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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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ヨコチンさん達との別れ





 宿の食堂で兵士さんに招待状を渡される。兵士さんは用事が済むと、踵を返して帰っていった。



 それにしても、見た目からして豪華な招待状だなぁ⋯⋯迷宮を攻略すれば、国からお金を貰えるってハルキバルさんが言ってたっけ。


 でもいきなり過ぎてびっくりです。あぁ、どうしよう⋯⋯また貴族街で服を作った方が良いよね? イグラムで使った衣装だと、時代的に浮いちゃいそうな気がするんだ。


 今日はビビとラズちゃんとライムローゼ様を、鳥さん達が何故か増える隠れ家に連れて行こう。それから僕だけ戻って来て、ガジモンさん達とデナートロスへ出発する。

 向こうに着いたらハルキバルさんにライムローゼ様の事を報告しなくちゃだね。


 うん。やる事がいっぱいだ。


 黒狐様に支持されている訳じゃないから、別にこの世界の人に合わせる必要は無いのかもしれない。

 別にお城へ行かなくても⋯⋯



 ──ピカ!



 頭上が光ったと思ったら、紙がふわりと落ちて来る。


 黒狐様の指示かな? えーと、



《城へ行け》


「ッ!!!」



 黒狐様は僕の心の中を読んだのかな? も、元々ちゃんと行くつもりだったんだよ? 嘘じゃないもん。





 はい、という訳で、



「皆ただいま!」


「クルルウェ! クルルウェ! クルルウェ!」

「クルルウェーーーーーイ!」

「フゥーワフゥーワクルルウェーイ!」

「ホーー⋯⋯ホケキョ!」

「フーワッフーワッフーワッフーワックルッルウェーーイ!!!」

「クルルウェッヘッヘッヘッヘ」


「おーよしよしよしよし! 元気にしてた? 昨日ぶりだけど会いたかったぁ!」



 もっふもっふと鳥さん達を撫で回す。


 あ〜気持ち良い⋯⋯最高のもふみがここにある!


 ラズちゃんも大喜びで鳥さん達を抱きしめている。あら? ライムローゼ様が喧嘩を売られてる?


「くぅ⋯⋯なんだその舐め腐った目は! 妾を高貴な魔族の姫と知っての所業か!」


「クックックックッ⋯⋯」

「クルルウェ〜〜〜イ」

「プークスクスクルルウェ〜イ」


「⋯⋯こ、このー! もう許さん! 成敗してくれるわ──あ、あた、あ痛たたた⋯⋯痛い、痛い、痛いやめて〜! 突っつかないで! お、お願いだから! お願い⋯⋯謝るぅ〜謝るからぁ! 何でもします。ごめんなさいぃ」


「「「⋯⋯」」」



 ライムローゼ様⋯⋯んーん⋯⋯ライムお姉ちゃんは、もう鳥さん達には逆らえないだろうね。



「ビビ、僕三日くらい帰らないから、二人の事よろしくね」


「私は着いて行かなくても良いのか?」


「んー⋯⋯だってラズちゃんとライムお姉ちゃんを放置は怖過ぎる」


「⋯⋯確かに」



 ビビに必要な物を余分に渡しておこう。僕の血も沢山ビビに預けて、遠慮なく使うように言う。


「もう行っちゃうの?」


 ラズちゃんの尻尾が、僕の右手の小指に絡んで少し引っ張ってきた。

 背中で腕を組み、上目遣いで僕の顔を見てくる。


「少しの間大人しくしててね。ビビを困らせちゃ駄目だよ?」


「はーい。良い子にしてまーす」


 ラズちゃんが凄く上機嫌なのは、知らない物を沢山見て楽しいからかも。

 ライムお姉ちゃんもビビも、そんなラズちゃんの質問にちゃんと答えてあげている。


 僕は気兼ねなく家を空ける事が出来そうだ。





 迷宮に戻ると、入り口の外に様々な物が運び出されていた。滑車を複数繋げて使い、重そうな物も張られたロープから運んでいるよ。


 酒場にいた踊り子のお姉さん達が、村娘のような格好をしていた。店主さんもいたので、一応頭を下げでおく。


 ティーナは何処かなー? まだ迷宮の中なのかな?


「おい、お前」


 僕を呼び止めたのはヨコチンさんだった。何をするのかと思えば、いきなり頭を下げられる。


「すまなかった」


「え?」



 ヨコチンさんは頭をボリボリと掻くと、真剣に僕を見つめてくる。きっと迷宮での事だよね。



「仲間に言われたんだよ。お前がいなかったらまずかったって⋯⋯だからよ⋯⋯ありがとう」


 まさか御礼を言われるとは⋯⋯ヨコチンさんのキャラじゃない気がするけど、ちゃかして良い感じじゃない。


「いえ、助けられて良かったです」


「⋯⋯これは借りだ。何かあれば言ってくれ」


「わかりました」



「俺にも⋯⋯子供が出来たんだとよ⋯⋯」


「え?」


「⋯⋯何でもねえさ」



 最後は声が小さくて聞こえなかった。ただ、少し気恥しい感じだったような?



 ヨコチンさんが去り、後ろから来ていた三人にも深々と頭を下げられた。



「兄貴を救ってくれてありがとう⋯⋯最大の感謝を」


「本当にありがとう⋯⋯」


「⋯⋯助けられて良かったです。お元気で」


 僕がそう言うと、男性のうちの一人が仮面を外したんだ。迷宮で最後に倒したゾンビのように、その顔は悲惨な事になっている。


「貴方には顔を見せたいと思いました。本当にありがとう⋯⋯」


「いーえ」


 顔が奇形しちゃってるんだね。だから普段から仮面で顔を隠しているんだ。

 んー⋯⋯



「あの、余計なお世話かもしれません⋯⋯気分を悪くされるかもしれないのですが⋯⋯」


「何でも仰ってくれて構いませんよ」


 にこやかに笑う顔を見て、僕は教える事に決めたよ。



「ケットシーには変身の魔術が伝わっているそうです。ケットシーならば、その顔もどうにか出来るでしょう」


「ッ!! そ、それは本当ですか!?」


「はい。人伝に聞いた話になりますが、一度伺ってみると良いかもしれません」


「あ、ありがとうございます⋯⋯ありがとうございます!」



 良かった⋯⋯余計なお世話だって怒られなくて。

 きっとコンプレックスだから隠しているんだよね⋯⋯地雷を踏みそうで怖かったけど、喜んでもらえてホッとしたよ。


 名前もわからないけど、僕はこの三人が好きだなぁ。


 去る背中を見つめながら、僕はそんな事を思った。



 ティーナとも別れが迫っているんだね。ガジモンさんとも⋯⋯


 出会いがあれば別れもある。当たり前の事なんだ⋯⋯ただ、やっぱり悲しいなぁ。



 ⋯⋯元気出して頑張ろう! さてと、ティーナを探さなくちゃ。







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