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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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スカーレット





 ライムローゼ様の影武者さんは、僕の呟きに首を横に振る。


「魔王様は人間が好きじゃないのよ。決して馴れ合う事は無いですわ」


 そうなんだ⋯⋯話をしてみたかったんだけど、魔王は魔族の王様だもんね。それじゃあ会う機会も無いかもしれないかな。


「それは残念です⋯⋯えと、神光砲は何処にあるのでしょうか?」


「そこまでは⋯⋯すいません」


「いえ、自由に動ければ良いんですけどね」



 その時、僕が案内された上の部屋に、近づいて来る気配を感じた。


「誰か来たようです。戻らないと⋯⋯」


「なるべく早くこの国から出て行って下さい。巻き込まれたら大変です」


「そう、ですね⋯⋯でも、僕はこう見えて結構強いのですよ。またね、ライムローゼ様」


「あ、ちょっと」


 僕はベランダから飛び上がると、直ぐに自分の部屋のベランダへと降り立つ。

 そのタイミングと同じくして、鍵が開かれる音が聞こえてきた。


 あっぶない。ギリギリセーフ!



「こんにちは。少しお話しましょう」


 部屋に入って来たのは、真っ赤な髪の勇者様だった。


 僕がデナートロスへ来た時に、アークデーモンを瞬殺した勇者様だね⋯⋯


「こ、こんにちは」


 この人は神光砲の事を知ってるのかな?


「警戒⋯⋯されちゃったか⋯⋯」


「え?」


「本当に、ただお話に来ただけよ。座りなさい」


「はい」


 勇者様がソファーに座る。いきなりの事にびっくりしたけど、これは色々と知るチャンスかもしれないね。


「私の事はスカーレットと呼んでね」


「はい。僕はアークです。スカーレット様」


「ふふふ」


 スカーレット様は、いったい何をしに来たのかな? 本当にお話に来ただけ?



「アークの生まれ育った故郷の話が聞きたいと思ってね」


「僕の故郷ですか? 田舎で聞いていて面白いとは思えませんが」


 それに、あまり話すとボロが出そう⋯⋯草原から来たって事になってるから、故郷の話⋯⋯ど、どうしよう⋯⋯


「ふふふ、私が聞きたいのは未来のお話よ。アーク」


「え! どうして!?」


「さて、どうしてでしょう?」


 スカーレット様が悪戯っぽく笑う。


 この世界で僕が未来から来たと知っているのはミズリおばあちゃんだけだ⋯⋯ハルキバルさんにも話してはいない。


 何で笑ってるの? もしかして⋯⋯


 頭の中が真っ白になった。思えば、僕とミズリおばあちゃんが一緒にいた所を、この人は目撃している。

 まさか⋯⋯ミズリおばあちゃんに何かあった?


 おばあちゃんは大丈夫なの? もしこの人がミズリおばあちゃんに何かしたのであれば⋯⋯


 全身の血が沸騰しそうになるのを感じる。


 ミズリおばあちゃんは僕の大切な⋯⋯おばあちゃんなんだよ⋯⋯



「え? ちょっと落ち着いて! 何を考えてるのかわからないけど、絶対そういう事じゃないから!」


「⋯⋯ミズリおばあちゃんに何かした?」


「何もしてない! 誓って言います。その人の事はわからないし、私はアークの敵じゃないわよ!」


「⋯⋯」


 もしミズリおばあちゃんに何かされたのであれば、勇者様だとしても戦おうと思った。

 でもそうでは無いらしい⋯⋯じゃあ何で僕の事を知っているんだろう?



「危険感知スキルが最大限の警鐘を鳴らしたわ⋯⋯本気で戦えば、私⋯⋯貴方に負けるかもしれないのね⋯⋯」


「⋯⋯」



 スカーレット様が飲み物を取り出した。それをグイッと飲み干すと、大きく一度息を吐く。


「私は本当にミズリおばあちゃん? って人は知らないわよ。私がアークを未来から来たと知っているのは、神獣様から聞いたからなの」


「神獣様って、黒狐様ですか?」


「ええ、そうよ。貴方も大変なのね⋯⋯」


「⋯⋯」



 そうなんだ。なら大丈夫かな⋯⋯ミズリおばあちゃんが無事で良かった。


 僕はいつの間にか立ち上がっていたらしい。安心すると、一気に力が抜けるのを感じる。

 そっとソファーへ座り直して、ガジモンさんからいただいたホールケーキを取り出した。


 甘い物食べれば落ち着くよね。色々びっくりし過ぎちゃって大変だ。



「美味しそうね」


「一緒に食べますか?」


「良いの?」


「どうぞ」


 ホールケーキにそのままスプーンを入れるなんて贅沢だよね。


 今、何の話をしてたんだっけ? いっか。とりあえずケーキ食べるぅ。


 スカーレット様もケーキが好きらしく、美味しそうに口へ運んでいた。



「私ね、初めて貴方を見た時、弟なのかと思って目を疑ったわ」


「似ているのですか?」


「そうね⋯⋯何ていうか、雰囲気がね⋯⋯もう一度会いたかったけど⋯⋯」



 会えないのかな? 勇者様の世界は遠いって聞くもんね。


 スカーレット様は一瞬だけ暗い顔をした後に、直ぐに笑顔に戻った。


「アークの故郷はどんな所?」


「とても田舎ですよ。今は少し発展してきたのですが──」


 僕がドラグスの話をしてあげると、スカーレット様は楽しそうに聞いてくれた。


 どんな人なのかと思ったけど、思ってたよりも普通の人なのかも。


 話終わる頃にはケーキも無くなっていた。お城の食事もあるかもしれないのに、結構食べちゃったね。



「アークは大切に育てられたのね。それなら良かった⋯⋯これからここは戦場になるわ。多分今夜にでも」


「今夜ですか?」


「ええ。大切な人がいるのなら、この国から直ぐにでも旅立たせなさい。それくらいなら、きっと黒狐様も許してくれる筈よ」


「許す? それはいったい⋯⋯」


「少し話し過ぎたみたい。もう時が迫っているわ。貴方達がこの世界にいられるのも今夜までよ」


「え!? そんな⋯⋯それは本当なのですか?」


「貴方達はこの戦いに参加出来ないの。決められた大きな流れも変える事は出来ない⋯⋯でも、最後に話が出来て良かった」



 どうしよう⋯⋯ラズちゃん、ライムお姉ちゃん、ティーナ、ガジモンさん、ハルキバルさん、皆に挨拶をしている時間も無い。


 スカーレット様は立ち上がると、僕の頭を撫でてくる。


「もう行きなさい。下の子は任せてくれて構わないわ」


 その顔は、少し寂しそうに見えた。


 今夜までと言うのであれば、グズグズしている時間は無い。


「住民の避難はどうなるのでしょうか?」


「後で兵士と一緒に避難させてもらうわ⋯⋯城の一部を解放する予定になっているの」


 なら大丈夫かな? 僕は誰にも死んでほしくはないんだよ⋯⋯


「私だって勇者なのよ? アークはまず自分がやらなきゃいけない事をやりなさい。」



「そう⋯⋯ですね。ありがとうございました。また会えますか?」


「⋯⋯勿論よ。早く行きなさい」


「はい。ではよろしくお願い致します」





 ちょっと難しい話が続きましたヽ('ㅅ' ;ヽ三 ノ; 'ㅅ')ノ

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