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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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四十六階層へ





三人称視点



 ガジモンは一階層の転移所へ戻り、まずは町で主要な人物達を急遽集める事にした。

 職員達が町中を駆け回り、慌ただしく声を張り上げて回る。今転移所のグラウンドには、錚々たる顔ぶれが並んでいる。


 踊り子の舞う酒場の店主。迷宮のドロップ品を売り捌く夫婦。宿泊施設を一括管理している男。様々な人達の協力があり、この町は維持されてきたのだ。


 ダンジョンマスターがいなくなれば、数日で迷宮は消えて無くなる。

 まだアークが攻略出来ると決まった訳では無いが、身支度を始める必要があるとガジモンは考えていた。


 もし迷宮が攻略されるのであれば、冒険者ギルドにも連絡をして、人の移動も手伝ってもらわなきゃいけない。



「じいちゃ⋯⋯アークが最深部へ向かったってどうゆう事だべ!?」


「ティーナ⋯⋯落ち着──」


「落ち着ける訳がなか!! どうして止めてくれんかった!? もう会えなくなるかもしんねーべ!!?」


 ティーナがガジモンの胸を叩く。アークとビビがどんなに強くとも、絶対生きて帰れる保証は無い。

 アークとビビはティーナにとって、血を分けた妹弟のように想っていたのだ。


(今直ぐ二人を追いかけたいべ⋯⋯でも、わだす一人じゃどうにもなんね。今から行っても絶対に追いつけねーだべな⋯⋯わだすも着いていぎだがっただべよ⋯⋯)



「無事で⋯⋯無事で帰って来て欲しいだべよ⋯⋯」


 ガジモンはそんなティーナの背中を撫でた。


「大丈夫だティーナ。アークは必ず成し遂げるだろう。本当に⋯⋯底の見えん子供だな」


 アークがどんな人生を送ってきたのか。あの強さを手に入れるために、いったいどんな苦労をしてきたのか。ガジモンはアークの過ごした壮絶な環境を想像して、勝手に目頭に涙を溜める。


 実際アークの過ごしてきた日々は、信じられない程に壮絶なものだ。それでも優しい沢山の大人がアークを支え、笑顔の耐えない日々であったのだが⋯⋯

 ガジモンの頭の中では、アークは鬼のような人間に厳しく鞭を振るわれている姿だった。


(帰ったら⋯⋯もっと優しくしてやらのばな⋯⋯肉だ! 肉を用意せねば!)


 ドルトーニ、アウグシィス、ゼファルも似たような感じだ。


 アークは更に上を目指し続ける。今の強さでも、既にSランク冒険者を凌駕している事をアークは知らない。



side アーク



 盲点でした! それは凄〜く盲点んん!!


 僕はテーブルと椅子を並べ、ランチに肉饅頭とオレンジジュースを取り出している。


 現在四十五階層。ヨコチンさんに差をつけてボス部屋に入ったら、転移出来る時間に間に合わなかったみたいだよ。僕達がこの部屋から出るまでは、次の人は入って来れないんだ。


 お陰で僕とビビは、これからゆっくり昼食が出来るんだよね。


 ビビは辛口チキンカレースープと、鳥さん達の卵を混ぜた無発酵パンを出してあげた。


 いつもは対面に座るのに、今日は僕の横で食べるみたいだ。


 四十階層のボスは、通常よりも二回りくらい大きなワイバーンだった。体から鎌のような物が沢山生えていて、名ずけるならワイバーンデスサイズかな⋯⋯

 本当に体が硬くて、削りきるのに一時間はかかった⋯⋯大変だったなぁ。でも精霊の力を使っちゃうと、その後がバテちゃうから温存だね。


「アーク。カレーに少し血が欲しいな」


「僕はソースか何かかな?」


 ビビが僕の人差し指の先を少し切って、チキンカレーに血を垂らす。

 あっという間で全然痛みを感じなかったよ。


 勿体なさそうに僕の指を咥えるから、再生スキルは使わないであげた。

 まあ、片手でも肉饅頭は食べれるから大丈夫さ。


 アルフラの街で食べた肉饅頭なんだけど、沢山買っておいて良かったよ。

 肉饅頭とかホットドッグとか、手軽に食べれる物って何でこんなに美味しいんだろう?


 大きく口を開けてかぶりつく。ふっかふかの白い蒸したパンに、肉汁の滴る旨味たっぷりの具材⋯⋯

 ほんのりと鼻を抜けるスパイシーな香りも良いなぁ。



「ヨコチンさんにも食べ物置いといてあげる? お腹空いてないかな?」


「私達がここを出れば、部屋の中は元の状態に戻る筈だ」


 そう言えば、どのボス部屋に入っても戦闘した形跡が無いかも?

 うん、そうだね⋯⋯ビビの言う通り、一回一回元に戻ってると考えれば納得出来るかな。



「じゃあ部屋を出た所に食べ物を置いてあげようか」


「食べてくれると良いな」


 何故か頭を撫でられる⋯⋯大人のビビはやっぱり普段と違うよね。いつもなら、「無駄になると思うがな」って言いそう。



 ん?



 胸ポケットに入れていた万年筆が、今微かに揺れ動いたような気がした。


 今のは何だったんだろう? ほんの少し魔力を感じるよ?


「どうかしたか?」


「ん〜⋯⋯ライムローゼ様の万年筆が動いた気がしたんだよね」


「ふむ。得体の知れない物だからな⋯⋯私が持ってようか?」


「大丈夫だと思う。ボスを倒したらハルキバルさんに報告する」


「そうしよう」



 一息ついて、三十分だけ眠った。寝袋やベッドを出す訳にはいかないから、赤茶色の壁に寄りかかって目を閉じたんだ。



 部屋を出ると、紫色の毒々しい壁があった。


 魔物の体内を思わせるような嫌な感じだね⋯⋯岩と肉を混ぜて固めたような、そんな気さえするんだよ。


 僕はこういうの苦手だな⋯⋯不気味で嫌なんだよ。


 天井があるから高く飛ぶ事は出来ないけど、通路はそれなりの広さがあった。



 ヨコチンさんに料理を置いて、急いで扉から離れる。


 軽く飛びながら四十七階層の扉を探していると、この階層の魔物らしき者が現れた。


「ほえ⋯⋯」


「どうしたアーク!?」


 え〜⋯⋯どうしたって何が〜?


 なんか頭の中がふわふわするぅ⋯⋯なんでかなー?


「⋯⋯あれは⋯⋯ちっ、サキュバスだな⋯⋯厄介な⋯⋯」


「うぐぅ⋯⋯」



 なんだかよくわからない⋯⋯わからないけど、あの魔物に抱き着きたいような気がするよ。


 ビビが言うように警戒するべきなんだ。なのに⋯⋯なんで?



 綺麗なピンク色の長い髪、お尻から生える悪魔のような尻尾、見た目は十七歳くらいに見えるけど、人間じゃないからわからないね。

 体は凄く薄着で、顔は可愛らしい感じがする。

 瞳はピンク色に輝いていて、吸い込まれてしまいそう⋯⋯


「レアモンスターか」



 僕はビビに目隠しをされて抱き上げられた。



「⋯⋯ここは厄介な階層かもな⋯⋯サキュバスなんて滅多に見ない魔物だろう」



 この階層からはAランクの魔物が混ざり始めるらしい。気配拡大感知を使うと、ちらほらそんな反応がある。


 ⋯⋯ビビに抱き上げられたからか、少し落ち着いてきた⋯⋯でもなんかソワソワするよ。



「クフフ⋯⋯貴女の魅了で相殺しているのね。随分と器用ですこと。美味しそうな坊やだわ⋯⋯吸血鬼の貴女は新人さんかしら?」



「さっきこの階層に来たばかりだ。ある意味新人だな」


「外から来たのね⋯⋯羨ましいわ。ねえ? その子供、ちょうだい?」


「アークは私のものだ」



「お願いよ⋯⋯初めて見た人間なの。乱暴にしないから⋯⋯」



 ビビとサキュバスの会話が聞こえてくる。


 目隠しをされているから表情まではわからないや。



「ちなみにサキュバスはお前以外にいるのか?」


「そんなに沢山いてたまるもんですか」


「⋯⋯そうか」


 ビビが魔力を解放し⋯⋯しない? なんで?


 多分倒すかどうかで迷っているのかも。会話も普通に出来て、好戦的な様子でもないからかな?



 どうしたいの? ビビ。






 好きなキャラを教えてくれると嬉しいです(´>∀<`)

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