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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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大人になれないアーク





 あ、ティーナみっけ! あれ? 何してるんだろう?


 ティーナは黄金のピラミッドの一番下の段にいるみたい。何人かの人を連れて、何かを調べているみたいだね。


 僕が歩いて近づいて行くと、気がついたティーナが手を振ってくれている。


「アーク。いつ戻って来ただべ?」


「今戻ったばかりだよ。何をしているの?」


「これだべ」


 ティーナの視線の先では、黄金のピラミッドが石化し始めていた。


 そっか、迷宮コアも管理するマスターもいなくなったから、段々こうなっていくんだね⋯⋯


「朝立派な鎧の騎士様が来てな、今ならこのピラミッドを解体出来るんでねーかって⋯⋯でもやっぱり傷一つつかねーだよ」


「なるほどね⋯⋯そう言えば黄金みたいに見えるし、持って帰れれば凄い事だよね」


「だどもやっぱり駄目だぁ。今まで持ち帰ろうとした人が何人もいたべ。全く歯が立たなかったけんど」


 すっごい黄金だもんね。でも僕はあまり興味無いかな⋯⋯黄金なんかよりも、ティーナと離れたくない⋯⋯



「ええい! 進展はあったか!?」


 誰かが僕達へ近づいて来る。


 立派な鎧の騎士様? 僕に招待状を持って来た兵士さんとは違うみたいだね。


「騎士様、やっぱり不可能かと思います。削る事はおろか傷一つつきません」


「無能が! これだから平民は信用ならん! 報酬は無しだ!」


 何か酷そうな人だなぁ⋯⋯


 その人はストレスを発散するように怒鳴り散らした後、周りの人を見下しながら去っていった。



「ふぅ⋯⋯こんな事してても意味ねーべな。このピラミッドは、多分魔術で光らせてるだけだべ」


「さっきの人はお金が欲しかったのかな?」


「御貴族様っていったら皆あんな感じだべよ。だから誰も反論なんかしねー。逆らえば首落とされちまうべ? アークも気をつけなきゃいけねーべよ」


「わかった。ありがとうティーナ」


 貴族様って怖いんだなぁ⋯⋯お城へ行く時は気をつけなくちゃ。



「ビビはどうしたべ? それに、なんで迷宮潜って仲間が増えていただ?」


「あはは。ラズちゃんとお姉ちゃんの事は気にしないで。ビビは家で待機中だよ」


「ふむ⋯⋯そっが」



 気になっているみたいだけど、ティーナは追求をしないでくれた。


 あまり時間も無いから、僕はギリギリまでティーナにまとわりつく。デナートロスまでは、あっという間に到着してしまった。


 むぅ⋯⋯仕方ない⋯⋯


「ティーナの両親は?」


「ドゥーフライリっていうドワーフの国さいるだべ。たまにじいちゃと帰るだべよ」


「そうなんだ。ドワーフの国、行ってみたいなぁ」


「あまりお勧めはしねーべ。ドワーフの国は、ドワーフ以外にちょっと冷てえだべよ。アークさなら大丈夫だと思う⋯⋯けど、良い気はしねーど?」


「僕は世界中を自分の目で見たいんだ。だからドゥーフライリ? そこもいつか行くと思う」


「そん時は歓迎するべ」


 ティーナとゆっくり話せる時間も、後どれくらい残されているんだろう。


「ねえティーナ。デナートロスには何日滞在するの?」


「じいちゃ次第だべが、多分二、三日になると思うだ」


「そっか、ならさ──」



 明日ティーナとまた会う約束をして、この日は別れる事にしたんだ。お互い用事が沢山あるからね。

 泊まる場所として、僕は夜景の見渡せるらしいちょっと豪華な宿を予約した。一泊金貨一枚なんだけど、金銭感覚がもうよくわからないよ。



 大人数で移動して来たから、安宿は直ぐに埋まっちゃったんだ。殆どの人は冒険者ギルドへ行って、国からの報奨金を貰うんだって。それから皆別々に旅立って行くらしい。

 次の迷宮へ行く人や、実家へ帰る人が殆どかな。


 冒険者ギルドでお金を受け取れるなら、僕もそうして欲しかったなぁ⋯⋯何で僕だけお城なんだろう。



 冒険者ギルドへ行くと、ハルキバルさんが自ら出迎えてくれた。知名度が高いしSランクだから、そこにいるだけで注目されているね。


「アーク様。まさかこんなに早く迷宮を攻略してもらえるとは思いませんでした。とても感謝しております」


「迷宮は色々ありましたが楽しかったですね。それと、ちょっと書き物道具の件で話があるんですけど」


「では応接室までおいで下さいませ」


 僕とハルキバルさんの会話に、聞き耳を立てる人が多過ぎる。何があるかわからないから、警戒しといて損はないかな。



 応接室へ案内されると、僕は早速本題から話す事にする。


「お城は影なんです?」


「⋯⋯」



 お城にいるライムローゼ様は影武者なのですか? と暗に聞いたつもりだった。

 確信を持っているとはいえ、一応確認しておかなくちゃ。


「⋯⋯その通りです。申し訳ございません」


 僕は怒っている訳じゃないんだけど、ハルキバルさんが脂汗を流し始める。

 まあ普通怒られても仕方ないもんね⋯⋯僕は知らないうちに大きな問題を抱え込まされていたんだから。


「それは別に構いません。今外に出てきちゃっているので、連れて来るのはやめておきました」


「なるほど⋯⋯何処に刺客がいるかわかりませんからな」


 まったくだよ! でもライムローゼ様を預かったからには、責任を持って守らなくちゃね。



 依頼は続行する事になり、城へ行くための衣装はハルキバルさんが用意してくれる事になった。





 宿へ戻って夕食と贅沢なお風呂をいただく。


 でも一人は味気無い気分なんだ⋯⋯美味しい物も良い景色も、分け合う人がいてこそだと思う。


 何でこんな気分になっているのかと言えば、初めての一人の夜だからかもしれないね。


 高級宿のベランダに立ち、パジャマ姿で夜風を浴びた。


 松明の明かりや魔導具の光が見える。


 きっと魔導具の光が集まる場所が貴族街⋯⋯結構くっきり分かれているんだね。



「さ、寝よう」


 僕はベッドに入ると、一人から逃げるように大きな枕を抱きしめた。


「⋯⋯」



 一人は慣れないな⋯⋯何だか静か過ぎる。


「ビビ⋯⋯」


 いつもならビビがいてくれるんだ。ドラグスを離れてからずっと⋯⋯だからビビがいない夜は変な気分になる。




「呼んだか?」


 え?


 声のした方向をみると、ビビがベランダから入って来たらしい。

 何でこんな所にいるんだろう?



「皆は?」


「大丈夫だ。ちゃんと縛⋯⋯眠らせてきたよ」


「そうなんだ」


 良かった。ビビが入れば寂しくない⋯⋯はぁ⋯⋯僕今すっごく安心したよ。ビビが来てくれてとっても嬉しい。



「ビビ聞いて」


「ん? 何かあったか?」


 ビビはパジャマに着替えると、直ぐにベッドへ入って来る。

 優しく微笑みながら、僕の頭を撫でてくれた。


 特別話す事も無いんだけど、とりあえず何か喋りたかったんだ。










 お城は次になりました:(;゛゜'ω゜'):

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