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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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迷宮への挑戦





「正気に戻すには、ダンジョンマスターを倒すしかないんだ」



 ガジモンさんはそう言って肩を落とす。


 ダンジョンマスターを⋯⋯倒す? 何階層まであるかわからないこの迷宮を、攻略しなきゃいけないって事?


「わかっただろ? だから無理なんだ」


「無理⋯⋯ですか⋯⋯」


 今ここは四十階層⋯⋯でも本当に無理なのかな?

 ビビと二人で寄り道をしないなら、一階層を一時間で攻略出来るかもしれない。

 もし迷宮が五十階層までなのなら、今日中に何とか出来る可能性もある。



 ただ⋯⋯


 ガジモンさん達がヨコチンさんを倒さないように、この場所で十数時間も耐える事が出来る訳が無い。



 ん? でも待って、迷宮の悪足掻きでヨコチンさんはあんな風に変えられちゃったんだよね?

 悪足掻きしたのは迷宮を攻略される事を恐れたからだ。だとすれば⋯⋯


「なら、いけそうですね」


「はぁ? まさかアーク⋯⋯本当にやる気か?」


「ええ。僕が迷宮をクリアしてきますよ」


「そんなの無謀だろう! いくらハルキバルが認めたお前さん等でも、最深部だぞ? そんなのSランク冒険者パーティーで挑むような難易度だ」


「大丈夫です。それに」


 僕は傷だらけの三人を見た。皆必死な顔をしているんだ。


 助けてあげたい⋯⋯



「お前は⋯⋯何者なんだ?」


 片腕の女の人に問われ、僕はその人の顔を見る。



「僕は⋯⋯」


 僕は何て答えたら良いのかな? もったいぶる必要は無いけど、この世界に僕の肩書きは無いもんね。



「僕はアーク。今ランキング一位なんだ」


「お前がアークか⋯⋯兄貴もお前の事を話していた。なあ⋯⋯私も連れて行ってくれよ! こう見えても私は戦力になる! 兄貴を助けたいんだ!」

「俺もだ! 兄貴が救えるなら何だってやってやる!」

「俺も頼む⋯⋯兄貴のためなら何だってやる」


 そうと決まれば⋯⋯って言いたいところだけど、僕とビビに着いて来れる人はこの場にはいないだろうね。



 僕はこれから本気を出して攻略するのだから。


「貴方達を連れて行く事は出来ないよ。それはガジモンさんも他の皆もね」


「なっ!」



 僕は普段から抑えていた存在の格を解放した。ガジモンさんはその場でヘタリ込み、滝のような脂汗を流し始めた。

 妖精族の人は本質を見る力に長けている。ドワーフさんは少し鈍感みたいだけど、それでも普通の人族よりは理解出来てしまうかも⋯⋯


 ちょっと驚かせちゃったみたい。ごめんなさい。


 三人組も息を呑んで後ろに下がり、崩れ落ちるかのように膝を折った。


 僕もイフリンに初めて会った時はびっくりしたもんね。そうなっちゃうのは仕方ないよ。


 本気を出した僕の姿は、まだビビ、イフリン、魔族の人しか見ていない。ティーナもここまでの状態の僕を見ていないんだ。


 ゼファルさん、ドルトー二さん、アウグシィスさんまで膝を折り、ヨコチンさんは後ろへ後退する。


「ビビ、行くよ」


「そうだな。」


 これから最深部まで直行するんだ。そうなれば、絶対にヨコチンさんが邪魔しに来る。

 僕とビビは休憩無しで、ヨコチンさんを牽制しながら迷宮を進む事になる筈なんだ。だから他の人を連れて行く事は出来ない。



「こ、これほどの力を⋯⋯ハルキバルがアークの事を言うのも理解出来た。一人で国を滅ぼせる程の力を持つと聞いた時は、あの堅物が初めて冗談でも言ってるのかと思ったんだが⋯⋯」


「そ、そんな事しませんよ!?」


「わかってるとも。町民には説明をしておこうと思う」


「よろしくお願い致します」



 ガジモンさんに頭を下げ、僕はヨコチンさんを見た。

 明らかに狼狽えていたヨコチンさんに、迷宮の力が流れ込む。


「ぐが⋯⋯あがあぁぁああ!!」


「あ、兄貴ー!!!」


 ヨコチンさんの体が更に肥大して、黒かった肌が青色に変化した。


 僕とビビが四十階層のボス扉へ走り出すと、ヨコチンさんが“縮地”で先回りする。



「行かせんんん!! ここで死ねええ!!」


「“岩砕脚”!」

「はっ!」



 僕の岩砕脚に合わせて、ビビが左右対称に同じ動きをした。


 ビビの蹴りはスキルじゃないけど、吸血鬼の力はとても強いんだ。



 ヨコチンさんが黒いオーラを纏わせた拳と、僕達の蹴りが正面から激突する。


「な⋯⋯んだとぉぉおお!」


「「いっけーー!」」



 大きな衝撃音と共に、黒いオーラが霧散した。僕達は更に踏み込んで、そのままヨコチンさんに体当たりを繰り出す。


 体を浮かせて吹き飛ばされたヨコチンさんが、ボス扉へ触れて先に転移された。


 上手くいったみたい。僕達も雪崩込むようにボス部屋へ転移する。



三人称視点




 ガジモンは急いで転移陣の修理に取り掛かった。このメンバーならば、三十五階層へ戻った方が早いかもしれない。でももしそうすれば、ここにヨコチンのパーティーメンバーを放置する事になる。

 ドルトーニとアウグシィスは、ヨコチンのパーティーメンバーの治療を始めた。


「ガジモンさん。あの子達は何者なんでしょうか?」


 ゼファルが亡くなった転移所の職員を布で巻き、両手を合わせて黙祷を捧げる。


「知らん⋯⋯だが、ハルキバルなら何か知っているかもしれん」


「あのハルキバルさんが? Sランクの現役冒険者にしてギルドマスターですよね」


「そうだ。アークとビビはハルキバルの紹介で来た子供なんだが、あそこまで強いとはな」



 ガジモンとゼファルは、二人の消えた扉を見つめた。





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