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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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ティーナの夢





 朝になると、ビビは急いで帰っていった。

 きつく縛り過ぎたかもしれんと、不吉な言葉を残して⋯⋯



 ビビ何をしてきたんだろう?


 僕は自分の宿を飛び出して、早速ティーナの宿に向かったんだ。

 まだ外は暗くて、もしかしたら迷惑になるかもって少し考えました。すこ〜しだけね?


 ティーナとガジモンさんが泊まっている宿は、普通よりもランクの高そう。

 大通りに面した三階建てで、商人さんが利用しそうなイメージかな。


 ふむふむ⋯⋯空いてれば僕もこっちでも良かったかも。


 宿の入り口の大扉を開くと、正面には大きなカウンターがある。

 中は明かりは落ちていて、薄暗くて静かだった。


 ティーナは二階っぽいな。この階段から上がって行けば──


「ちょ、部外者が勝手に入っちゃ駄目でしょ?」


「あ、ごめんなさい」


 宿のお姉さんに見つかっちゃったよ⋯⋯隠れていた訳じゃないんだけど。


「すいません。ティーナに会いに来たのですが」


「こんな朝っぱらから通せる訳ないじゃないの⋯⋯お客様にもお伺いを立てなくちゃいけないのよ?」



 僕は銀貨を一枚取り出した。


「すいません。ティーナに会いに来たのですが」


「え? ちょ、だから駄目だって⋯⋯」



 僕は大銀貨を一枚取り出した。


「すいません。ティーナに会いに来ました!」


「え? あ、ん〜⋯⋯や、やっぱり駄目よ! これでもうちの宿は、安心安全を第一にお客様に提供するのが誇りなのよ!?」



 僕は金貨を三枚取り出した。


「ティーナに会いに──」


「こっちよ! 着いてらっしゃい!」



 良かったぁ。これが交渉ってやつだよね?


 マスターキーを持ったお姉さんが、良い笑顔で手招きしてくる。僕はその後ろを着いて行きながら、この宿は今後利用しない事に決めました。



「ありがとうお姉さん」


「も、問題だけは起こさないでよね?」


「うん。友達だから大丈夫」


「そ、そう。それなら良かったわ。貴方の分の朝食は必要かしら?」


「じゃあお願い致します」


 鍵を開けてもらい、ティーナの部屋に入れてもらう。ガジモンさんは隣の部屋かな?


 ティーナはまだぐっすりと眠ってるみたい。ちょっと早く来すぎたかな? ちょっとだけね?


「ティーナ〜起きてティーナ〜」


 ゆっさゆっさと体を揺さぶる。ミラさん程じゃないけど、ティーナも起きるまでに時間がかかるんだ。


「うぅ⋯⋯」


「ティーナ〜⋯⋯そんなんじゃ朝日見逃しちゃうよ?」


「⋯⋯朝日と競走さしてどうするべ? ふわぁあ⋯⋯おはようアーク⋯⋯」


「ティーナと遊べるのが今日で最後になるかもだから⋯⋯ビビもよろしくだってさ」


「今日で⋯⋯最後?」


「あ、いや⋯⋯」



 そうだよね⋯⋯いきなり最後って言われても、ティーナには理解が出来ないよ⋯⋯


 ティーナは上半身を起こすと、寝ぼけた顔で欠伸をする。

 ベッドに身を乗り出す僕を見て、頭をわしゃわしゃと撫でてきた。


「えへへ。何する? 遊びに行く? 訓練する? 遊びに行く? 訓練?」


「二度寝の選択肢はねーだべか?」


「ナイナイ。ナイよぉ〜。僕を寝かしつけたいならジャンガ⋯⋯zzZ」





 チュンチュンと、雀の囀りが聞こえてくる。


 ここはどこ? 何も見えない⋯⋯


 柔らかくて温かい何かに、顔がすっぽり覆われているらしい。


 いや⋯⋯うん、わかってる。僕はティーナに寝かしつけられたんだ。


 しかし、どうやって? 謎は深まるばかり⋯⋯僕を寝かしつけるなんて、ティーナはいったい何者なんだろう。


「あん⋯⋯んん⋯⋯はぁ⋯⋯ふぅ⋯⋯」


 ティーナの声が聞こえてきた?


「アーク⋯⋯あぅ⋯⋯そこは触っちゃ駄目だべ⋯⋯」


「? おはようティーナ」


 柔らかいからついモミモミしてたんだけど、顔を真っ赤にしたティーナが身を捩った。


「遊びに行く? 訓練する?」


「朝食にしようさアーク⋯⋯あん⋯⋯もう。メッ、だべよ」


 鼻の頭を突っつかれた。何がいけなかったのかな? もにゅもにゅ⋯⋯


「ん⋯⋯もう⋯⋯」


 んー、そう言えばお腹空いたかも? 外はすっかり日が出ているね。



 朝食を食べてから、僕はティーナとディナートロスを見て回る。


 飢えたアークが通りますぅ。オレンジは全部買いますよ。



「わだす、将来は魔導飛行艇を作ってみてーべよ。空を飛ぶ船って凄くねーべか?」


「かっこいいね! 僕も欲しいなぁ」


「だけんど、それには沢山のお金がかかるだ。お金を儲けるために、次はじいちゃとラパスの迷宮に行くつもりだべ」


 ラパスの迷宮? ラパスって国は聞いた事無いけど、この時代にはあるのかもしれないね。


「アークとビビは来ねーべか?」


「⋯⋯うん」


「そっがあ」



 着いて行けたらって思っちゃった⋯⋯僕にビビ達とティーナ。五人で迷宮に入ったら楽しそうだよね。


 ビビが手加減無しに魔物を蹂躙して、それを見たティーナがドン引きする。ライムお姉ちゃんが魔物に啖呵を切って、逆に返り討ちにあったり⋯⋯ラズちゃんは好き勝手に動きそうな気がするんだ。


 想像するととても面白そう。



「ねえティーナ」


「なんだべ?」


「あ、やっぱり何でもない⋯⋯」


「⋯⋯」


 時間が過ぎるのは早かった。どうして楽しい時間はあっという間なのかな? 気がつけばすっかり日が落ちてるんだよ⋯⋯


 夜の公園で、ティーナと最後のお話をする。


 どうやらこの時代には、魔導飛行艇ってまだ無いみたいだよ。


「ほえぇ⋯⋯プロペラだべか⋯⋯アークは面白い事をいっぱい考えつくだなぁ」


 僕の見た事がある魔導飛行艇は一つだけど、参考までに少し話をしておいた。

 ティーナはメモを取りながら、完成予定の絵を描いていく。


 絵っていうか設計図みたいな? きっとティーナならいつか魔導飛行艇を作れるかもしれないね。



「ティーナ、いつか僕の船を作ってね」


「アークは気がはえーべ。まだまだ先になるだべ」



 僕はノームの力で丈夫なテーブルを作る。首を傾げていたティーナの前に、ディナートロスの金貨を取り出した。


「なっ!!!」


 ティーナは驚いてガバッと立ち上がる。迷宮の奥には金貨の山があったんだけど、ティーナはそれを見ていないからね。



「金貨十万枚。これくらいなら収納袋に入るかな?」


「こ、こんな大金⋯⋯見た事ねー⋯⋯」


 僕の時代の魔導飛行艇でも、あのサイズで最低金貨五千枚って言ってたと思う。

 ティーナが一から魔導飛行艇の研究をするのならば、多分この額でも足りないと思うんだ。

 迷宮で見つけた金貨のほんの一部だけど、受け取ってくれたら嬉しいなぁ。



 ティーナが俯くと、啜り泣くような声が聞こえてきた。


「え? どうしたの? 何で泣くの?」


 僕はティーナを喜ばせたかったのに⋯⋯


 慌てていると、ティーナがゆっくりと顔を上げた。


「⋯⋯だっで、魔導飛行艇の話を馬鹿にしねーで聞いてくれたがら⋯⋯」


「⋯⋯馬鹿にする訳ないよ?」



 馬鹿にする訳は無いけど、そっか⋯⋯この時代には無い物だから、周りから理解されなかったのかも⋯⋯だからティーナは、今まで僕とビビに夢の話をしなかったのかな?


「アークだけだべ⋯⋯わだす⋯⋯絶対に魔導飛行艇さ完成させるべ! もっど沢山勉強さして、まずは立派な魔導具職人になるべ。そしたらこのお金使って、すっごい船さこさえるべよ」


「うん。きっとティーナなら出来るよ」



 メガネを外して、ティーナの涙を拭ってあげる。





 宿へ戻り、お風呂へ入ってさっぱりとした。


 今日は楽しかったなぁ⋯⋯ティーナの夢が叶いますように。

 ティーナとガジモンさんは、あと二日でディナートロスから旅立つって言ってたんだ。


僕がベッドに横になると、ビビがベランダからひょっこり顔を出す。


「今日も来てくれたんだね。向こうは大丈夫?」


「ああ、もっときつく縛⋯⋯寝かしつけても平気そうだった」


「ラズちゃんもライムお姉ちゃんも寝るの早いね」


「それよりも、明日は城へ行くんだろ? 準備は大丈夫なのか?」


 ビビがパジャマに着替え、昨日と同じようにベッドに入って来る。


 そうなんだよね⋯⋯明日はお城に行かなきゃいけないんだ。

 貴族様と会うのは緊張するなぁ。勇者様達にも会えるかもしれないね。





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