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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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レイナール・アス・デナートロス





 ハルキバルさんに紹介された服屋へ行くと、二十人以上の従業員に御出迎えされた。

 ここは貴族街の中でも多分最高級な品物を置くお店だと思うよ。

 規模は小さいけど、立派な宮殿のような内装だったんだ。


 金色の刺繍やよくわからない飾りは当たり前に付いていて、堅苦しそうに見えたけど意外と動きやすい。

 香水やハンカチ、艶やかな靴など全て用意されていた。


「どうですかな? 何か違和感はございますでしょうか?」


 年配のお爺さんが、大きな姿鏡を持って来る。


 うーん⋯⋯僕が僕じゃないみたい。善し悪しはわからないけど、お店の人のセンスを信じるとしましょう。


「大丈夫だと思います。今日はありがとうございました」


「馬車の準備もさせていただきました。どうぞこちらへ」





 大きな両開きの扉がゆっくりと開く。数十メートルもあろうかという紫色の絨毯が、玉座の前まで続いていた。



 緊張するな⋯⋯何で謁見なんてしなくちゃいけないんだろう。


 一歩部屋の中へ入ると、僕を射殺すかのような視線が降り注いできた。


 なんだろう⋯⋯この感じは⋯⋯?



 僕はそれに冷水を頭から被った気分になりながら、何とか平静を装って歩く。


 歓迎されている雰囲気じゃない⋯⋯明らかに警戒されている? 何故⋯⋯? 焦っちゃ駄目だ⋯⋯思えば、兵士さんの数がやたらと多いような気がする。


 謁見の間なのに、全員が全員武装しているみたいだよ。それに⋯⋯勇者様まで並んでいるみたい。


 その中には真子ちゃんもいた。気配ではわかってたんだけど、雰囲気が僕の知っている真子ちゃんじゃない⋯⋯


 余裕の欠片も感じられない目が、冷ややかに僕を見つめている。


 そんな時、体の中の魔力がざわついた。


 これは⋯⋯知っているね⋯⋯僕は今鑑定されているんだろう。



 ちょっと心の中がモヤモヤする。歓迎したくない相手なら、何で態々呼びつけたりするの? 報奨金なんていらないし、今直ぐここから逃げ出したい⋯⋯



 僕が足を止めると、更に場の緊張感が高まった気がする。


 鑑定をしている人間は直ぐに見つける事が出来たんだ。あれは魔導具なのかな?


 文官っぽい服装で、魔力を帯びたメガネをかけているね。人の隙間に隠れながらだけど、そんな事で騙されたりはしないよ。


 でもどうしよう⋯⋯こんな所で騒ぎを起こして、僕は無事に帰してもらえるのかな?



 わからない、わからないけど、勝手に鑑定を始めるのが悪い。


 気持ち悪い感覚に逆らって、魔力で違和感を弾き飛ばす。その瞬間、文官っぽい人が使っていたメガネにヒビが入った。


 少しざわめきが広がった。魔力を敏感に感じれる人ならば、僕が何をしたかなんてわかる筈⋯⋯


 勇者様の一人が、そんな僕の事を興味深そうに見つめている。



 一気に静まり返る謁見の間⋯⋯やっぱり僕は歓迎されてないんだね。王様のいる玉座の周りには、見えにくいけど結界が張られているみたい。


 小さく一度深呼吸をして、絨毯の上を再び歩いて行く。


 緊張するよ⋯⋯もう謁見はこれっきりにしたいなぁ。



 規定の位置で跪くと、重い沈黙が数秒続いた。



「面を上げよ」


 王様の許しをもらい、ゆっくりと顔を上げる。



 今まで会ってきたどの貴族様とも違う感じがするよ⋯⋯視線はとても冷たくて、油断無く僕を見つめていた。

 白髪に白い髭、彫りの深い顔で、50代半ばくらいに見える。


 体は筋肉質だと思う。それにそこそこ強そうな気がするね。



「お主が黄金の迷宮踏破をしたアークか」


 そう口にすると、王様の目が怪しく光る。


「余がレイナール・アス・デナートロスだ。その若さで英雄のような力を持ち、あの大魔法使いハルキバルをも超える逸材であるとか⋯⋯」



 王様は重い口調でそう言った。


 でも、精霊の力を使わないのであれば、ハルキバルさんに勝てるかはわからない。


 何か言葉を返さなくちゃ⋯⋯当たり障りの無い感じで。



「お褒めに預かり光栄でございます。ハルキバルさんはハイエルフのSランク冒険者様です。いつかは追いつきたいと思っております」


「その向上心や良し。あの忌々しかった黄金の迷宮を、お前は短期間で攻略してくれた。聞くところによれば、まだ六歳だというではないか。到底信じられるものでは無い⋯⋯が、実際に見てみると、お前ならばと思ってしまうな」


 少し恐ろしさを覚える視線だった。あの目は何を見ているのだろうか⋯⋯暫く見つめ合っていると、王様はそっと目を伏せる。



「今は少しでも多くの戦力を欲している。我が国に協力してはくれんかね?」


「王よ! なりませぬ! 素性の全く知れぬやつなのですぞ!」


 脂ぎった顔の男が一歩前に進み出た。

 体型は肥えていて、ズボンのベルトの上に腹の肉が乗っている。

 手には宝石の輝く指輪が沢山輝いていて、服装も贅沢を通り越して悪趣味な感じの人だった。



「直ぐに牢にぶち込むべきです! 魔王の軍が差し向けた刺客かもしれませぬぞ!」


「⋯⋯少し落ち着け、ガーリ卿」


「しかし!」


「下がるのだ」



 ガーリ卿が列に戻り、王様は溜め息を一つ吐く。



「アーク。国ではお前の素性を改めさせてもらった。しかし、何一つ情報が集まらなかった。デナートロスへ来る前の事が、余の情報網を持ってしても何も掴めなかったのだ。わかった事と言えば、最近家具を買い漁った事、甘い物が好きな事、オレンジとチキンを根こそぎ買い占めた事⋯⋯銀髪のメイドも連れていたと聞いた。そんなに目立つ行動をして、それよりも前の情報が何一つとして集まらん。まるで、最近姿を現したかのようではないかね?」



 心臓が跳ねたように高なった。この問いに、僕は何て返せば良いのかな⋯⋯







↓ボツにした話し。


パート1


「黄金の迷宮は、目の上の恥部であった」


「陛下! それを言うならタンコブでございます!」


パート2


「直ぐに牢にぶち込むべきです! 魔王の軍が差し向けた刺客かもしれませぬぞ!」


「⋯⋯少し落ち着け、ヤセガーリ卿」


 太ってるのにヤセガーリ!?



 ボツ話しでした(っ ॑꒳ ॑c)

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