? やっぱり精霊さんってどこか呑気なんだよね。


 そんな時、中庭を見下ろす視線に気がついた。


 ⋯⋯イグニス様だ。何で僕はイグニス様に嫌われてるんだろう。


 怒りなのかなんなのかわからないけど、僕はイグニス様に良く思われていないんだ。


「アーク、私はちょっと訓練をしてくるよ」


 ビビが僕とイグニス様の視線を遮る。


「え? 訓練? じゃあ僕も!」


「いや、アークは疲れているだろう?」


「そんな事もないと思うんだけど⋯⋯」


「いいから部屋で寝ていろ」


 いきなりそんな事を言われてもね⋯⋯ビビがいないと寝れないかもしれないしなぁ。それにまだ昼間だよ? やっぱり僕元気だと思うんだけど?


 イグニス様へ視線を戻そうとすると、既にそこには誰もいなかった。


 うーん⋯⋯やっぱり一度話をしたいと思うんだよね。誰とでも仲良くなれるとは思わないけどさ。



「アーク?」


 ビビは僕が部屋に行くまで見守るつもりらしい。


 僕の両頬を摘んでグニグニしてくる。痛いからやめて? 今から寝てもつまらないしなぁ⋯⋯あうぅ⋯⋯ビビの目が鋭くなった。まさか、僕の考えが見透かされている!?

 そ、そんな訳ないよね? こっそり訓練なんて考えてないからね?


「私はギリギリまでアイセアと特訓するつもりだ。寝るのも大事な仕事だぞ」


「でも⋯⋯」


「アーク?」


 なんかちょっと⋯⋯今日のビビは怖いです。大人しく部屋に入ろうかな。

 いやいや、僕はまだ寝たくない! 部屋に入ってからビビがいなくなるのを待とうかな? 



side ビビ



 アークは短期間で驚く程に強くなる。魔物の私にすら理解が及ばないくらいに早く⋯⋯

 そんな無理を続けていれば、いつか取り返しのつかない事になるのではないか? そう時々考えてしまうよ。


 大人の姿になり、もたもたと抵抗するアークを抱き上げる。


「ビビ。まだきっと寝れないよ? イフリン達にただいまの挨拶とかしてきた方が⋯⋯」


「それは私がしておこう。アークが寝る時に数えている動物は何だったかな?」


「え? それはジャンガ⋯⋯zzZ」


 良し、これで大丈夫だ。


 アークをベッドに放り込み、何故かベランダでふにゃけた面をしていたマリーを見つける。


「何をしているんだ? マリー」


「ふわぁ⋯⋯先輩! チーっす! 光合成っす!」


「お前は会う度にキャラが違うな⋯⋯」


「光合成出来れば皆友達っすよ! 先輩!」


「いや、出来ないが」


「ッ!!!」


 驚愕の表情になったマリーを抱き上げ、アークを見ておくように頼んでおいた。


「了解っす! 先輩! うーっす!」


「なんかムカつく顔だな⋯⋯頼んだぞ」


「うっすうっすうぇーっす!」


「くっ⋯⋯いいか? アークが起きても動き回らないように見張るんだぞ?」


 なんだあの顔は⋯⋯イライラして仕方ない。


 さて、アイセアを捕まえて来るか。




side アーク




「ッ!!!」


 目が覚めると、枕元にマリーが立っていた。


 びっくりしたぁ⋯⋯普通にめっちゃ怖いです。あれ? マリー寝てる?


 目を見開いて、僕の顔を覗き込みながら鼻ちょうちんを作っているみたい⋯⋯

 何がどうなってそうなったのか説明をして欲しい。若干頭の花が萎れている気がするよ。


「ま、マリー?」


「⋯⋯すぴー⋯⋯すぴー⋯⋯すぴっぴすー〜すぴっぴぴぴぴ⋯⋯」


「⋯⋯本当に寝てる?」


 仕方ない⋯⋯隣に寝かせてあげよう。


 それにしても、僕はいつの間に寝ていたのかな? 記憶がないね。ビビが言う通り、僕は本当は疲れていたのかも。

 でも沢山寝れたしきっと大丈夫だよね。ビビはまだ訓練しているのかな?


 ベッドにいても暇なだけだ。マリーの鼻ちょうちん見てても仕方ないよね⋯⋯でも、ビビがゆっくり休めって言ってたしなぁ。


 マリーを寝かせ、僕はあれを作る事にした。バブリンの馬車で作ったガラス玉のような爆弾だ。

 それなりに集中力が必要なんだけど、一度作っているから簡単に出来た。


 最初は一個作るのに三分かかったのに、どんどん時間が短縮されていく。

 三分が二分、二分が一分、二個を同時に、三個を同時に。


 完成した物は箱にしまってたんだけど、気がついたら凄い量を作っちゃった。


 これ名前があった方が良いかな? んー、仮に“暴炎玉(ぼうえんだま)”としておこうかな。



 やる事が終わっちゃったよ。マリー⋯⋯目が乾いちゃう⋯⋯


 そっと瞼を閉じさせて、安らかに眠れと祈ってみる。


「ハッ!」


「ごめん。起こしちゃった?」


「事後?」


「え?」


「覚えてないのが悔しい! アーク様もう一回おねげーします!」


「わ、わかった」


 いきなり凄い食いつきでびっくりしたよ。もう一度マリーの瞼を閉じさせた。


「安らかに眠れ」


「何プレイです?」


 よくわからないけど、今はマリーに頼みたい事がある。


「ねえマリー。僕の部隊の皆を集めてくれる? ベスちゃんとアイセアさんとビビ以外に渡したい物があるんだ」


「お易い御用です!」


 マリーは走り出すと、扉の前でこっちを振り返って投げキッスをしてきた。

 何故か見えたハートマークの残像を避けると、マリーが扉の向こうへ消えていく。



 準備は着々と整っていった。そしてなんと、最終決戦は今夜になりそうだった。





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