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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
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迷宮トラップ





 気配の近ずいて来る方向に意識を向けながら、ビビに目配せする。ビビはそれを見て一度頷くと、体から白い煙が抜けていった。


「ん? 今のはなんだべ?」


「何でもないよ? ね、ビビ」


 ビビは微笑みながら小さく頷いた。



 今のビビは抜け殻になっていて、ただニコニコ頷くだけの人形なんだ。本体は周囲の警戒をしていて、ここにいるビビには意識が無い。

 だから脇を擽ったり頬を抓ったりしても怒らないんだよ。


 そうこうしている間に、数人の冒険者パーティーが近づいて来た。

 彼らは全員、灰色のレインコートに灰色の防具をつけている。この街は灰色が多い⋯⋯僕達と同じように保護色にしているんだろうね。


 後ろにパーティーメンバーを残し、背の高い男の人と細身の女の人が近づいて来る。

 僕達を必要以上に警戒させないためだとは思うけど、そこまでして態々接触して来る理由ってなんだろう⋯⋯


「すまない! 我々は冒険者パーティー“人生は宴”。リーダーのアウグシィス!」

「私はサウマーレ!」

「急で申し訳な──え?」

「子供?」


 アウグシィスさんとサウマーレさんか。僕達の顔を見て固まっているようだけど、レインコートで気が付かなかったのかもね。


「アーク隊長殿。“人生は宴”はランキング六位のパーティーだべ。悪い噂も聞かねーだ」

「ありがとうティーナ」


 僕は二人の前に移動して、従者の礼をする。


「“アーク探検隊”というチームで活動をしております。僕はリーダーのアーク。後ろの二人がビビとティーナです」


「アーク探検隊だと!? 最近町で噂になっている子供達か!」

「金の六つ星⋯⋯!? ま、間違い無いわね⋯⋯」


「⋯⋯町に長居をしませんので、噂は存じ上げないのですが⋯⋯」


 少しの沈黙の後に、リーダーのアウグシィスさんがハッと我に返った。


「すまない! どうか助力を願えないだろうか!」


 二人が僕達に頭を下げる。何か緊急事態でも起こったのかな? どっちにしても、まずは話を聞かないと何も判断する事は出来ない。

 これでも僕は隊長だからね! ふんす!


「お話を伺います。出来る事であるならば、僕達が力をお貸し致します」


「ありがとう! 話をする前にどこかの建物へ入ろう。地図を広げたい。着いて来てくれないか?」


「畏まりました」


 僕はビビの抜け殻をおんぶした。全員が不思議そうにしていたけど、ニコニコしているビビに話しかける人はいなかった。


 近くの民家へ入ると、残りのメンバーを紹介される。どこか焦った様子があるんだよね⋯⋯僕達がアーク探検隊だとわかると、文句を言ってくる人は誰もいなかった。



「この地図を見てくれ」


 アウグシィスさんはテーブルを用意して、その上に大きな地図を広げる。


 僕が書いた地図よりもよっぽど正確で細かいね⋯⋯Aランク冒険者さんは経験が違うと思う。


「俺達はこの場所で、巨大な長爪熊(ながつめぐま)と戦闘をしていた。皆己の事に集中していたせいで、戦闘が終わるまで気が付かなかったんだ⋯⋯」


 人生は宴のメンバーは、項垂れるように視線を落とした。


「戦闘はこの場所からこの場所までで終了したのだが、その間にメンバーの一人が消えてしまった。多分何かのトラップだと思うのだが、それが何かがわからないんだ」


「なるほどです。トラップには詳しくないですが、その辺りを探せば良い訳ですね?」


「そうなんだ。今は兎に角手数が欲しい⋯⋯手助けをお願いしたいのだが」


 僕がリーダーではあるけれど、一応ティーナの顔を見た。ティーナは操作に賛成らしく、僕の顔を見て頷いてくれる。

 ビビは僕がしたいようにしろって言うだろうね。


「わかりました。出来る限りお力になりたいと思います」





 土砂降りの雨の中、僕達は探査を開始した。


 前にもこんな事があったよね⋯⋯今度こそ助けたいな⋯⋯


 魔物にだけ気をつけて、激しい戦闘痕の残るエリアを探し回る。

 全員バラバラに動いているんだけど、互いが見える距離で動いていた。


 トラップかぁ⋯⋯前にベスちゃんからその手の話は聞いてるんだけど、森の中にはトラップが無かったからね⋯⋯それに、僕はあの頃ベスちゃんからのちゅーを警戒していたからなぁ⋯⋯いきなりしてくるから大変だったんだよ。

 もっとちゃんと話を聞けば良かったね。


 大きな瓦礫をひっくり返したり、それっぽく壁を叩いたりしてみる。


 やっぱりわからない⋯⋯何とか力になってあげたいんだけど⋯⋯


 壁だけではなく、床も叩いてみる。


 ──コツコツ⋯⋯コツコツ⋯⋯ザリ⋯⋯


 ん? あれ?


 石畳を確認していたら、それがいきなり砂利混じりの土に変わった。


 何がどうなっているの?


 良くわからないけど、僕はいきなり転移させられたらしい⋯⋯


 怪しい物を見つけたら報告する予定だったのにな⋯⋯でも僕がいなくなれば、ビビが直ぐに気がついてくれる筈。だからきっと大丈夫だよね。



 ──ズズゥゥウン⋯⋯



 凄い重たい音が鳴り響いた。只事じゃない感じがする。


 何かと思って見てみると、BかCランクの魔物が一箇所に集まって蠢いていた。


 いったい何をしているの? それにここはどこ?


 まるで一階層の大空洞のような広さがあった。町もピラミッドも無いけれど、とても広い場所なんだね。


 とりあえず⋯⋯あの魔物の群れをどうしようかな⋯⋯


 多分ここはモンスターハウスだと思う。全部倒せば外に出れるのかな?


 ただ何となくその群れを眺めていたら、一人の女の人が戦っているのが見えた。


 ボロボロになった服に全身血だらけの体⋯⋯え? かなりやばい状況じゃない?


 僕もよく使う魔法、オーロラカーテンを使用しているみたい。でもその防御魔法も、今では穴だらけになっている。


 まずい⋯⋯今直ぐに助けなくちゃあの人が死んじゃう!


 僕は高くジャンプすると、Sスタンダードに切り替える。


「⋯⋯イフリンじゃあの人を巻き込んじゃう⋯⋯多分ノーム様も力があり過ぎて駄目⋯⋯それなら⋯⋯」


 僕は久しぶりに契約精霊とのパスを開く。今回はあの人に⋯⋯



『お願い⋯⋯ムーディスさん!』


 レインコートを空中で脱ぎ捨てて、朧の夜桜を抜き放った。

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