ライムローゼ様
転移して来た場所の輝きに、僕らは目を奪われた。
「ふわぁー」
「宝物庫か?」
金銀財宝が山のように積まれていて、それがキラキラと輝いている。
こんなに沢山あるとびっくり⋯⋯なんだがわからない魔導具も沢山あるよ!
とりあえずのお約束をしなきゃ!
「それ〜」
──ガシャーン⋯⋯
金貨の海に飛び込んだ僕⋯⋯身体中が痛い!?
なんかもっと、わはははははってなるのかと思ってたよ。
「迷宮の奥には財宝が眠ると聞く。だがまさかこんなにあるとはな」
「凄い量ね。宝箱も沢山あるわ」
金貨はこの国のやつみたいだね。どうしよう⋯⋯これだけあれば宮殿をいくつも建てられるよ。多分。
財宝をベッドにして仰向けになる。それにしても凄いや⋯⋯ツボが刺激されて良いかもしれない。
「アークちゃん」
ラズちゃんが僕の上にのしかかってきた。すっごくニコニコしながら見つめてくるよ。
僕と遊びたいのかな? ラズちゃんの事は殆ど知らないんだけど、迷宮ではどんな風に過ごしていたんだろう。
「うむぅ⋯⋯苦しい。あ、ラズちゃんは小さくなれたりする?」
「うん。ずっとは無理だけどなれるわよ」
僕の上に跨ったラズちゃんが、光りながら小さくなった。
ビビもラズちゃんも自由に体を変化出来て良いなぁ。僕は大きくなりたいよ。
「これあげる。僕のメイド服」
「メイド服好きなの?」
「仕事でもらったんだよ」
ビビもいつの間にか小さな姿に変わっていた。ラズちゃんはビビのメイド服を見て、直ぐに自分もと着替える。
「どうかな? アークちゃん」
「うん。似合ってると思う」
ラズちゃんもビビもお人形さんみたいだね。
財宝の山を一気に収納していくと、便利な収納袋もいくつか発見する。
試してないからわからないけど、多分容量が大きなやつじゃないかな?
わ! ポーションバックもあるじゃん。大きな魔石も見つけたよ。
魔武器も面白そうな魔導具も沢山発見する。
衝撃波を出せる笛、魔力を雷に変えるガントレット、空を飛べる靴、お酒の湧き出る聖杯、何かの魔術書、紳士の七つ道具? なんだろこれ⋯⋯
蓋を開けてみると、小物が七つ入っていた。赤い指輪をつけてみると、体が少し細くなった気がする?
あれ、これって⋯⋯女の子になっちゃう指輪なんだね。
外してみると元に戻った。お手軽な変身魔導具みたい。
メガネは透視出来るようになるらしい⋯⋯ラズちゃんの尻尾の付け根がよく見える。透明になれるブレスレット、他にもあるけど今はしまっておこうかな。
ん? これは⋯⋯
「魔装見つけた。魔力がかなり高い」
ベヒモスみたいにペンダントになっているね。展開はしてないけど、独特な雰囲気で魔装だと確信出来た。
「それが一番の当たりかもしれないな」
「魔装?」
「うん。これはラズちゃんが持ってて」
「良いの?」
「ビビは使わないし、僕にはベヒモスがある」
「ありがとう。アークちゃんからのプレゼントね」
帰ったらゆっくりと他の魔導具も見よう。
財宝を全て回収して、僕達はまた魔法陣に乗った。
さっきの部屋に戻ったんだけど、緑の髪の人が見当たらない⋯⋯どこに行っちゃったのかな?
魔法陣は残り3つかぁ。とりあえず次の魔法陣に乗ろう。
「なんかワクワクする」
「私もよ。初めての場所は楽しい」
次に入った部屋は、酷い悪臭にまみれていた。
なんだろう? ⋯⋯ここは?
「拷問部屋か⋯⋯悪趣味な」
ビビが木で出来た馬を蹴飛ばした。
「アークちゃん。私これ欲しい」
「え?」
「手錠とか素敵じゃない?」
「よくわからないけど、ラズちゃんが欲しいなら収納するね」
「ありがとう。うふふ」
ラズちゃんが凄く嬉しそう。他にも魔導具があったから回収しておく。
僕達は直ぐにまた戻り、三つ目の転移陣に乗る。
「ここは?」
「当たりかな」
そこはプライベートスペースのような場所で、家具やらベッドも色々あった。
特に見るものは無さそうなんだけど⋯⋯
「アーク、多分あれが迷宮のコアだと思う」
「じゃああれを破壊すれば良いって事?」
「おそらく」
*
結局迷宮のコアは壊さずに回収したんだ。前に真子ちゃんが迷宮のコアで魔導具を作ってたんだよね。あれと同じ物が作れたらいいなぁって思ったんだ。
また魔法陣に乗って元の部屋へ戻ると、啜り泣く声がどこからともなく聞こえてきた。
「妾をお姉ちゃんと言ってくれたではないか⋯⋯グス⋯⋯あやつは何処へ行ったのじゃ⋯⋯妾を一人にしないでおくれ⋯⋯」
「「「⋯⋯」」」
「はっ!」
目が合う僕達。暫く固まっていた緑の髪の人は、凄い勢いで僕の方へ走り出した。
「お主! やっと見つけたー!」
「お、“オーロラカーテン”」
「っ! ふぎゃっ!」
あーびっくりした。この人ってもしかしたら、ハルキバルさんが言ってたライムローゼ様だよね? 万年筆が無限収納にしまえなかったから、おかしいとは思ってたんだ。
そうなると、お城で勇者様に護られてるライムローゼ様は影武者って事?
だから一日金貨10枚もの大金が支払われていたんだね⋯⋯はぁ⋯⋯僕にこっそりライムローゼ様を預けたのは、僕の事を知る人が少ないからだ。
他にも色々な理由がありそうだなぁ⋯⋯帰ったらハルキバルさんに会わなくちゃね。
ビビが即座に緑の髪の人を魔法で縛った。そこまでする必要は無いと思う⋯⋯
「だ、大丈夫?」
「顔が潰れたわ! お主、ここは何処なのじゃ?」
「デナートロスから一番近い迷宮の最下層だよ」
「め、迷宮じゃと!? しかも最下層!?」
すっごく驚いているみたい。
「名前を教えてくれる?」
「ふん! 聞いて驚け! 妾は魔族の姫! ライムローゼじゃ!」
「だと思った」
「なんじゃとお!!!」




