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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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ダンジョン完全攻略





 青い炎に導かれ、奥へ奥へと進んで行く。


「あれかな?」


「扉か⋯⋯」


 ビビが赤い玉を無造作に撃ち出すと、その扉は木っ端微塵に吹き飛んだ。


「ノックとは難しいものだな。アーク」


 ビビがいつものビビになってるよ。

 余裕がありそうに見えるけど、まだきっと痩せ我慢だね。


 僕は気が付かないフリをしつつ、ビビの腕を優しく撫でた。



「クソ、ドモガ⋯⋯」


 怒りの表情を浮かべるゾンビがいる。恐ろしい程の殺気を放っているけど、僕にはそれが涼しく感じた。

 顔はグズグズに爛れ、目は片方が無くなっているらしい。


 ガタイは良くて二メートルくらいあるかな。右手には宝石の散りばめられた魔剣を握り、左手にはラウンドシールドを装備している。



「君、強そうじゃないね」


「ナメル、ナ! ホンキ、ダセバ、オマエナド、テキ、デハナイ! バケモノ、ニンゲン!」


 魔物に化け物って言われる日がくるなんてね。


「うぅ⋯⋯」


「ラズちゃん」


 ラズちゃんの瞼が震えると、ピンク色の綺麗な瞳が現れた。

 薄らと光る瞳が僕を捉えると、直ぐに涙を溜め始める。



「ご、ごめんなさい⋯⋯ごめんなさいアークちゃん⋯⋯」


「ビビ」


 ビビがラズちゃんの拘束を解いて床に降ろした。

 その場に力なく座り込み、膝を抱えて顔を埋める。


 励ましてあげたいけど、今は後回しかな。


「ラズちゃん。スキルを使えるようにして欲しいんだけど」


「⋯⋯ごめんなさい。私のユニークスキルは、どんな相手のスキルでも封じる事が出来るスキルなんだけど、一度使うと最大一時間はそのままなの⋯⋯効果時間はランダムで、いつ切れるかは私にもわからない。その──」


「わかったよラズちゃん。そんなに悲しそうな顔をしないでも大丈夫。それに、ラズちゃんは何も悪くない」


「アークちゃん⋯⋯」


「悲しい顔はしないで、ラズちゃんには笑顔が似合うと思うんだ」

「エロ顔の間違いじゃないか?」


 ん? エロ顔って何? ビビの顔を見ると、『あ、やべぇ』みたいな顔をしていた。

 気になるけど、とりあえず今は後にしよう。



「ビビ、ラズちゃんをよろしく」


「大丈夫なのか?」


「うん」



 よく周りを見渡して見る。


 この部屋は大きな円形になっていて、壁際に四つの魔法陣が描かれていた。


 多分あれは転移の魔法陣かな⋯⋯


 ゾンビは部屋の中央で剣を構えている。

 不用意に攻撃して来ないのは、こちらにビビがいるからだよね。


 僕がゾンビのいる中央へ歩いて行くと、その腐った顔でニヤリと笑った。



「スキル、ナイ、ニンゲン、タダノ、ザコ、メ」


「⋯⋯」



 確かに今の僕は弱いよ。でも、こんな奴に負ける程じゃない。


 朧の夜桜を抜くと、青い炎の松明が激しく燃え上がった。一気に部屋の中が明るくなり、天井から鉄格子のような物が落ちて来る。



「クケケケケ、オマエ、モウ、ニゲラ、レナイ」


「逃げる、気、ない」


「チッ」



 ラズちゃんにあんな事をさせた元凶で、ヨコチンさんが狂ったのもこのゾンビのせい。



 戦いは唐突に始まった。


 ゾンビが床を蹴り、大振りな袈裟斬りを仕掛けて来る。

 僕は朧の夜桜で、その斬撃を横方向の力で()なした。


 悔しそうな顔をしたゾンビは、続いて横薙ぎの一撃を放って来る。



 そうか、僕のスキルが戻らないうちに倒そうと思ってるんだね。


 単調な攻撃だ。


 横薙ぎされた剣を、下から巻き上げるように振った刀で弾き上げた。突きをされれば横にずらし、また袈裟斬りも同じように対処する。



「ナゼダ⋯⋯ナゼダナゼダ! アタレ、アタレアタレ!」


「⋯⋯」



 僕はこの場から一歩も動いていない。ゾンビもそれに気がついた様子で、更に力を込めて襲いかかって来る。



「クラエ⋯⋯“アシッドジャベリン”!」


 近距離からの特殊な魔法みたい。でもそんなものは、イフリンの力で焼き付くさせてもらった。



「ナ、ナンダト!」


「油断大敵」


 明らかにゾンビが動揺しているところへ、床から尖った岩が無数に飛び出してくる。



「ナゼダ! ナゼダー! ナニヲシテイル!?」


 岩は次々とゾンビの体へ突き刺さった。


 説明する義理は無いと思う⋯⋯ノーム様、、ノームに感謝しなくちゃね。



 朧の夜桜へ力を流し込んだ。きっとこれが最後になる⋯⋯長かったなぁ⋯⋯


 青白い炎が刀身を包み、ノームの力で強度を上げる。これにムーディスさんの力を合わせ、ゾンビの頭へ振り下ろす。



「マ、マイッタ、コウサン、コウサンダ──⋯⋯!! ヒギャァァァアアアア⋯⋯グゴオェゥガアァァアア!」


「もう終わりだよ。手加減しなかったから、直ぐに楽になる⋯⋯」



 ゾンビの体が燃え上がり、直ぐに悲鳴は聞こえなくなった。


「終わったな」


「終わったね、ビビ、ラズちゃん」



 僕は初めて迷宮をクリアした。何だか嬉しいな。


「ん〜っ!! スッキリした!」


「色々あったな」


「そうだね⋯⋯でも全体的に見たら楽しかったよ」


「⋯⋯私も楽しかった。ティーナはどうしているかな」


 どうしているだろうね。まあ、思ったよりも階層が少なかったから、まだ迷宮の外は夕暮れ時だと思う。


 ラズちゃんが僕達を見ながら、少し羨ましそうにしているみたい。


「ねえラズちゃん」


「なーに?」


「テイム出来るか試してみる?」


 ここは黒狐様に連れて来られた世界だけど、もしかしたらテイム出来そうな気がしたんだ。


「良いの? 私の事、信じてくれるの?」


「勿論だよ」


 ラズちゃんが視線を落とし、自分の両手を眺める。


「私⋯⋯全部覚えてるの⋯⋯アークちゃんを貫いた手、ビビを殴った拳⋯⋯勝手に動いちゃう体が怖くて、もう私が私じゃないみたいで⋯⋯」


「それは⋯⋯」


「わかってる。でも⋯⋯怖いわ⋯⋯怖い⋯⋯どうしても体が止まってくれなかったの⋯⋯さっきの事を、私⋯⋯何度も何度も思い出しちゃうの⋯⋯」


「⋯⋯」



 ラズちゃんはさっきの事が相当ショックだったらしい。ガタガタと震えながら、大粒の涙を流している。


「私は自分が信じられない。名前をくれたアークちゃんを、私は殺そうとしたんだから」



 僕は少し浮き上がり、ラズちゃんの頭を抱きしめる。こういう時は身長が低いと不便だなぁ。


「わかった。焦らないで良いんだよ。もし僕もラズちゃんと同じ事になったら、怖くて仕方ないかもしれないもん。ゆっくりで良いから、今は僕とビビに着いておいで」


「アークちゃん⋯⋯ありがとう⋯⋯」


 泣くラズちゃんを暫くあやして、何度も頭を撫でてあげた。


 ゆっくりで良いんだよ。僕とビビが傍にいてあげるからね。ラズちゃんが泣き止んだら眠らせてあげたいけど、今はこの部屋を調べないと⋯⋯



「ありがとう。もう大丈夫」


「いーえ」


 ラズちゃんが微笑んでくれる。これで一安心だ。何だか頬までピンク色になってる? 尻尾が僕の足に絡みついてきた。


「良い匂い⋯⋯」


「おいラズ。そろそろアークから離れろ」


「嫌。まだ怖い」


「この!」


 ビビが僕からラズちゃんを引き剥がそうとしてくる。でもラズちゃんの腕が僕の背中に回されていて、なかなか上手くいかないみたい。


「アークちゃん素敵。アークちゃん可愛い」


「ラズちゃん?」



 そんな事をしているうちに、僕のスキルも戻ってきたみたい。


 ラズちゃんが元気になってきて良かった。これでヨコチンさんも助かるはずだよね。


 ザルのように間隔の広い鉄格子の間をすり抜けて、一つの魔法陣の前に立つ。


「どれに入ったら良いのかわからないね」


「罠は無いとは思うが、気をつけた方が良いだろうな」


「私もわからな〜い。どれでも良いんじゃない?」



 どれも似たような魔法陣なんだよね。どれが正解なんだろう⋯⋯


「お〜い! お主! お主や〜い!」


 遠くから緑色の髪の人が走って来た。


 で、でも、まずは迷宮の魔法陣が優先だよね!


「さあ行くよ!」


 僕が魔法陣の中に入ると、続いてビビとラズちゃんも飛び込んで来た。



「ちょ! ちょま! お主! わざとなの!? わざとなの!?」


 その言葉を最後に、僕達の体が光に包まれた。







 迷宮がやっと一段落(´>∀<`)


 でもこの章の本番はこれからだ\( 'ω')/

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[一言] 緑の人残念系キャラになりそうで楽しみ!笑笑
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